ここで紹介するのは
・ 男女雇用機会均等推進者
・ 職業家庭両立推進者
・ 短時間・有期雇用管理者
の3つで、選任はすべて努力義務となっている。
ほかにも選任しなければならない、または選任するよう努めなければならない推進者・管理者・責任者等は多々あるが、ここであえてこの3つをまとめて紹介するのは、各労働局に提出(Fax等も可)する厚労省指定の『選任・変更届』がまとめて1枚に一括されているからだ。
選任が任意である以上届出も任意だが、選任された方には労働局からセミナーの案内や業務上有用な資料等も提供されるようなので、選任したのなら届け出た方がいいだろう。
そんなわけでここでは勝手に『選任3兄弟』とした。こうしておくと覚えやすいかなと思っただけでふざける意図はない。
男女雇用機会均等推進者
男女雇用均等法13条の2では、『男女雇用機会均等推進者』について、次のように選任の努力義務を定めている。
事業主は、厚生労働省で定めるところにより、第8条、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び前条(13条)第1項に定める措置並びに職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべきその他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当するものを選任するように努めなければならない。
推進者の担当業務は、ここに書かれている『措置』の実施を図るための業務ということになる。条文で示された『措置』とは、それぞれ次のような内容だ。
第8条 ➡ 女性労働者に係る措置に関する特例(ポジティブアクション)
第11条 ➡ 対セクハラ等の体制整備
第11条の2 ➡ 対セクハラ等の広報・啓発(努力義務)
第11条の3 ➡ 対マタハラ等の体制整備
第11条の4 ➡ 対マタハラ等の研修の実施等(努力義務)
第12条 ➡ 女性労働者の、母子保健法による保健指導・健康診査の時間確保
第13条 ➡ 12条のための勤務時間の変更・勤務の軽減等
資格等は不要だが、このように男女雇用機会均等推進者の業務は多岐にわたる。
職業家庭両立推進者
育児介護休業法29条では次のように、『職業家庭両立推進者』の選任を努力義務として定める。
事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、(条文列記)に定める措置等並びに子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために講ずべき措置その他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者を選任するように努めなければならない。
ここで『条文列記』として省略した『措置等』の内容を要約すると、条文ごとに
第21条 ➡ 育児休業等に関する就業規則等の作成・周知等
第22条 ➡ 配置ほか雇用管理・育児休業者の職業能力開発等の企画立案・周知等
第23・24条 ➡ 育児短時間勤務の企画立案・周知等
第25条 ➡ 育児休業等に対する言動による問題に対応する体制の整備等
第26条 ➡ 配置の変更の際の労働者に対する各種配慮の実施
第27条 ➡ 再雇用特別措置の企画立案・周知等
が、その内容だ。
ちょっと分かりづらいところがあるかもしれないので一部解説すると、
25条の『言動による問題』とは、育児介護休業法上の権利行使に対するハラスメント対策
27条の『再雇用特別措置』とは、妊娠・出産・育児・介護で退職した場合で、その方が就業可能になったときの再雇用を退職時に希望していた場合には、その後の募集・採用の際に特別の配慮をすること(努力義務)をいう。要するに出戻り歓迎だ。
職業家庭両立推進者についても資格等は不要だが、『本社人事労務担当部課長以上の者』等、業務遂行に必要な知識・経験を有すると認められる者からの選任が求められている。
短時間・有期雇用管理者
パートタイム・有期雇用労働法17条では次のように、常時10人以上の短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主に対して、短時間・有期雇用管理者の選任について努力義務を課している。中小企業も2021年から対象になった。
事業主は、常時厚生労働省令で定める数以上の短時間・有期雇用労働者を雇用する事業所ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、指針に定める事項その他の短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間・有期雇用管理者を選任するように務めるものとする。
ここで『省令で定める数』というのが10人で、これ以上のパート・有期雇用労働者を雇用する事業所は、短時間・有期雇用管理者を選任する努力義務がある。
もう1つ、前述の男女雇用機会均等推進者や職業家庭両立推進者はその会社(事業主ごと)に1人いれば努力義務を果たしたことになるが、『短時間・有期雇用管理者』は『事業所ごと』だという点が他の2つとの違いだ。
1つの会社がそれぞれ10人以上のパートや有期雇用者を雇用する事業所をいくつか持っていれば、その数だけ『管理者』の選任に努めなければならないし、合計10人以上いても各事業所ごとのパートや有期雇用者がそれぞれ10人未満なら、選任の努力義務はない。
もちろん、努力義務がない事業所でも『管理者』を選任するのは意義のあることだと思う。
『短時間・有期雇用管理者』には、事業所の人事労務管理について権限を持つ者の選任が求められ、次の業務が期待されることになっている。
・ パートタイム・有期雇用労働法や指針に定められた事項
・ ほか、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善
・ 労働条件等に関して、パートタイム・有期雇用労働者の相談に応じること
選任・変更届
最初に書いた通りこれら3つの『推進者』や『管理者』を選任・変更したときの届出書は、
「男女雇用機会均等推進者」
「職業家庭両立推進者」 の選任・変更届
「短時間・有期雇用管理者」
としてA4用紙1枚にまとめられているので、これに必要事項を記入して提出するだけでよい。
内容は、以下の通りでこれだけだ。
・ 事業所名
・ 所在地
・ 代表者職氏名
・ 主な事業内容
・ 総労働者数 男女別
うち、正社員数 男女別
うち、短時間・有期雇用労働者数 男女別
● 男女雇用機会均等推進者
選任・変更の別・所属部課・役職名・氏名
● 職業家庭両立推進者
(上と同じ)
● 短時間・有期雇用管理者
(上と同じ)