₂₇₀.私傷病で支給される傷病手当金



 労災や通勤災害以外の傷病(以下『私傷病』)で休業したときに、健康保険から支給されるのが『傷病手当金』だ。
 

(休日含め)継続休業4日目から支給

 
 この『傷病手当金』の支給要件は、
 

① 被保険者が
② 私傷病のために療養し、
③ そのため労務に服することができないために休業した日が
④ 待期期間(継続3日)を経過した日(4日目から)
 

支給されることになっている。

 まず①、傷病手当金の支給対象は被保険者だけで、被扶養者や任意継続被保険者(いわゆる『任継』)の方は対象外だ。

 ②、傷病手当金の支給対象は私傷病の場合だけで、業務災害や通勤災害の場合は労災保険の『休業(補償)給付』の対象になる。

 ③はいわゆる『労務不能』というやつだ。1つや2つ持病のある方はどこにでもいる。『病気やケガの方が休んでいる』だけではダメで、『病気やケガの方が、それが原因で労務不能になったので休んでいる』状態でなければならない。

 ④は、その状態が3日間継続した後に、4日目から支給されるというもので、労災のように断続3日間ではダメだ。この継続3日間を『待期期間』という。
 

・ 医師の判定が決定的

 
 さてこの『労務不能』は、最終的には協会けんぽなどの『保険者』が決めることになるが、実質的にはその前の『医師の判定』が決定的になることがほとんどだ。

 『労務に服することができない』かどうか医学的に判断できるのは医師だけだからだ。これは、誰がどう見ても死んでいると思われる状態でも、人が死亡していると判断できるのは医師だけなのと同じだ。
 

・ 待期期間は有給でも可

 
 ④待期期間『継続3日』とは、労務不能のため休業した日が継続3日間ということだが、注意点としては次のようなことが挙げられる。
 

ア. 断続ではダメ
イ. 会社休日も含める
ウ. 有給休暇取得日も含める
エ. 就業時間中からの場合はその日から、業務終了後の場合は翌日から数える
 

 労災の休業(補償)給付なら待期は通算3日だが、傷病手当金の場合は継続3日なければ待期は完成しない(ア)。

 ただし会社休日も含めて継続3日あればいい(イ)。これがなければ《土・日・水》が休日の場合など、永久に待期が完成しないことになってしまう。土日休みなら、金曜日から労務不能で翌々日の日曜日で待期は完成する。

 人間の体は機械ではないのでこの場合、3日休んだことで少し体調がよくなり翌月曜日出社するも、やはり病状が悪化して翌火曜日はお休みということもあると思う。この場合は待期は完成しているので、火曜日から傷病手当金の支給対象になる。

 『傷病休暇』というものは法定されていないので、本人の意思により具合が悪くて出社できないときは年次有給休暇をあてる方も多いと思う。その場合でも待期期間に算入される(ウ)。

 勤務時間中に早退して医療機関を受診したような場合はその日から待期期間になる(エ)。ムリして勤務時間終了後に受診した場合は翌日から起算する。
 

初診日前の休業期間は対象?

 
 あまりの体調の悪さに早退して帰宅しても、何も行動できずに翌日病院受診という場合もあるだろう。また、しばらく寝込んでいて何日か経ってから病院を受診するという場合もあるかもしれない。こういう場合、初診日前の休業日は傷病手当金や待期期間の対象になるのか?

 これは『何とも言えない』というのが答えだ。『労務に服することができない』かどうか医学的に判断できるのは医師だけというのは前に書いたが、初診日前の状態は医師は見ていないからだ。

 患者の申出と初診日の状況から、医学的に申出内容に矛盾がなければ初診日前も労務不能だったと認定していただける場合もあるが、そうでない場合場合もある。ケガと病気の違いもある。

 その辺は医師の医学的な判断になる。

 肝心なのは、医師にそのような負担をかけないよう、『労務不能になったら何をおいてもさっさと医療機関を受診する』ということに尽きる。
 

支給期間は『通算』1年6ヶ月

 
 傷病手当金の支給期間は、支給開始から最大『通算』1年6ヶ月で、これは最近(2022年度から)変わった点だ。その前は1年6ヶ月経過した時点で強制終了だったので、この違いは大きい。

 現在は通算1年6ヶ月間可能なので、たとえばある病気にかかって傷病手当金を受給し、途中で病状が軽快して職場復帰したとする。

 その後また受給を再開した場合にも復帰していた期間は『1年6ヶ月間』に入らないので、復帰期間を算入せずに実質で1年6ヶ月間受給することができる。

 もちろんこうして長期間在職し続けることができるかどうかは会社の就業規則やその他の状況による。退職した場合も傷病手当金を受け続けられる場合もあるが、その場合はまた別の扱いになるので次回述べる。

 この『1年6ヶ月間』の算定は『同一の傷病』についての話なので、まったく別の傷病が始まったのなら、その傷病で休業した時点から『待期期間+通算1年6ヶ月間』受給できる可能性がある。

 ここで『まったく』を強調したのは、最初に傷病手当金を受給した原因となった傷病と関連して次の傷病にかかった場合には『同一の傷病』とみなされるからだ。
 

傷病手当金の支給額

 
 傷病手当金の支給額は1日ごとに、『支給開始月以前12ヶ月の平均の標準報酬日額の3分の2』となっている。

 『支給開始月』とは文字通り支給が開始された月で、たとえば3月30日から待期期間が始まり3日を経過した4月2日から支給された場合、支給開始月は4月になる。

 長期にわたる病気などでは労働時間の減少などで支給開始時には標準報酬が低下している場合もあるが、こうした場合も支給開始当月まで過去1年間の平均で算定するので、ありがたいことは確かだ。

 もちろん逆にどういう経緯か知らないが、支給開始日近くなって随時改定などで急激に標準報酬が上昇しても、傷病手当金はそれなりの金額に抑えられることになる。

 いずれにしても一旦支給が開始されれば、同一傷病によるものである限り、それ以降傷病手当金の日額が変更されることはない。

 正確には、傷病手当金の日額は次のように計算する。
 

① 支給開始日までの加入期間が12ヶ月以上ある場合

 
 支給開始月以前12ヶ月間の標準報酬の平均 ÷ 30 ➡ 10円未満四捨五入 ➡ 日額

 日額 × 3分の2 ➡ 1円未満四捨五入 ➡ 傷病手当金の日額
 

例)4月2日支給開始 ・標準報酬 前年5月~当年1月41万円・2~4月 34万円

 ( 41万円×9 + 34万円 ×3 )÷ 12 ÷ 30 ➡ 1万3080円

 1万3080円 × 2/3 ➡ 8720円
 

② 支給開始日までの加入期間が12ヶ月ない場合

 
   ア. 加入月から支給開始月までの標準報酬の平均
   イ. 32万円(前年9月30日の全被保険者の標準報酬の平均)

 ア・イの少ない方の額 ÷ 30 ➡ 10円未満四捨五入 ➡ 日額

 日額 × 2/3 ➡ 1円未満四捨五入 ➡ 傷病手当金の日額
 

で計算します。
 

傷病手当金が月ごとに変わるのは?

 
 傷病手当金の受給期間は最大通算1年6ヶ月あるので、ずっと受給し続け1ヶ月ごとに支給申請しているのにまいつき支給額が違うことがある。

 言われてみれば《な~んだ》だが、これはその月(〆日ごと申請の場合は前月〆日翌日から〆日まで)の歴日数の違いによることが多い。

 雇用保険系の育児休業給付金などでは、一部例外はあるが1ヶ月を『30日』固定で計算するので、毎月の支給額は一定になる。

 しかし傷病手当金はあくまでその日その日について計算するので、『小の月』は『大の月』より1~3日分少なくなる。

 しっかり1日1日について計算してくれているということで、これは安心していい。

 

 

2026年04月15日