昇給時期は何月がいい?
ここでの『昇給』は社会保険の話なのでいわゆるベースアップも含める。昇給時期は年度初めの4月というのが昔は定番だった。社会保険料に関わる『支給月』でいうと、当月支給なら4月・翌月支給なら5月ということになる。
前に述べたように、標準報酬は基本的に4~6月に支給された給与で決まるので、昇給時期は、この時期を外した方が標準報酬を抑えられる。
標準報酬を意図的に抑制することは、傷病や出産のときの手当金や将来の年金額の減少も招くので推奨しないが、上の観点からは、当月支給の会社なら7月、翌月支給の会社なら6月昇給の方が、4月昇給よりも標準報酬が低めになる可能性が高いのは事実だ。
昇給の結果、1等級増となっても、1等級の差であれば月額変更にはならないので、翌年の9月までは影響を抑えることができる。
もっとも、昇給幅自体が2等級に達するようなら何をやってもムダなので(よほど普段から残業漬けの人なら残業を抑えることで月変を回避することも考えられるが)、給料が上がったことを素直に喜んで、月額変更を受け入れるべきだ。
さかのぼり昇給は月額変更の対象外
企業規模等にもよるが、労働組合と経営側の労使交渉が長引き、何とか年内決着。12月になってから4月にさかのぼってベースアップ。昇給した給与と4月~11月の昇給差額が12月になって支払われる…というのもよく聞く話だ。
田中角栄の時代、12月の昇給差額が冬のボーナスに匹敵するほどだったというのは、筆者が教員時代よく聞かされていた話だ。もっともこのころは公務員労組の力も強く、田中角栄のおかげだけではなかったらしい。
こういう『さかのぼり昇給』(ベースアップ含む。)の場合、実際に昇給した金額を受け取るのはかなり後になるので、受取った月が『賃金が変動した月』となる。
12月になってから4月にさかのぼって昇給した報酬を受け取った場合なら、4月~11月支給分の昇給差額はムシして、12月~翌年2月支給分の平均給与が従前の標準報酬を2等級上回ったかどうかで随時改定(月額変更)するかどうかが決まる。
・ さかのぼり差額分の昇給額はムシ
そこまで極端でなくても、翌月支給の会社なら、6月分から、4月分にさかのぼって昇給することも考えられる。
たとえば、6月分給与から4月分にさかのぼって2万円昇給し、6月分給与で昇給差額を含めて6万円(4月分~6月分)支給したとする。
この場合、月額変更の計算の際、昇給差額の4万円は計算に入れないので、昇給の影響としては、6~8月分の平均で2万円上昇することになる。
元々の標準報酬が20万円以上の方なら、2万円の上昇なら報酬月額の上昇は1等級以内だ(ここでは残業代などの非固定給は考えない。)ので、月額変更の対象にはならない。
この『さかのぼって昇給』というのは一般の中小企業ではあまり聞かないが、上に書いたように大手や公務員などでは毎年のようにやっているところもある。
申請遅れや事務ミス等によるものはダメ
昇給差額というのは普通に厚労省のパンフ等にも載っている割にはちょっと盲点かもしれない。賞与と違って差額自体に社会保険料はかからない。ただ、はじめから4月の昇給が決まっているなら『決まっているなら払えよ!』という話になるので、あくまで4月分からの昇給が6月に決定した場合に限る。
4月分から2万円と決まっていた昇給の差額を6月分給与から支払った場合は、単に給与事務上のミス等とみなされるので、4月分から2万円昇給したものとして定時決定・月額変更の3ヶ月分の金額に算入することになる。
日本年金機構のパンフレットでは、もともと手当の支給対象になっていた方が、申請の遅れや事務方のミスで翌月以降にさかのぼって手当を支給された場合の扱いが説明されていて、これも同様に、たとえまだ支給されていなくても、支給対象となった手当が満額支給され始めるべき月が『変動月』となる。
満額支給され始めた月が『変動月』
・ 月(賃金計算期間)の途中、ハンパな時期に昇給したら
月給の方なら普通、ある賃金計算期間(前の〆日翌日から次の〆日まで)の『途中』から昇給ということはないのであまり気にすることはない。
それでも緻密に給与計算をやっていることころなら、月末〆で16日から住所が変わって新たに『月4200円』の通勤手当対象となったが、初月分は半分の2100円…という場合はあるだろう。
時給・日給の場合なら、〆日に関わらず時給・日給が変更になるという場合はごく普通にある。
たとえば『固定的給与』である時給が10月4日から増額された場合、月額変更(随時改定)の契機となる固定的給与の『変動月』はいつになるのか。
ごく普通に考えれば10月に増額したのだから、翌月支給の会社なら11月だろうと思いきや、答えは12月だ。
・ 満額支給の月から3ヶ月平均で見る
つまり、時給の増額が満額反映されるのは11月分の給与(12月支給)なので、12月支給~翌年2月支給の平均で、月額変更になるかどうかを見ることになる。
ちなみに例に出した『10月4日』というのは、2025年、北海道で新たな最低賃金が適用になる予定日だ。
前項の例の、通勤手当の場合も同じだ。規定の半分『2100円』の通勤手当が支給された月は変動月でなく、満額4200円支給された月が『変動月』になる。
もちろん、降給や手当の減額・廃止の場合も同様に考える。その月(賃金計算期間)途中で減額・廃止された場合も、完全に減額・廃止された後の報酬が支払われた月が、月額変更算定月の1ヶ月目になる。
たとえば20日〆・翌5日払いの会社で1月1日からある手当が廃止された場合、その手当が完全になくなるのは1月21日~2月20日の計算期間の分で、それが支給されるのは3月5日なので、3~5月支給の給与の平均で月額変更の対象か否かを決めることになる。