前回までで、ロングランでお届けした『1日8時間・週40時間・週1休』という労働時間・休日の『例外』についてはひとまず終わる。
一応、ここまでの『例外』についてまとめておく。『例外』をカッコ書きにしているのは、最初に書いた通りそもそも労働者でない場合など『例外』とは言えない場合もひっくるめているからだ。
① そもそも労働者でない
45.労働時間規制のない、事業主と法人代表
1.個人事業主
2.代表取締役等、法人代表
3.取締役 46.事業主の隣の息子は労働者
4.監査
5.個人事業主や法人代表の同居の親族
6.家事使用人 47.どんな家政婦が労働者?
7.業務委託 48.『業務委託契約』でも労働者?
② 労働基準法の適用除外
52.地方公務員は労基法の8割?適用
1.国家公務員
2.地方公務員
3.船員
③ 労働時間・休憩・休日が適用除外
53.『管理職=管理監督者』ではない
1.第1次産業(林業を除く)に従事する労働者
2.管理監督者
3.機密の事務を扱う者
4.監視・断続的労働に従事する者
④ 非常災害等の場合
54.週44時間の特例事業
1.災害等で臨時の必要がある場合
2.公務のため臨時の必要がある場合
⑤ 1週44時間の特例事業の労働者
1.商業
2.映画演劇業(映画製作を除く)
3.保健衛生業
4.接客娯楽業
⑥ 暦日休日の例外
55.何チーム必要?24時間シフト
1.昼夜3交代制
2.旅館・ホテル
3.自動車運転業
⑦ 4週4休の場合
⑧ 36協定締結・届出の場合
⑨ みなし労働時間制の場合
62.『算定しがたい』場合の場外みなし労働
1.事業場外みなし労働時間制
2.専門業務型裁量労働制 63.『裁量労働制』を使うには
3.企画業務型裁量労働制
⑩ 高度プロフェッショナル制度
⑪ 変形労働時間制の場合
67.『1ヶ月単位変形』は、1ヶ月以内なら可
1.1ヶ月単位の変形労働時間制
2.1年単位の変形労働時間制 69.『1年単位変形』は条件が多い
3.1週間単位の非定型的変形労働 71.業種限定の『1週間単位変形』
4.フレックスタイム制 72.フレックスタイムの留意点
時間外労働と休日労働は、全く別物
さてここで、何度か述べたが、基本的に『労働基準法は、時間外労働と休日労働を、全く別物と考えている』という事実がある。
一部、労災認定基準から定められた1ヶ月100時間未満の残業規制など、時間外労働時間と休日労働時間を合わせた時間が規制対象となるものもあるが、これはそれこそ『例外』だ。
基本的には、労働基準法が休日労働を語るとき、それは法定休日労働『だけ』を論じている。時間外労働について示すときは、それは(法定以外の所定休日を含めた)法定時間外労働『だけ』を示している。
確かに、一般の常識とは違う。
普通の人が「今月は忙しくて残業が多くて大変だったわ。」と言ったとき(この語尾の『わ』は、北海道方言としてのジェンダーレスの『わ』と取ってもらってもいいし、共通語としての主に女性が使う『わ』と取ってもらってもいい。)、その『残業』とは、所定時間外労働も法定時間外労働も所定休日労働も法定休日労働ももっと言えば深夜労働もひっくるめて言っているのが普通だ。
しかし、労働基準法ではこれらは明確に区別される。
例えば、変形労働時間制は労働時間についての例外だから、法定休日についてはいささかの変更も受けない。また、4週4休という変形休日制も、あくまで法定休日についての例外なので、1日の労働時間8時間とか週40時間労働とかには何の関係もない。
この辺の感覚があれば、『あれ?1ヶ月単位の変形のときの休日の扱いはどうだったかなあ』といった疑問はすぐに解決できる。
こういった原則を覚えておくと、自分が考えたこともない突拍子もない状況にも対応できる(はずなのだが、そうとは言い切れないときもある。現実は確かに難しいことは事実だ。)。
まあ、そんな人ばかりになったら社会保険労務士の存在意義の一部も問われることになるかもしれないが、せっかくこのBlogをご覧になった方は、その辺の考え方の基本くらいは知っておいてもらって損はない。
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