請求があった場合に育児休業が義務化されているのは子が1才に達するまでだが、様々な事情でこれを延長できる場合がある。次の2つだ。
○ 両親ともに育児休業を取得する場合(パパママ育休プラス)
○ 保育所に空きがなく待機している場合
・ 育児休業給付金にもリンク
よく知られているというよりこちらの方が有名だが、こうした育児休業期間の延長は『育児休業給付金』の支給期間ともなる(正確には『₂₂₁.育児休業と、給付金の支給要件は違う』で書いた理由により1日ずれるが)。
パパママ育休プラス
『パパママ育休プラス』は、両親ともに育児休業を取得する場合、一定の要件を満たせば、子の1才2ヶ月到達日まで育児休業を認めるものだ。
ただし、父親・母親それぞれの育児休業期間は最大1年間(母親は、産前産後休暇を含めて)となっている。
『パパママ育休プラス』の要件は比較的簡単で、次の3つを満たせばよい。
・ パパママ育休プラスの要件
① 配偶者が、子の1才の誕生日前に育児休業をしている。
② 本人の育児休業開始予定日が、子の1才の誕生日以前である。
③ 本人の育児休業開始予定日が、配偶者の育児休業の初日以降である。
パパママ育休プラスには色々誤解もあって、両親の『育児休業期間』が重なるか、少なくとも間隔を空けずに配偶者が取らなければならないと思っている方もいるが、そういう要件はない。
・ 母親ー父親の育児休業に間隔があってもOK
たとえば、母親が産休明けに育児休業を3ヶ月取り、その後0歳児保育や親族の応援を得て職場に復帰した場合でも、子の1才の誕生日以前(当日も含む)からであれば、子の1才2ヶ月到達日までは、父親が育児休業を取ることができる。
上の要件の『配偶者』に母親・『本人』に父親を当てはめれば、①~③のすべての要件に合致していることが分かると思う。
・ 母親産休時の、父親の育休がものをいう場合
普通に母親だけが産前産後休業後、子を実家に預けるなどして、その後に育児休業を取った場合、原則通り育児休業は子の1才の誕生日前日で終了となる。
ここで、父親が、母親の産後休業時、育児休業を取った実績があれば話は別だ。
その場合は、上記の要件にそれぞれ照らすと(母親から見て)、
① 配偶者(父親)が子の1才の誕生日前に育児休業を取っているのでクリア
② 本人(母親)の育児休業開始が、子の1才誕生日以前なのでクリア
③ 本人(母親)の育児休業開始が、配偶者(父親)の育児休業の初日以降なのでクリア
ということで、この母親は、産後休業を含めて通算1年に達するまでは、子が1才2ヶ月に到達する日を限度として育児休業を続けることができる。
保育所待機の場合は1才6ヶ月・2才到達まで延長可能
育児休業明けで子を養育してくれる親族等がいない場合、保育所入所を希望するのが一般的だ。ただ、保育所に空きがない場合は1才6ヶ月まで、それでもダメなときは2才まで育児休業を延長できる。
これについて『育児休業延長の要件が2025年4月から厳しくなった』という誤解があるが、育児休業の要件を決める『育児介護休業法』に変更はない。
厳しくなったのは『育児休業給付金』の支給の延長要件だ。ただしこれも育児休業給付金の趣旨からすれば当たり前のものばかりなので、それほど気にする必要はない。
・ 入所意思がないのはダメだよね
厚労省のパンフレットによれば支給要件見直しの原因は、内閣府の有識者会議の『令和5年度の地方分権改革に関する提案募集』で自治体から
○ 保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応
○ 意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応
に時間が割かれる … として見直しの要望があったこととなっている。
これが本当なら、想定外の一部不心得者への対応に業を煮やした自治体の要望に沿った当然の対応といえるが、そうした状況を直接筆者が確認したわけではない。
いずれにしても2025年4月1日から改訂された『育児休業給付金の延長』の要件について書いていくが、この要件をクリアしていれば当然『育児休業の延長』の要件もクリアしている。
・ 育児休業給付金延長の要件
基本的には、
① 延長申出に係る子の1才到達日*¹に、本人か配偶者が育児休業している方が、
② 子の1才到達日*¹(誕生日の前日)までに保育所等*²の利用の申込み*³を行い、
③ 1才到達日*¹の翌日(誕生日)時点で、保育所等利用可能の見込みがない*⁴
場合に、1才6ヶ月到達前日まで育児休業給付金支給の延長が認められる。
*¹ パパママ育休プラス適用者は、育児休業終了日(最大1才2ヶ月到達日)
*² 認可保育所・認定こども園。無認可施設は不可。
また申込み先が、合理的理由なく自宅から片道30分以上の施設のみの場合は不可
ここで合理的理由がある場合とは、以下の場合。
a. その保育所等が、本人か配偶者の通勤経路の途中にある
b. 自宅から30分未満で通える保育所等がない
c. 30分未満で通える保育所等すべてが、職場復帰後の勤務時間や勤務日に対応できない
d. 子の疾病・障害等により特別な配慮を要し、30分未満の保育所等はすべて対応不可
e. ○ 兄弟が在籍する保育所等の利用を希望する
○ 30分未満の保育所等がすべて3年以内に児童虐待等で自治体から指導を受けている
また、保育所申込みにあたり、『入所を希望していない』・『速やかに職場復帰する意思がない』・『選考結果に関わらず育児休業の延長を希望する』等を申込書に記載するなど『保育所等への入所の意思や速やかな職場復帰の意思がないことが明白な場合は要件を満たしません』と、厚労省のパンフレットにわざわざ示されている。これも言わずもがなだろう。
*³ 入所希望日は、1才の誕生日以前となっていることが条件
*⁴ 『入所保留通知書』等の日付が生後10ヶ月(入所希望が4月の場合のみ9ヶ月)到達後であることが原則。その前の通知書しかなく、入所保留中に新たな通知書が発行されない場合は、その通知書の保留の有効期間内に1才の誕生日が含まれていなければならない。
※ 2才までの延長については、『1才』を『1才6ヶ月』、『1才6ヶ月』を『2才』と読み替える
ことになっている。
非常にこまごましているので、読んでいる方が頭がクラクラして体調を崩してはマズいのでザックリまとめると、
原則の(1才までの)育児休業の期間内に保育所に申込み、
入れなかったときだけ、育児休業給付金の延長を認める。
ということだ。
・ つながっていないとダメ
ただし『延長』というからには『原則』分と『延長』分がつながっていなければならない。『断続』では延長にならないのでダメだ。
だから『原則』の最終日(1才到達日)までは必ず育児休業していて、結果的に育児休業『延長』初日になるかもしれない日(1才到達日の翌日=誕生日)は必ず保育申込みの対象になっていなければならない。
・ 保育所の休日には無関係
これは保育所の休日には関係ないので、たとえば1月2日生まれなら、翌年1月2日を対象に含んで申し込んでおかないと、保育所に空きがなくても育児休業『延長』の対象にはならない。
普通は保育所が開くのは1月4日以降なので、『1月4日からお願いします』と申込んでおけばよく、その希望がかなえば何の問題もない。
しかし、《入所がムリなときは育児休業(給付金)を延長してもらおう》と考えているのなら、申込みの段階から『1月2日(以前)からの入所』を希望しておくべきだろう。
・ 保育所入所の申込みができない場合の例外
下記の理由で保育所の入所の申込みそのものができない場合は、『➡』の対応で、例外的に延長が認められることがある。
① 子が病気や障害により特別な配慮を要し、
保育体制が整備されていない等の理由で市区町村が入所の申込みを受付けない
➡ 申込みできなかった申告書・障害者手帳・医師の診断書等の添付
② その市区町村で子の1才誕生月の募集がなく、入所の申込みが受付けられない
➡ 1才2ヶ月到達日の翌日までを『入所希望日』として申込みする
・ 保育所待機だけではない
保育所待機以外にも、育児休業(給付金)の延長が認められる場合があるので、これについては追って説明する。