失業手当の日額は分かったとして、次の問題はこれが何日分支給されるかだ。
説明する前に知っておいてほしいのは、前にも書いたが、失業手当が支給されるためには『労働の意思と能力』があることが前提ということだ。働く気がない人や働ける可能性がない人には、受給資格に関わらず、失業手当は1円も支給されない。
ここで普通なら一般の離職者から説明するところだが、説明の便宜上、給付が一時金となる方からとする。
季節雇用は40日分
季節雇用の場合は、離職日の年齢に関わらず一律40日分の一時金になる。
ただし、そのもとになる給付の日額は年齢に『関わる』ので、60~64才の方は、かなり給与が高かった方を除いてそれ以外の年齢の方より少なくなるのが普通だ。賃金日額(ザックリ言って月収の30分の1)と給付額の例を示すと次のようになる。
賃金日額(月収目安) 一時金の額
59才以下・65才以上 60~64才
4,000円(12万円) 12万8000円 12万8000円
6,000円(18万円) 18万4400円 18万1320円
8,000円(24万円) 22万0600円 19万9840円
10,000円(30万円) 24万4120円 20万3840円
12,000円(36万円) 25万5000円 21万6000円
14,000円(42万円) 28万0000円 25万2000円
~29才・65才~ 60~44才 45~59才 60~64才
16,000円(48万円)28万2600円 31万3800円 32万0000円 28万8000円
18,000円(54万円)28万2600円 31万3800円 34万5400円 29万6800円
一般の65才以上は30日分か50日分
季節雇用以外で離職日65才以上の方は『高年齢求職者』という扱いになり、これも失業手当は一時金になる。この一時金は勤務期間(正しくは算定基礎期間)によって変わる。
ただ、普通に1年以上勤めていた場合は50日分だが、1年未満の場合は30日分というだけで、それ以上の分け方はない。勤務期間が30年でも40年でも一律『1年以上』というくくりで50日分になる。
一般の自己都合は、勤務期間により90~150日
一般の方(季節雇用以外の64才以下)の失業手当(正しくは『基本手当』)は一時金ではなく、基本28日ごとにその間の日々失業していたかどうかを確認して支給されるので、『○日分』ではなく『○日』とする。
・ 『正当な理由のある自己都合』でも同じ
『正当な理由のある自己都合』の場合、被保険者期間の要件は6ヶ月に短縮され、給付制限期間(待期期間終了後、失業給付が支給されない期間)もなくなるが、給付日数については優遇はなく、普通の自己都合と同様だ。
・ 勤務期間10年・20年で増加
こうしたごく一般的な離職の場合、失業手当の給付日数は次のようになる。
勤務期間 10年未満 10年以上 20年以上
給付日数 90日 120日 150日
倒産・解雇等なら、勤務期間と年齢により90~330日
『倒産・解雇等離職』の場合は、離職時の年齢と勤務年数により給付日数は次のようになる。
上に書いたように『正当な理由のある自己都合』は含まないが、『希望に反して契約更新がなかった』ことによる離職の場合は、2027年3月31日までに限ってこの『倒産・解雇等』と同じ扱いをすることになっている。
勤務期間
離職時年齢 1年未満 5年未満 10年未満 20年未満 20年以上
~29才 90日 90日 120日 180日
30~34才 90日 120日 180日 210日 240日
35~44才 90日 150日 180日 240日 270日
45~59才 90日 180日 240日 270日 330日
60~64才 90日 150日 180日 210日 240日
倒産・解雇等の場合は青天の霹靂(へきれき)というか、心の準備も経済的な準備もままならないことが多いので、給付日数も優遇される。
就職困難な方は150~360日
厚生労働省令で定める理由により就職困難な方が失業した場合は、離職時年齢と勤務期間により、給付日数は次のようになる。
勤務期間
離職時年齢 1年未満 1年以上
~44才 150日 300日
45~64才 150日 360日
・ 厚生労働省令で定める理由とは
ここで『厚生労働省令で定める理由』とは、次の理由をいう
○ 障害者雇用促進法に規定する身体障害・知的障害・精神障害がある
○ 保護観察中や更生緊急保護の対象者で、保護観察所長から連絡があった
○ 民族等の社会的事情で就職が著しく阻害されている
これらの方については、実態として就職に困難が伴うとみなされ、給付日数が優遇される。
『勤務期間』から除かれる期間
このように、失業手当の給付日数は『離職時の年齢』と『勤務期間』で決定されるが、勤務期間(算定基礎期間)から除かれる期間もある。次の期間だ。
① 育児休業給付を受給していた期間
② 離職した事業所に就職するまで1年以上間隔が空いている場合のその前の期間
③ ②で間隔が1年未満でも、その前の離職で失業手当を受給していた場合
④ 用保険加入の確認があった日の2年前より前の期間(特例あり)
①は雇用保険から『給付を受けていた』という趣旨で除外するので、育児休業を2年半取り、そのうち10ヶ月育児休業給付金を受給していたのであれば、『算定基礎期間』から除かれるのは10ヶ月だけだ。
②・③は、複数の勤務期間を通算できない場合の規定だ。逆に言うと、
・ 今回の離職前にも勤務していた事業所があり、
・ その間隔が1年未満で、
・ 前の離職時に、季節雇用の一時金も一般の基本手当も一切受けていない
場合は、その『前の勤務期間』も算定基礎期間に含まれる。
④は、たまに聞くのが、事業所が雇用保険の資格取得手続を忘れていた…などでさかのぼって加入した場合の規定で、2年以上さかのぼれる場合もあり、受給の資格自体にも関係するので、どこかで述べる。
※ 訂正
倒産・解雇等なら、勤務期間と年齢により90~330日
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