₂₂₈.子の看護等休暇に『時間単位』は必須



 子の看護等休暇年5日(または10日)については『時間単位で取得』させることが必須になっている(2021年から)。

 年次有給休暇の『時間単位』取得の可否は会社の判断だがこれとは違う。『時間単位年休』がない会社でも、子の看護等休暇は請求があれば必ず時間単位で取得させなければならない。
 

時間単位年休との違い

 
 時間単位年休と子の看護等休暇の時間単位取得との主な違いを表にしてみた。時間単位年休がある会社なら、これを見てもらった方が分かりやすい。

  時間単位年休 時間単位の、子の看護等休暇
導入の要件 労使協定 なし(必須)
年間最大取得時間数 5日分 5日分 or 10日分
休暇の単位 1時間の整数倍 1時間(規定により分単位も可)
給与の支払い 有給 有給 or 無給(会社の規定による)
中抜けの可否 可能 不可能(会社の規定により可能)

 

・ 『1時間単位』の取得は必須

 
 『時間単位年休』では2時間単位・3時間単位といった休暇も認められる。しかし子の看護等休暇は基本的に1時間単位でなければならない。

 つまり2時間以上を取得単位とすることは認められない。
 

規定により分単位も可能

 
 それでは『分単位』とすることについてはどうか。年次有給休暇の場合(99.時間単位年休は分単位ダメ)から類推すると、どうもダメっぽい気がする。
 

 ところが『子の看護等休暇』の『分単位』は認められているのだ。
 

 厚労省『子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A』に次の記述がある。このQ&Aは2025年の改正前のものだが、『時間単位』の扱いについては変わっていない。
 

 問1ー2 分単位で看護・介護休暇を取得できることとしている場合に、時間単位で取得できる制度を別途設ける必要があるか。

(答)

 ○ 分単位で看護・介護休暇を取得できる制度を導入している場合は、法を上回る内容となっているため、別途、時間単位で取得できる制度を設ける必要はない。
 

・ 『分単位』は、年休なら法を下回るが、子の看護等休暇なら『上回る』

 
 これは労働基準法や最低賃金法・育児介護休業法といった『労働条件の最低基準』を定める法律の性格として興味深い。

 つまり、これらの法律で定めているのは労働条件の『最低基準』なので、これを『上回る』措置なら文句はつかない。それどころか推奨される。

 たとえば最低賃金なら、その金額を上回っていれば最低基準を『上回って』いることは一目瞭然だ。所定労働時間なら1日7時間なら8時間という最低基準を『上回って』いるので認められる。

 ここで、年次有給休暇の趣旨は
 

 労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置付けから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度
 

ということになっているので、細切れになればなるほどこの趣旨から遠ざかる。したがって『分単位年休』は1時間という最低基準を『下回って』いるのでOUT!だ。

 振り返って『子の看護等休暇』の趣旨は
 

 負傷し、若しくは疾病にかかった当該小学校第三学年修了前の子の世話若しくは学校保健安全法(昭和三十三年法第五十六号)第二十条の規定による学校の休業 … 子の教育若しくは保育に係る行事のうち厚生労働省令で定めるものへの参加をするための休暇
 

となっている。

 つまり、中心は子どもに関する世話や行事参加なので、できるだけ臨機応変に対応できた方が良い。

 法律上は1時間が最低限度だが、会社が任意に1時間未満を単位として子の看護等休暇を認めた場合、子に対してさらに細やかな対応が可能になるので、分単位の看護等休暇は最低基準を『上回る』措置ということになるのだ。

 そんなわけで、子の看護等休暇は『分単位の取得』も認められることになっている。だから分単位が認められる職場なら年休のときとは違って

 
「明日子どもを病院に連れていくので8時の始業から1時間半、子の看護等休暇下さい」
 

もOKだ。
 

中抜けも、法律上は不可だが認めるのも自由

 
 上の表で『中抜け』が『不可能』になっているのは会社に『認める義務はない』ということで、厚労省は『状況により認める配慮』を求めている。これも前項と同じ趣旨で『中抜け可能』の方が最低基準を『上回る』という判断からだ。

 あと『時間単位年休』は『年5日まで』というしばりがあるが、子の看護等休暇にはこうした規定はないので『年10日』の方がこれをすべて『時間単位』で取得することも可能だ。
 

『1日の時間数』は時間単位年休と同じ

 
 『1時間を単位とする』子の看護等休暇で取得できる時間数が『○日分』というときの『1日分』は、時間単位年休のときと同じで
 

1日の所定労働時間を下回らない整数(時間)

 
となる。たとえば1日の所定労働時間が7.5時間なら8時間に切上げになる。5日分なら40時間・10日分なら80時間だ。《7.5×5(10)=37.5(75)》という計算にはならない。

 所定労働時間が日によって変わる場合は1年間における1日平均所定労働時間、年間総所定労働時間が決まっていない場合は所定労働時間が決まっている期間の1日平均所定労働時間になる。

 整数に切上げるのは上と同じだ。
 

半日単位は任意だが、注意点あり

 
 子の看護等休暇を『半日』単位で取得させる義務はないが、『半日単位』の取得を認めるのは会社の任意だ。

 ただしその場合は『時間単位』で取得した場合と比べて、従業員に不利にならないように運用する必要がある。

 たとえば『半日』が午前3時間・午後5時間(計8時間)の場合、
 

「午後半日、子の看護等休暇お願いします。」
 

という申出で『0.5日取得』と扱うのは労働者に有利なのでいいが、「午前半日」取得の申出で『0.5日取得』と扱うのは不利になるのでダメということだ。

 

 

2025年04月25日