₂₂₇.企業が知っておきたい『子の看護等休暇』



 『子の看護休暇』については2025年4月から名称が『子の看護休暇』と変わり、対象期間等にも変更があった。今回の改正点も含め、企業が知っておくべき点をまとめた。もちろん、子を育てる従業員の方にも参考になると思う。
 

・ 子の看護等休暇とは

 
 子育てしながら働いている方なら、子の看護などで会社を休まなければならない場面もでてくる。『子の看護等休暇』とは、そうした場合に、『仕事と育児の両立』のため一定の要件・基準のもとに『労働の義務を免除』すなわち休暇を許可しようというものだ。
 

対象の子は、小学校3年修了まで

 
 2025年4月の改正で、対象となる子の年齢は『小学校就学前まで』から『小学校3年修了まで』に延びた。法律上は、
 

     9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子
 

ということになる。たとえば2016年4月2日生まれなら、2025年4月1日に9才に達するので、この日以後最初の3月31日である『2026年3月31日』まで対象になる。
 

入園(卒園)式・入学式等も可

 
 この休暇取得のために認められる理由は次の通り。
 

  ① 子の、病気・ケガ
  ② 子の、予防接種・健康診断
  ③ 子の、感染症に伴う学級閉鎖等
  ④ 子の、入園(卒園)式・入学式等
 

 ここで、①・②はもともとあった要件だったが、2025年4月から③・④が加えられた。これらは子の『看護』とはいえないので、子の看護『等』休暇に名前が変更されたものだ。
 

労使協定で除外できるのは週2日以下の方だけ

 
 労使協定を結ぶことで『子の看護等休暇』の対象外とし得るのは、『週の所定労働日数が2日以下』の方だけだ。

 以前は除外できた『入社6ヶ月未満の者』は、2025年4月以降は除外できない。

 ただし週3日以上でも、1日未満の休暇の取得が困難と認められる業務(厚労省の例示では、国際線の客室乗務員や流れ作業・交替制勤務等)の方については、労使協定により『時間単位の取得』については除外できる。
 

男女や、配偶者の就労を問わず取得可能

 
 まさか今どき《取得できるのは母親だけ》とか思っている方はいないと思うが、子の看護等休暇を取得できるのは、前項の例外に該当する場合を除き、
 

     小学校3年修了までの子を養育するすべての労働者

 
だ。ただしここでの『子』は、法律上の親子関係にある『子』に限る。『孫育て休暇』も、各自治体や企業では導入例もあるが、『子の看護等休暇』の対象にはならない。
 

・ 母親が専業主婦でも可

 
 配偶者が専業主婦(夫)か就業者かも問われない。母親が専業主婦だとしても、上の取得理由の範疇であれば、父親は『子の看護等休暇』を取得できる。
 

対象児童が1人なら年5日・2人以上なら年10日

 
 休暇の付与日数は、『子の看護等休暇』対象となる小学校3年修了までの子が1人なら年5日・2人以上なら年10日になる。3人以上いても15日・20日…とこれ以上増えることはない。

 つまり、『子ども1人あたり5日』と規定されているわけではないのだ。
 

・ 1人の子に10日使うこともある

 
 当然、兄弟でも頑丈だったり病弱だったりすることはあるので、たとえば2人の対象児童のうち、兄が病弱でしょっちゅう病院にかかるが妹は健康そのもの…ということもあるだろう。その場合は『兄の通院』だけで子の看護等休暇を10日使うことも認められる。

 当然ながら、この例でいうと『兄』が小学4年生になったら、兄の通院のためにこの休暇を使うことはできない。
 

・ 生まれたら対象児童

 
 『年』の区切りについては次項で述べるが、年の途中で第2子が誕生することもある。

 子の看護等休暇の対象は『小学校3年修了まで』だ。『いつから』とは書かれていない。従ってこの世に現れた『誕生直後から』ということになる。

 企業経営者ならご承知かもしれないが、出産後8週間は本人の産休申請の有無に関わらず労働禁止だ。中でも出産後6週間は、本人が希望し、医師の許可があっても絶対にダメだ。さらに8週を過ぎても育児休業を取っている場合が多いだろう。

 それでも第2子が誕生した以上『対象児童』なので、その瞬間から付与日数は10日になる。

 『子の看護等休暇』というと、育児休業が終わるまでは無関係と思いがちだが、『付与日数』のカウントではこういうことになるので、注意が必要だ。
 

『年』の区切りは『年度』にした方が…

 
 この『年に5日・10日』というときの『年』の区切りに条件はないので会社の規定に委ねられる。『1月1日から12月31日まで』でもいいし、会社の給与の〆日に合わせて『4月21日から翌年4月20日まで』でもいい。

 ただし、育児介護休業法上の『子の看護等休暇』の対象児童の要件は『9才に達する日以後の最初の3月31日までの子』なので、たとえば区切りを『暦年』単位にすると、最終年の1~3月の分が半端になる。

 そうすると子が1人の場合なら、この3ヶ月で5日分を付与しなければならなくなる。こうした事務の煩雑さを考えると、よほどの事情がない限り、
 

     『子の看護等休暇の1年の区切りは年度単位とする』
 

としておいた方が運用はスムーズだろう。
 

有給・無給も会社の判断

 
 この『子の看護等休暇』、給与を支給するかどうかは会社の規定次第だ。『有給にせよ』という法令はない。無給のところが多いようだが、その場合はたいていの会社の『生理休暇』同様、『申出があれば、労働の義務は免除する』という性格のものになるだろう。

 ただ、産休・育休明けの場合で考えても、年次有給休暇の付与に関しては、産休・育休期間は『100%出勤』とカウントされるので、まず出勤率が80%未満ということはなく、普通に年休も付与されているはずだ。

 年休残日数に余裕があるのなら、従業員によっては《子の看護等休暇の要件は満たしているが、小学校の入学式は年休にしよう》等と判断する場合もあるだろう。これはもちろん全くの自由だ。
 

申出は当日でも可

 
子の看護等休暇は、病気やケガ等の世話を考えれば『当日の申出』もやむを得ない。年次有給休暇のように『○日前までに申出』とは規定できない

 また申請書類や、休暇申出の根拠が分かる証明書類の提出を求めることはできるが、これと同じ趣旨で、休暇取得後の提出も可能となっていなければならない。

 証明書類としては、医師の診断書・医療機関の領収書・保育所や学校を欠席したことが分かる連絡帳の写し(病気・ケガの場合)が挙げられる。

 

 

 

2025年04月22日