₂₂₄.妊産婦や女性が就けない業務



 妊産婦については労働基準法や女性労働基準規則(女性則)で就業が禁止されているものもある。これは母性保護の観点からだが、すべての女性に禁止されているものもある。
 

すべての女性が就業禁止の業務

 
 次の業務については、すべての女性が就業禁止となっている。
 

① 坑内で行われる人力による掘削の業務
 

 いわゆる炭鉱夫の業務で、これについては労働基準法で、すべての女性について就業が禁止されている。
 

② 重量物を扱う業務

 
 一定以上の重量物を扱う仕事も、すべての女性に就業が禁止されている。重量物として扱いが禁止される限度は次の通り。
 

       16才未満  16・17才  18才以上
断続作業    12kg    25kg    30kg
継続作業      8kg    15kg    20kg
 

③ 有毒物のガス等を発散する場所での業務

 
 禁止されるのは、労働安全衛生法の作業環境測定により『第3管理区分』となった屋内作業場の業務・タンクや船倉内で規制対象となる化学物質を取り扱う業務で、呼吸用保護具の使用が義務付けられている業務だ。

 これは『女性則』2条1項で規定されている通称『24業務』の『18号』にあたる。以下『(18)』のように表記します。

 これらの化学物質は、具体的には次のようなものを指す。
 

 ア. 特定化学物質障害予防規則の適用を受けているもの

  ・PCB ・アクリルアミド ・エチルベンゼン ・エチレンイミン ・エチレンオキシド
  ・カドミウム化合物 ・クロム酸塩 ・5酸化バナジウム ・水銀やその無機化合物
  ・酸化ニッケル(Ⅱ)(粉状) ・スチレン ・テトラクロロエチレン
  ・トリクロロエチレン ・ヒ素化合物 ・ベータ―プロピオラクトン
  ・PCPやそのナトリウム塩 ・マンガン
 

 イ 鉛中毒予防規則の適用を受けているもの

  ・ 鉛及びその化合物
 

 ウ 有機溶剤中毒予防規則の適用を受けているもの

  ・エチレングリコールモノエチルエーテル
  ・エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
  ・エチレングリコールモノメチルエーテル ・キシレン
  ・NN-ジメチルホルムアミド ・トルエン ・二硫化炭素 ・メタノール
 

妊産婦は全面禁止

 
 ○ 身体に著しい振動を与える業務

  ・ さく岩機・鋲打機等の機械器具を使用する業務(24)

 こうした振動業務については、申出の有無に関わらず、妊産婦については全面的に禁止されている。
 

妊婦は禁止・産婦は申し出た場合は禁止

 
 次の業務については、妊娠中の女性は全面禁止・産後1年を経過しない女性は申出があった場合は禁止となっている。
 

① 坑内業務

 
 人力掘削についてはすべての女性が禁止だが、他の坑内業務について労働基準法(64条の2-1項)は
 

 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しないことを使用者に申し出た産後1年を経過しない女性
 

についてのみ、『坑内で行なわれるすべての業務』を禁止している。
 

② 危険性が高い機械の運転・取扱い

 
 ・ ボイラーの取扱い(2)
 ・ ボイラーの溶接(3)
 ・ 制限荷重5t以上のクレーン・デリック・揚貨機械の運転や玉掛け(4)(6)
 ・ 運転中の原動機等の動力伝達装置の掃除・給油・検査・修理・ベルトの掛替え(5)
 ・ 動力駆動の土木建築機械・船舶荷扱用機械の運転(7)
 ・ 直径25cm以上の丸のこ盤・直径75cm以上の帯のこ盤への木材供給(8)
 ・ 操車場構内での軌道車両の入替え・連結・解放(9)
 ・ 蒸気や圧縮空気で駆動するプレス・製造機械による金属加工(10)
 ・ 動力駆動のプレス機械・シャー等による8mm厚以上の鋼板加工(11)
 ・ 岩石等の破砕機・粉砕機への材料供給(12)
 ・ 胸高直径35cm以上の立木の伐採(16)
 ・ 機械集材装置・運材索道等による木材搬出(17)
 

③ 身体に有害な環境下での業務

 
 ・ 多量の高熱物体を取扱う業務(19)
 ・ 著しく暑熱な場所における業務(20)
 ・ 多量の低温物体を取扱う業務(21)
 ・ 著しく寒冷な場所における業務(22)
 ・ 異常気圧下における業務(23)
 

妊婦についてのみ禁止

 
 以下の業務については、妊娠中の女性については全面禁止となっている。

 
○ 危険な場所における業務

 
 ・ 土砂崩落の恐れがある場所・深さ5m以上の地穴での業務(13)
 ・ 高さ5m以上で、墜落の恐れのある場所での業務(14)
 

放射線業務での母性保護規定は3段階

 
 管理区域内で放射線業務に従事する方の放射線量の『被ばく限度』基準は『電離放射線障害防止規定』で定められていて、女性に限ると3段階になる。
 

① 妊娠する可能性がないと診断された女性

   ・ 5年間に実効線量100mSv以下、かつ1年間に50mSv以下(男性も同じ)
 

② ①・③以外の女性

   ・ 3ヶ月間に実効線量5mSv以下
 

③ 妊娠中の女性(妊娠と診断された女性)

   ・ 内部被ばくによる実効線量1mSv以下
   ・ 腹部表面における等価線量2mSv以下
 

となっている。ちなみに、一般公衆の実効線量限度は1mSvだ。

 ここで『mSv』(ミリシーベルト)は、『線量当量』の単位。

 『線量当量』とは、吸収線量(放射線から受けるエネルギー)に『線質係数』(放射線の種類と人体対象組織による係数)をかけたもので、ザックリいうと放射線が人体に与える影響の大きさと考えていいようだ。

 ただし、れっきとしたSI単位系に属する単位で『1Sv = 1J/kg』。
 

『妊娠中の女性』は申出の要件なし

 
 今回紹介した『妊娠中の女性』の就業制限に関しては、前回のような(本人が)『請求した場合は…』とか『申出があったときは… とかいうような前提条件はない。』

 

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2025年04月08日