₂₀₆.自己都合でも6ヶ月で失業手当?



 前回紹介した『倒産・解雇等離職』のように、離職以前1年間に勤務期間(正しくは『被保険者期間』)が6ヶ月あれば失業手当が受給できる場合はほかにもある。もちろん普通は2年間に12ヶ月必要な一般の被保険者の場合でだ。

 さらに普通なら2ヶ月間(2025年4月からは1ヶ月)の『給付制限期間』もなくなるので、かなり有利になることは確かだ。

 これは特定の理由がある場合で、そのまんまだが『特定理由離職者』という。この特定理由離職者はさらに大きく2つに分かれる。
 

雇用期間の更新がない

 
 これは、(更新・延長があり得ることは明示されている)期間の定めのある労働契約期間が満了し、満了日までに更新を希望したにもかかわらず更新がない場合だ。

 ただし、3年以上継続雇用となっている方については前回の『倒産・解雇等離職』の方の対象になる。
 

・ 2027年3月までは特例あり

 
 上記のように、これに該当するには雇用契約上『更新・延長があり得る』ことは明示されている必要があるが、2027年3月31日までに『雇用契約更新の上限』に達したことによって離職した場合は特例があり、次のいずれかに該当すれば『特定理由離職者』と扱うことになっている。
 

   ① 契約更新上限が当初の有期労働契約時になく、
       その後の契約時設定された場合や、不更新条項が追加された場合

   ② 更新上限が、当初の有期労働契約後に引下げられた場合
 

正当な理由のある自己都合

 
 これが、タイトルにある『自己都合』でも6ヶ月で失業手当が出る(可能性のある)場合だ。ただしこれは『正当な理由のある自己都合』に限られる。

 もちろん自分だけが『これは正当な理由だ!』といくら頑張っても、次の項目のいずれかに当てはまらなければハローワークからは『正当な理由』とは認められない。
 

① 体力不足・障害・傷病・視力や聴力.触覚減退等による離職

 
 自己都合退職の理由が次のいずれかに該当する場合だ。
 

  ア. 体力の不足
  イ. 心身の障害
  ウ. 疾病
  エ. 負傷
  オ. 視力の減退
  カ. 聴力の減退
  キ. 触覚の減退

 ただし、これらの原因による離職であっても、事業主に新たな業務を用意され、その業務が可能なときは『特定理由離職者』とは認められない。
 

② 妊娠・出産・育児等による離職

 
 妊娠・出産・育児等による離職であることは前提として、これらによって後で述べる『受給期間延長措置』を受けた場合に限られる。
 

③ 家庭の事情の急変による離職

 
 これは、父母いずれかの死亡・傷病等により、残された父母いずれかを扶養するため離職したなど、家庭事情の急変による場合。具体的にはほか次のようなときだ。
 

  ア. 常時本人の看護を要する親族の負傷・疾病による離職
             (離職申出時に看護必要見込期間が約30日超)
  イ. 自宅の火災・水害等で継続勤務が客観的に不可能となったことによる離職
  ウ. 配偶者(内縁を含む)の暴力により、別居を余儀なくされたことによる離職
             (公的機関の証明を要す)
  エ. 本人の学校入学・訓練施設入所等による離職
 

④ 配偶者・扶養親族との別居解消のための離職

 
 家族(配偶者及び扶養すべき親族)との別居生活を続けることが困難となり同居するため、事業所への通勤が不可能・困難となる地へ住居を移転し離職した場合。

 ここでの『扶養すべき親族』とは、子・孫・父母・祖父母・兄弟姉妹の他、家裁が扶養義務を負わせた3親等内の方。ということになっている。
 

⑤ やむを得ない理由により通勤不可能・困難となったことによる離職

 
 この通勤不可能(困難)となった『理由』とは次の理由に限定されていて、これらの理由によって往復所要時間がおおむね4時間以上になったことによる離職の場合だ。
 

  ア. 結婚に伴う住居の変更
  イ. 育児に伴う保育所等や親族等への保育の依頼
  ウ. 遠隔地への事業所の移転
  エ. 自分の意思によらない住居の移転(強制立ち退き・天災等)
  オ. 公的交通機関の廃止や運行時間の変更
  カ. 会社都合の転勤・出向による家族との別居を回避するため(
  キ. 配偶者が会社都合で転勤・出向し、これによる家族との別居を回避するため
 

 ここで、『』を付けたもので『倒産・解雇等離職』の要件に当てはまる場合は当然『倒産・解雇等離職』となるので、その要件を満たせない場合は今回の『正当な理由のある自己都合』ということになる。

 以下に『』を付けたものも同様だ。
 

⑥ 人員整理等で希望退職募集に応じた離職(

 

⑦ 労働条件の著しい変更による離職(

 
 事業主による労働条件の変更により当初と著しく異なる労働条件となったため離職した場合だ。
 

⑧ 新技術への適応困難による離職

 
 これは新技術が導入された場合に、本人の専門知識・技術を十分発揮する機会が失われ、その技術に適応することが困難であることによる離職とされる。具体的には
 

  a. NC・MC工作機械・産業用ロボット・汎用コンピュータ
    ・オフィスコンピュータ等のME(医用工学)機器…が導入され、
  b. それに伴い、本人が持っていた専門の知識・技能を十分発揮する機会が失われ
  c. 本人がその機器を取り扱うこととされ、
  d. その機器に関するプログラム作成・メンテナンス業務の知識・技術についての
      教育訓練等に適応が困難
 

なことによる離職が対象になる。
 

⑨ 結婚・妊娠・出産・育児に伴うやむを得ぬ離職

 
 誤解があるとマズいので雇用保険の事務取扱要領(50305-2)からそのまま抜き書きすると次の通りだ。
 

 結婚、妊娠、出産又は育児に伴い退職することが慣行となっている場合や定年制があるにもか関わらず、定年年齢の前に早期退職することが慣行となっている場合等環境的に離職することが期待され、離職せざるを得ない状況におかれたことにより離職した場合
 

 昔は『寿退職』という言葉もあったが、現在こうした理由で本人が『離職せざるを得ない状況におかれ』ることはあってはならない。こうした職場には相当問題がある。

 ただ、そういう状況で離職してしまった以上、少しは有利な『正当な理由のある自己都合』と扱いましょう。ということだ。

 

次 ー ₂₀₇.4年間に6・12ヶ月で失業手当の場合も ー

 

※ タイトル訂正
2025年3月までは特例あり ➡ 2027年3月までは特例あり  '25.03.07

 

 

2025年01月28日