従業員40人以上で努力義務
『障害者雇用促進法』78条は次のように、一定以上の従業員を雇う事業主に『障害者雇用推進者』の選任を努力義務としている。これは原文通り書くとムダに長くなるので、省略してある。
事業主は、労働者の数が40人(特殊法人は36人)以上であるときは、次に掲げる業務を担当する者を選任するように努めなければならない。
一 障害者の雇用の促進及びその雇用の継続を図るために必要な施設又は設備の設置等
二 障害者雇用の状況報告・障害者の解雇の届出
三 障害者の雇入れ計画作成の命令・計画変更や適切な実施の勧告を受けたときの、当該命令・勧告に係る国との連絡・雇入れ計画の作成・実施
『三』について補足すると、国は、障害者数が法定雇用数に達しない事業主に対して雇入れの計画作成を命じ、変更を勧告することができるので、その対応だ。
障害者雇用促進法
この根拠となる『障害者雇用促進法』はざっくりいうと、
雇用機会と待遇の確保・能力開発・職業リハビリ等により、障碍者の自立した職業生活を促進するため、雇用分野での差別の禁止・合理的配慮を定める法律
といえる。
・ 障害者とは
障害者雇用促進法で『障害者』とは、
身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活の相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。(第2条)
とされ、これに該当すれば、必ずしも対応する障害者手帳などを持っていなくても法の対象になる。
これについては、次の『対象障害者』と混同しないよう注意が必要だ。
・ 対象障害者とは
この法律で条文上大きな部分を占めるのが第3章の『対象障害者の雇用義務に基づく雇用の促進等』で、37条2項では『対象障害者』を、
「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(略)の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に限る。(略))をいう。
としていて、実際には
○ 身体障害者手帳を持つ方
○ 療育手帳を持つ方
○ 精神障害者保健福祉手帳を持つ方
が中心になる。
障害者雇用率
上の『対象障害者』は最低の雇用者数(法定雇用数)が定められていて、これは『障害者雇用率』(法定雇用率)による。法定雇用率は現在2.5%(特殊法人は2.8%)になっている。
この率から法定雇用数を算出するときの端数は『切捨て』になるので注意が必要だ。
つまり基本的には、従業員が40人いれば最低1人の障害者の雇用が義務になることから、推進者選任の努力義務が課されるのも『40人以上』となっている。特殊法人の『36人以上』も同様だ。
ただし実際の障害者最低雇用者数のカウントはもっと複雑で、下の表のようになっている。障害ある労働者1人が、障害者雇用者数の計算上何人とカウントされるかという表だ。
週所定労働時間 ➡ 障害種別↓ |
30時間以上 | 20時間以上 ~30時間未満 |
10時間以上 ~20時間未満 |
---|---|---|---|
身体・知的障害 | 1人 | 0.5人 | 0人 |
身体・知的障害(重度) | 2人 | 1人 | 0.5人 |
精神障害 | 1人 | 0.5人 | 0.5人 |
・ 除外率
上の考えが基本になるが、障害者雇用率の分母たる労働者数から、一定の割合を除外できる業種もある。
この除外できる『一定の割合』を『除外率』という。
様々な事情で障害者雇用率を達成することが難しいと思われる業種について、分母としての労働者数を、その除外率に相当する数を除外して計算していいという規定だ。
たとえば、従業員が100人の一般企業の場合、最低雇用率は2.5%なので切捨てで『2人以上』となるが、この企業が除外率30%の業種なら、
100人 × ( 100% ー 30% ) × 2.5% = 1.75人 ➡ 1人
となり、1人以上で良いことになる。
・ 除外率は将来的に廃止が決定している
この『除外率』の設定は2002年に廃止が決定され、現在、順次廃止に向けて引下げが進行している。
現時点はそれから23年後となるが、2025年4月現在、除外率は以下のように設定されている。
船舶等はともかくとして、幼稚園・小学校等の教育機関等が上位に名を連ねているところが気になるところではある。
除外率 業種
5% 貨物運送取扱業など
10% 建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業
15% 港湾運送業
20% 鉄道業・医療業・高等教育機関
25% 林業
30% 金属鉱業・児童福祉事業
35% 特別支援学校(視覚障害者対象のものを除く)
40% 石炭・亜炭鉱業
45% 道路旅客運送業・小学校
50% 幼稚園・認定こども園
70% 船舶運航業
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