毎年恒例の保険料率改定の季節になってきた。
2026年度の保険料率表を見て驚いた人もいるのではないだろうか。中央左寄りの『子ども・子育て支援金』って何だ?〝オレの知らないうちに何を勝手なことを…〟と文句の1つも言いたくなった人も1人や2人ではないだろう。
もちろん、国会で手順を踏んで法令が審議されて施行されたもので、『勝手に』持ち込まれたものではない。
もっと多いと思われるのが『子ども・子育て拠出金』と勘違いした人だ。『子ども・子育て拠出金』は前からあって、事業主だけが拠出していたものだ。
『子ども・子育て支援金』は、もちろんこれとも別物だ。
子ども・子育て支援金は、少子化対策強化のため
こども家庭庁の説明では、『こども・子育て支援金』とは、
「加速化プラン」における少子化対策の抜本的強化に当たり、子育て世帯を支える新しい分かち合い・連帯の仕組みとして、少子化対策に受益を有する世代・全経済主体に、医療保険の保険料とあわせて、令和8年度から拠出いただく。
ことにしたものだ。
なお、ここで支援金の対象となる事業として、次のものを挙げている。
① 児童手当(2024.10~)
② 妊婦支援給付金(2025.4~)
③ 出生後休業支援給付金(2025.4~)
④ 育児時短就業給付金(2025.4~)
⑤ 子ども誰でも通園制度(乳児等支援給付)(2026.4~)
⑥ 国民年金第1号被保険者の育児期間中保険料免除(2026.10~)
⑦ 子ども・子育て支援特例公債の償還金等
『子ども・子育て拠出金』は児童手当等の財源
これに対して『子ども・子育て拠出金』は、
児童手当制度が次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することにより、将来の労働力の維持、確保にもつながる効果が期待されるとして、昭和46年度に創設
されたものがもとになっている。『児童手当』以外に『次代の社会を担う児童の健やかな成長に資する』ものとして拠出金が充当されている事業には、ほかにも次のものがある。
① 児童手当
② 放課後児童健全育成事業
③ 延長保育事業
④ 病児保育事業
⑤ 企業主導型保育事業
⑥ ベビーシッター利用者支援事業
⑦ 中小企業子ども・子育て支援環境整備事業
⑧ 子どものための教育・保育給付
『支援金』は労使折半・『拠出金』は事業主のみ
『子ども・子育て支援金』は、2026年で健康保険の標準報酬の0.26%を労使で折半する。端数の扱いは、健康保険と同様、被保険者分については0.5円『以下』切捨てが原則だ。
『子ども・子育て拠出金』は、今まで同様事業主だけが負担する。こちらは厚生年金の標準報酬の0.36%を、事業主が負担することになる。
他の社保料・税よりは金額は小さい
この『子ども・子育て支援金』または『子ども・子育て拠出金』、他の社会保険料等と比べて負担はどの程度になるのか。
40才・独身・北海道・月収30万円(標準報酬も30万円)・一般事業(農・漁業・建設等以外)の例で、試算してみた。
保険料等 被保険者 事業主
○ 健康保険料(10.28%) 1万5420円 1万5420円
○ 介護保険料(1.62%) 2285円 2285円
○ 子ども・子育て支援金(0.23%) 345円 345円
○ 厚生年金保険料(18.3%) 2万7450円 2万7450円
○ 子ども・子育て拠出金(0.36%) 0円 1080円
○ 雇用保険料(1.35%・見込) 1500円 2550円
○ 所得税 6220円 0円
総計(住民税除く) 5万3220円 4万9130円
実質的負担は他の社会保険料等と比べて少ないとは言えるが、新しい控除が続々と登場する心理的圧迫感はある。
・ 『支援金』の方が『拠出金』より多い場合も
上の表からは、『子ども・子育て支援金』は労使で総計690円で、『子ども・子育て拠出金』は1080円なのが分かる。現在『支援金』は0.23%で『拠出金』は0.36%なので、納付額全体では『拠出金』の方が多くなりそうな気がする。
しかし『支援金』は上に書いたように健康保険の標準報酬に依存するので、報酬月額が65万円を超えると頭打ちとなる『拠出金』に比べて割合が少しずつ上昇し、計算すると報酬月額103万円あたりで『拠出金』を凌駕するようになる。
報酬月額 標準報酬(健保) 標準報酬(厚年) 『支援金』 『拠出金』(労使計)
30万円 30万円 30万円 690円 1080円
59万円 59万円 59万円 1357円 2124円
65万円 65万円 65万円 1495円 2340円
83万円 83万円 65万円 1909円 2340円
103万円 103万円 65万円 2369円 2340円
139万円 139万円 65万円 3197円 2340円
賞与は健保の『標準賞与額』に料率をかける
賞与はそのまま健康保険の『標準賞与額』に料率をかければ算出できる。
『標準賞与額』って覚えてますか?健康保険の場合ルールは
① 賞与を1000円単位に切捨てる。
② 年度の累計で573万円が上限
だけだ。
たとえば賞与が222万2222円で上記②のルールに触れない場合、標準賞与額は222万2000円になるので、子ども・子育て支援金は
222万2000円 × 0.23% ≒ 5111円 (納付額)
5111円 ÷ 2 ≒ 2556円 (事業主)
5111円 ー 2556円 = 2555円 (被保険者)
となる。
導入は2026年4月分から
『子ども・子育て支援金』の導入は2026年『4月分』からだ。他の保険料の変更は『3月分』からなので、1ヶ月遅れということになる。