₂₅₀.4~6月に支給された給与で決まる標準報酬



定時決定って何?

 
 前回述べたように社会保険料は『標準報酬』で決まる。この『標準報酬』、最初はその事業所で働き始めたときの給与の概算額によるが、その後は4~6月に支給された給与の平均で決めるのが基本だ。これを『定時決定』という。

 よくいらっしゃるのが4~6月分の給与で決まると思ってる方で、これが通用するのは『当月払い』の事業所だけだ。中には〆日もムシして〝4~6月に残業しすぎると保険料が高くなる〟と思っている方もいるようだ。

 標準報酬のもととなるのはあくまで『4~6月に支給』された給与であり、月末〆翌月払いであれば3~5月に働いた分の給与・15日〆翌月払いなら2月16日~5月15日に働いた分の給与ということになる。

 こうした翌月払いの事業所なら6月の残業を減らしても標準報酬には影響はないし、6月昇給でも『定時決定による』社会保険料の増加にはつながらない。

 ただし昇給幅が大きかったり昇給月以後の残業等によっては別の規定によって標準報酬が変わることはある。
 

標準報酬の計算に入れない月

 
 ということで原則は、4~6月に支給された給与の平均が、ある『標準報酬』の範囲に収まっていればそれがその方の『標準報酬』で、それに本人分の保険料率をかけたものが、その年9月分から翌年8月分のまでの社会保険料になる。

 ただし、『4月』・『5月』・『6月』に支給された給与のそれぞれの『賃金計算期間』に次のようなイレギュラーな期間がある場合は、その期間は平均をとる計算からはずすことになっている。
 

賃金計算期間が丸1ヶ月分ない

 
 まずこの4~6月に支給された給与の『賃金計算期間』の途中で入社した場合だ。

 たとえば20日〆・月末払いなら『当月払い』なので4~6月分給与の平均で決めるのが原則だが、この会社に4月1日に入社した方の場合、4月分給与は『4月1日~4月20日』分となって正規の『3月21日~4月20日』の1ヶ月分には欠ける

 この場合は4月分の給与は計算に含めず、5月・6月分だけの平均で『標準報酬』を計算する。

 月末〆・翌10日払いの会社に4月2日に入社した方の場合も同様に考える。

 この事業所は3~5月分給与の平均になるが、この方は3月は在職していないので関係ない。4月の賃金計算期間はほとんど在職しているが4月1日だけは在職していないので、たった1日欠けているだけではあるが、4月分もムシする。

 この場合、この方の標準報酬は5月分(6月支給分)たった1ヶ月分の給与だけで算定されることになるので、5月分給与の影響力は絶大だ。

 もちろん4月1日に入社したがこの日が日知曜日など会社休日で出勤しなかっただけ…という場合は4月分も計算に含める。

 これについては、月給・日給・時給のいずれであっても同様に扱う。
 

報酬支払基礎日数が基準に満たない場合

 
 『報酬支払基礎日数』というのは基本的には雇用保険でいう『賃金支払基礎日数』と同じだが、社会保険の場合は労働者以外の方も対象に入ってくるので『賃金』を『報酬』に変えただけだ。

 ここで『報酬支払基礎日数』は、時給や日給者なら働いた日数(有給休暇取得日ももちろん含める。)で、月給者で欠勤がない場合も『賃金支払基礎日数』同様、賃金計算期間の歴日数になる。

 月給者が欠勤した場合は離職票などで使う『賃金支払基礎日数』とは扱いが違うので注意が必要だ。これについてはこのページの最後にまとめた。

 『報酬支払基礎日数』が想定外に少ない場合は、何かイレギュラーな事態が発生したものと考えられるので、そういったイレギュラーな月を含めて平均をとると実態に合わなくなる。

 そこで勤務形態によって一定の基準を設け、『報酬支払基礎日数』がその基準に達しない月はムシして平均をとることになっている。次のような月だ。
 

① 通常の方は『報酬支払基礎日数』が17日ない月

 
 ②・③に該当しない通常の方は、『基準日数』を17日とし、『報酬支払基礎日数』が17日以上の月だけを平均の対象とする。

 3ヶ月とも17日に達しない場合は、従前の標準報酬をそのまま使うことになる。
 

② 4分の3基準を満たすパートタイマーは2段構え

 
 いきなり『4分の3基準』というのが出てきたが、これは旧来の一般的な社会保険加入資格 ー
 

 ・ 1週間の所定労働時間も
 ・ 1ヶ月の所定労働日数も
 ・ フルタイムの4分の3以上
 

という基準のことだ。これを満たす『短時間労働者』を『4分の3基準を満たすパートタイマー』とする。このカテゴリーに入る方は、判定が2段構えになる。

 まず、『報酬支払基礎日数』が17日以上の月が1ヶ月でもあれば、①と同じ扱いになる。つまり、、17日以上の月だけで平均をとる。

 次に、3ヶ月とも17日に達しない場合は第2段階として、15日以上の月の平均で標準報酬を求める。

 3ヶ月とも15日にも達しない場合は従前の標準報酬になる。
 

③ 4分の3基準を満たさないパートタイマーは、11日ない月

 
 これは社会保険適用拡大で被保険者となった週20時間以上で週所定労働時間または月の所定労働日数がフルタイムの方の4分の3に満たない方の場合だ。

 この場合の標準報酬の決め方は②よりは単純だ。

 3ヶ月のうち1ヶ月でも『報酬支払基礎日数』が11日以上になる月があればそれを平均し、1ヶ月もないときは従前の標準報酬になる。
 

月給者が欠勤したときの『報酬支払基礎日数』

 
 月給者が欠勤したときは、雇用保険の『賃金支払基礎日数』なら『歴日数から欠勤日数を引く』のが基本だが、社会保険の『報酬支払基礎日数』は計算の仕方が違う。

 2006年5月12日の旧社会保険庁発出(0512001)では
 

 月給者で欠勤に数分に応じ給与が差し引かれる場合にあっては、就業規則、給与規定等に基づき事業所が定めた日数から当該欠勤日数を控除した日数によること
 

となっているので、通常は『月所定労働日数』から欠勤日数を引くことになる。

 たとえば事業所が定めた日数が『月22日』(年間264日)であれば、1日欠勤で21日・2日欠勤で20日…となり、6日欠勤した段階で16日で標準報酬の計算から外れることになる。

 欠勤₀日なら歴日数(28~31日)のところ、1日欠勤するといきなり21日とかになるのは少々違和感があるが、ここはそういうことになっていると納得してもらうしかない。

 

2025年08月19日