社会保険の扶養に入ることができる要件が'25年10月から変わった。
年末時点の年齢が19才~22才の方の年収基準が130万円未満から150万円未満に緩和された(配偶者除く。)のだ。
これは、税法上の『特定扶養親族』や今回新しく登場した『特定親族』について、最大63万円の控除が得られる方の所得要件が85万円(給与収入で150万円)以下に緩和されたことによるもの。
・ 特定親族とは?
国税庁によれば
特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色専従者として給与の支払いを受ける人及び白色専従者を除きます。)で合計所得金額が58万円以上123万円以下の人
をいう。
ちなみにこの定義で、他はそのままで合計所得金額が58万円未満の場合は、従来通り『特定扶養親族』となる。
社会保険の被扶養者の収入要件
これにより、社会保険上の被扶養者の収入要件は'25年10月以降次のようになった。ついでに'25年と'26年に対象となる生年月日も入れておいた('26年については変更の可能性がある)。
年末時点の年齢 生年月日 年額 月額
'25年 '26年 (未満) (未満)
18才以下 2007.1.2~ 2008.1.2~ 130万円 10万8334円
19才~22才 2003.1.2 2004.1.2
~2007.1.1 ~2008.1.1 150万円 12万5000円
23才~69才 1955.1.2 1956.1.2
~2003.1.1 ~2004.1.1 130万円 10万8334円
70才以上 ~1955.1.1 ~1956.1.1 180万円 15万円
'25年9月以前は70才以上か70才未満かの2種類だったのが一気に複雑になった形で、社員の質問に答える立場の方にとっては大変だが、一部でも基準が緩くなったのは朗報といえる。
19~22才は、年収150万円未満なら扶養対象
年末時点で19~22才の、今回法改正となった方を中心に考えるが、今回の改正は税制の改正が先行していることから、ここで出てくる『年収』についても、税制と混同した誤解が見られるようだ。
・ 『年収』は『年収換算』と考える
『年間収入』については日本年金機構はホームページ('25.08.19)のQ&Aで
Q 年間収入が150万円未満かどうかの判定は、所得税法上の取扱いと同様に、過去1年間の収入で判断するのですか。
A 年間収入が150万円未満かどうかの判定は、従来と同様の考え方により判定します。具体的には、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を見込むことになります。
と説明している。これは行政機関としては最大限の表現と言えるかもしれない。
もちろん『今後1年間の収入見込み』は、扶養認定の大前提だ。だがしょせん人間。先のことは誰にも分からないのが現実だ。
ただし、扶養者・被扶養者ともに状況にさしたる変化がなければ、税金の扶養控除のように、その年・または前年の収入で判断しても問題はない。
逆に、離職等で無収入になれば、それまでどんな高額所得者であってもその時点から家族の扶養に入れるというのは〝₁₄₆.税と社会保険の『扶養』の違い〟で書いた。
離職など収入に大きな変化があった場合は、その前(働いていたとき)の収入がいくらあろうと被扶養者の認定収入には関わってこないのだ。それが『今後』1年間の意味だろう。
・ 実務的には『月額12万5000円』が重要
何を言いたいかというと、こうした状況の激変があった場合には、実務的には基準年収の『150万円』を12で割った『月額12万5000円』が扶養認定の可否を分けることになる。
たとえば就職していた19~22才の子どもが離職した場合、離職後アルバイトに行って、その収入が月額12万5000円未満であれば、他の要件を満たせば扶養に入れる。
もちろんこれは9月以前から扶養に入っていた方も同様で、10月以降は12万5000円未満であれば大丈夫だ。
19~22才でも、配偶者は130万円未満基準
注意しなければならないのは、今回社会保険の扶養基準が緩和されたのは19~22才であっても税法上の『特定扶養親族』や『特定親族』に限られ、配偶者は入らないということだ。
税法上配偶者は『扶養親族』にも『特定親族』にもならない(₁₄₈.配偶者の控除は、扶養控除とは違う)からだ。
配偶者の社会保険上の扶養の基準は130万円のままなので、たとえば19~22才の妻が年収130万円相当(月額10万8333円)を超えれば、扶養から外れなければならない。
これはどう考えても理不尽とは思うが、税法上の基準に合わせた改正なので、法律上致し方ない。
扶養者収入の1/2未満・仕送り額未満 の要件も
ここまでの理屈はマスターしたとしても、見落としがちなのが扶養する側の収入や仕送り額だ。
年収換算150万円未満の特定扶養親族や特定親族(多くは扶養者のお子さんだと思うが)であっても、扶養する側の収入や仕送り額によっては社会保険上の扶養に入れない場合もあるから、この点は重要だ。
この、社会保険の扶養認定のもう1つのハードルは、扶養される側の収入が、
・ 同居の場合 扶養者の収入の2分の1未満
・ 別居の場合 扶養者からの仕送り額未満
でなければならないというものだ。
たとえば別居の子の収入が月5万円なら月額5万円、12万円なら月額12万円を超える仕送りが必要になる。
この仕送り状況については、被扶養者が学生の場合は扶養者の申告だけでいい。学生以外ならこれに加えて、仕送りの事実と仕送り額を確認できる書類(通帳コピー等)を添付しなければならない。
もちろん同居でも上の規定から、この収入が月12万円なら親の年収は288万円を超えていなければならないのが原則だ。
ただ同居の場合は子の収入が親の2分の1以上あっても、親が主たる生計の維持者であれば、その申立てで扶養が認められることもある。