家族介護を行う労働者は、一定の要件の下に93日まで事業主に介護休業を請求できる。介護休業に関しても最近の改訂が結構多いので、それも含めて説明する。
① 介護休業の要件
要介護状態にある対象家族を介護する労働者は基本的には介護休業を取得できるが、『育児介護休業法』上、介護休業の付与が事業主に義務付けられるのは次の場合だ。
ア. 介護休業開始予定日の『93日+6ヶ月』後*¹までに雇用契約が満了することが明らかでない*²
イ. 要介護状態*³にある対象家族*⁴の介護にあたる労働者からの、期間を定めた2週間前までの申出に基づく
ウ. 通算93日間までの期間(分割は3回まで)*⁵の休業
ただし、労使協定に規定がある次の場合を除く。
○ 継続勤続期間が最低限度(1年以内)未満
○ 申出から93日以内に雇用契約が満了することが明らか
○ 所定労働日数が週2日以下
*¹ 介護休業開始予定日の『93日+6ヶ月』後
条文では
…期間を定めて雇用される者にあっては、…休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
となっている。
まず、この規定はあくまで『期間を定めて雇用される者』限定だ。定年などは『期間を定めて』雇用されているわけではないので、『労働契約が満了』し得るのは期間雇用者だけということになる。
そういくわけで、ここでの要件では『期間を定めて雇用される者』という前提は省略している。
次に、休業開始予定日の『93日+6ヶ月』後であって『6ヶ月+93日』後ではない。交換法則は成立しない。
たとえば介護休業開始予定日が11月28日とすると、逆の『6ヶ月+93日』後は8月30日になる。
しかし実際の要件は『93日+6ヶ月』後でみるので、93日後は平年なら3月1日。その6ヶ月後は9月1日になる。つまりこの方の雇用契約期間が翌年8月いっぱいで終わり更新がないことが明らかであっても介護休業を取得し得る。
*² 雇用契約が満了することが明らかでない
期間内に契約が切れる場合でも『更新があり得る』場合は対象になる。
また、育児介護休業法上は季節雇用の方を排除する規定はない。ただし、介護休業開始予定日の最低9ヶ月先まで雇用契約満了が明らかでないことが*¹で要件になっているので、これらの方が対象になることはあまりないだろう。
ただし、たとえば雇用契約期間が3月1日~12月31日の季節雇用の方の場合、関連する労使協定がない事業所で、3月中に介護休業を開始する申出を3月上旬にした場合など、理論上は介護休業が可能だ。
*³ 要介護状態
負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上常時介護を要する状態をいう。
この要介護状態の『2週間』要件に引っ張られて、《13日以内の介護休業はダメ?》と思う方もいるようだ。
この『2週間以上』は要介護状態の持続期間をいっているので、対象家族の要介護状態が2週間以上なら、これを下回る日数の介護休業を取得することはもちろん可能だ。
家族間での介護担当者の交替などが考えられる。
*⁴ 対象家族
介護される側の『対象家族』は親だけとは限らず、次の方々でもいい。
① 配偶者(事実婚含む)
② 父母
③ 子
④ 孫
⑤ 祖父母
⑥ 兄弟姉妹
⑦ 配偶者の父母
*⁵ 通算93日間までの期間(分割は3回まで)
以前は1人の対象家族については『異なる介護状態』のときだけ分割可能だったが、2017年から、介護状態が同一か異なっているかに関わらず93日に達するまでは3分割できることになっている。
② 介護休業給付金の要件
介護休業についても育児休業と同じように要件を満たせば『介護休業給付金』が支給される。給付金は最大で93日分になる。
ただし、法律上の最長93日間介護休業を取得しても、介護休業給付金が必ず93日分支給されるわけではない。
たとえば6月10日から9月10日まで93日間介護休業を取得したのなら、介護休業給付金は90日分だ。
・ 介護休業給付金の要件
介護休業給付金の支給要件は次のようになっている。
ア. 雇用保険の被保険者(一般・高年齢のみ)からの申出に基づく1回最長3ヶ月間の、①の要件を満たす介護休業で、
イ. 休業開始日前日に自己都合退職したと仮定すると失業手当の受給権があり、
ウ. 『支給単位期間』内に就業日数が10日以下であり、
エ. 1ヶ月未満の支給単位期間の場合は、全日休業日が1日以上ある
場合に、介護休業給付金の受給権が認められる。
雇用保険法の介護休業給付金の規定では、対象は一般または高年齢被保険者に限られているので、日雇の方や季節雇用者は最初から対象外だ。
③ 介護休業給付金の支給額
介護休業給付金の支給額は『休業開始時賃金日額』(₂₃₀.育休中のアルバイトは支給日に注意)の67%で、育児休業給付金の当初6ヶ月と同じだ。
ただし介護休業給付の『賃金日額』の最高限度額は、45~59才の失業給付の賃金日額に準拠している関係で1万7270円だ。30~44才の場合に合わせてある育児休業給付(最高1万5690円)に比べると若干高い。
介護休業も育児休業同様、1支給単位期間は最終期間を除いて1ヶ月30日と算定するので、1支給単位期間の最大限は、
1万7270円/日 × 30日 × 67% = 34万7127円
になる。
上の例の6月10日から9月10日まで介護休業を取得した場合は、支給単位期間が
① 6月10日 ~ 7月9日
② 7月10日 ~ 8月9日
③ 8月10日 ~ 9月9日
となり、ここで3ヶ月終了となる。この間それぞれ30日分支給なので全部で90日分だ。『休業開始時賃金日額』が1万円の場合には合計
1万円/日 × 30日 × 67% × 3 = 60万3000円
支給されることになる。