₂₀₃.失業手当(失業保険)をもらうには



 失業したときに頼りになるのが失業手当だ。ここでは失業手当をもらうための受給資格があることは前提とする。この『受給資格』は結構複雑なので、次回まとめる。
 

必ず必要な労働の意思と能力


 何度か失業経験のある方はハローワークで必ず確認されるので先刻ご承知と思うが、失業手当をもらうには、労働の意思と能力が必要だ。法律上も
 

 この法律(雇用保険法)において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう(雇用保険法第4条第3項)

 
 となっているように、労働の意思または能力のいずれか(または両方)を欠いている場合はそもそも『失業』とはみなされないので、失業手当は給付されない。要は、『労働しようとしていて』かつ『労働できる』ことが要件になっている。

 つまり『仕事を辞めた=失業』ではない。これは一般の離職者であっても、一時金の対象になる季節雇用や離職時65才以上の方であっても同様だ。

 労働の『意思』は就職活動への取組み具合で判断される。『能力』については、たとえば離職日まで傷病休職がずっと続いていたような場合には問われることが多い。
 

『失業手当』という手当はない

 
 一般に『失業手当』と呼ばれることが多いのでここまでずっと『失業手当』と書いてきたが、実はそういう手当はない。

 また『失業保険』という保険もない。これは『雇用保険』で、失業したときだけ給付される訳ではない。

 雇用保険の給付は『失業等給付』と『育児休業給付』それに『2事業』に分かれる。『2事業』というのは主に事業主対象の助成金関係だ。

 語感から一般にいう『失業手当』に近いのはこの『失業等給付』だが、『失業等給付』は労働者向けの雇用保険の給付の総称で、失業とは全く関係ない給付も多く含まれる。

 『失業等給付』はさらに『求職者給付』・『就職促進給付』・『教育訓練給付』・『雇用継続給付』に分かれ、『求職者給付』は給付の対象が『受給資格者』か『高年齢受給資格者』か『特例受給資格者』か『日雇受給資格者』かによってさらに4つに分かれる。

 このうち『日雇受給資格者』については特殊なので他の3つについて述べるが、いずれも、離職の際にどういう状況だったのかによって判断される。また申し訳ないがここでは、以下の方々の失業時の給付として、存在しない『失業手当』という間違った言葉を使わせてもらう。
 

・ 受給資格者

 離職時65才未満で、季節雇用以外の方。普通の失業給付基本手当)の対象。
 給付日数は状況に応じて90日~360日分
 

・ 高年齢受給資格者

 離職時65才以上で、季節雇用以外の方。一時金(高年齢求職者給付金)の対象。
 給付日数は30日分か50日分
 

・ 特例受給資格者

 季節雇用の方。一時金(特例一時金)の対象。
 給付日数は40日分
 

求職の申込み以後7日間は待期期間

 
 基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後について、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して7日に満たない場合は、支給しない。
 

ことになっていて、他の条項で65才以上の方の『高年齢求職者給付金』についても季節雇用の方の『特例一時金』についても『準用』することになっているので、この『待期7日間』というのは雇用保険にとって普遍的なものだ。

 ここで失業していなければならない『7日間』は『通算』なので、法律上は何日かアルバイトに行ってもその分『待期』期間の終了が後に延びるだけだ。ただしその場合は、アルバイトに行った日を正しく申告しないと後で大変なことになる。

 なお、社労士以外の方が書いた説明では『待』期間となっているものがあるが、これは間違いだ。
 

申込みをしなければ始まらない

 
 ここで、離職者には当然だが不慣れな方が多いので、単純だが間違えやすいのは、この『7日間』は、求職の申込みをした日からスタートするということだ。

 だから離職票をもらって7日間ハローワークに行かずにじっとしていても、時計は先には進まない。

 まず『求職の申込み』ありきだ。
 

自己都合ならその後2ヶ月給付ナシ

 
 待期期間が無事に終了してもすぐに給付期間が始まるとは限らない。『給付制限期間』というものがあるからだ。これは離職理由によって『0~3』ヶ月間になる。

 待期期間はどの場合も7日間で共通だが、その後いつから受給が始まるかは離職理由によって変わってくるのだ。この待期期間の後の『給付制限期間』は次のようになっている。

 ただし、『離職理由』はかなり多岐にわたるので、あくまで参考例と考えてほしい。
 

・ 0ヶ月(給付制限期間ナシ)

  ○ 普通解雇
  ○ 倒産等による離職
  ○ 雇用契約期間満了による離職
  ○ 正当な理由のある自己都合(後述)による離職
 

・ 1ヶ月

  ○ 待機完了前に就職し、1ヶ月以上後の自己都合による退職
  ○ 受給資格決定後2回以上再就職・再離職し、1ヶ月以上後の自己都合退職
 

・ 2ヶ月

  ○ 普通の自己都合退職(25年4月から1ヶ月に変更)
 

・ 3ヶ月

  ○ 自己の責に帰すべき重大な理由による解雇
  ○ 5年間に3回目以上の自己都合退職
 

受給できる期間は意外と短い

 
 『失業手当』をもらえる期間を『受給期間』という。これを長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれだが、意外と短いと心に留めておいた方がもらいそびれる危険は少ない。

 『受給期間』は基本的には離職の翌日から
 

  ・ 季節雇用の場合    6ヶ月
  ・ 一般(高年齢含む)   1年(給付日数が300日を超えるときはその分プラス)

 
 となっている。

 離職票が届くまでにも長いと2週間程度かかるので、7日間の待期期間・受給制限期間を考えるとあまりのんびりしてはいられない。求職の申込みは早めにした方がいい。

 もし、決定された『給付日数』が、上記『受給期間』の残りよりも短い場合には、そこからはみ出した分の『給付日数』分の給付はなくなる。これは季節雇用や高齢者など『一時金』の場合も同様だ。

 この『受給期間』についても状況によっては『基本的』ではない例外(期間延長)があるので、それについては後日触れる。

 

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2025年01月17日