₂₁₄.再就職手当にはムダが少ない



 前回紹介した『再就職手当』は、安定した職業への一定の再就職の際、給付基礎日額の『未使用分』の6~7割を給付されるものだった。

 要は、再就職先で給与をもらいつつ、前職の離職による『失業手当』を受給し損ねた分の6~7割ももらえることになるのでラッキーと思う方が多いはずだ。

 ただ人によっては《6~7割ということは、残りの4~3割は消えてしまったことになる。もったいなかったな…》と思う方がいるかもしれない。

 だが心配はいらない。再就職手当は1度もらったらそれっきり…ということはなく、再就職手当をもらった方が一定の状態になると、未練が残るもらい損ねた部分の全部または一部が支給される。ムダなく利用できるようになっているのだ。
 

前職より給与が下がれば6ヶ月後に差額支給

 
 再就職手当を支給された方が、その再就職により給与が下がった場合は、最大その差額6ヶ月分が支給される。『就業促進定着手当』といういかめしい名前が付いている。

 具体的には次のようになるが、ここは正確な金額を算出するのが趣旨ではないので、概算になるのはお断りしておく。
 

・ 月給30万円 ➡ 27万円なら

 
 40才の西周さんは、15年務めた会社を自己都合で辞めた。最後の6ヶ月間は月給30万円だった。西周さんは失業手当を20日分もらったところで別会社に再就職。そこでの月給は27万円だった。

 この場合、
 

・ 失業手当は

  ○ 賃金日額    180万円  ÷  180日  =    10,000円
  ○ 所定給付日数  10年以上20年未満の自己都合       120日
  ○ 基本手当(失業手当)日額(年齢と賃金による…)     6,103円
  ○ 失業手当    6,103円/日  ×  20日  =  12万2060円
 

・ 再就職手当は

  ○ 支給残日数    120日  ー  20日  =      100日
  ○ 再就職手当  6,103円/日 × 0.7 × 100日 = 42万7210円
 

・ 『就業促進定着手当』は

  ○ 再就職後の賃金日額   162万円  ÷  80日  ≒    9,000円
  ○ 手当の金額      (1万円 ー 9,000円)× 180日 = 18万円
 

 ただし、ここでこの金額は前項でいう『残りの3割』(失業手当の『支給残日数』分で、再就職手当でも回収しきれなかった分)を超えることはないので、一応この金額を計算すると、この方の再就職手当は失業手当の7掛け(7割)だったので残りは3割。
 

 ○ 就業促進定着手当の上限 6,103円 × 100日 × 0.3 = 18万3090円
 

で、この場合は上限ギリギリに収まっている。従って18万円を満額受取ることができる。

 言い換えると、再就職後の給与がさらに下がったとしてもこの場合は限度額が18万3090円なので、これ以上受取ることはできない。というよりは、当初の『所定給付日数』をすべてもらい切ったことになる。

 ザックリ言うと、当初の『所定給付日数』分の失業手当が総額73万2360円(6,103円×120日分)で、失業手当が12万2030円、再就職手当で42万7210円もらったので、残りは
 

73万2360円 ー 12万2060円 ー 42万7210円 = 18万3090円

 
となる。給与が下がった場合は(最大)18万3090円が6ヶ月後に充当されるということだ。

 この支給の申請は、再就職後6ヶ月となった翌日以降2ヶ月以内に行なうことになっている。
 

・ 2025年4月以降の再就職なら最大2割に減額

 
 ただしこの『就業促進定着手当』、再就職が25年の4月以降の場合は一律最大『支給残日数分の2割』に減額される。離職日基準ではないので、現在失業中の方は間に合うなら3月中に再就職した方が有利だ。

 25年4月以降の再就職でも再就職手当は変わらないが、6ヶ月後の『就業促進定着手当』の上限は上の場合だと12万2060円になる。

 実はこのページのタイトルも、『…ムダがない』とする予定だったが、『少ない』に「変更せざるを得なかった。
 

再離職でも倒産解雇等なら『続き』を受給できる場合あり

 
 上の話は給与が下がったことを除けばどちらかというとメデタシメデタシだったが、いつもこううまくいくとは限らない。

 いくら『1年を超える雇用が確実な、安定した職業に就いた』としても、人生、先のことは分からない。せっかく終身雇用で就職した会社が倒産することもあるし、解雇されることもあり得る。

 こうした場合、再就職手当をもらっていても、一定の要件を満たした再離職であれば、当初の離職での失業手当の『続き』を受給できる。名前を覚える必要はないが『特定就業促進手当』という。
 

・ 特定就業促進手当の要件

 
 ① 再就職手当をもらった後、
 ② 当初の離職による受給期限内に
 ③ 倒産・解雇等により離職し、
 ④ 新たな受給資格が発生しない
 

場合だ。

 前項の西周さんの場合なら、所定給付日数120日のうち、最初の失業時の失業手当で20日分、再就職手当で70日分(残日数100日分×0.7)もらっているので、あと30日分は失業手当としてもらえる可能性がある。

 この要件を見てもらえばわかる通り、その再離職が自己都合による場合は対象外だが、これはやむを得ない。

 また、『倒産・解雇等』なら普通6ヶ月で新たな受給資格が発生(④)し、それによる失業手当が受けられるので、その場合もこの制度の対象からは外れる。

 なお、こうして再離職後に失業手当の『続き』をもらうケースで、
 

再離職から受給期限までの日数』が『失業手当の続きの日数+14日』より短い
 

場合は、はみ出した日数分、受給期限が延びることになっている。

 たとえば西周さんの再離職が3月10日で、当初の受給期限が3月31日の場合は、
 

     30日  +   14日 ー    21日    =   23日
(失業手当の続きの日数)    (再離職から受給期限まで) 

なので、受給期限は23日延びて4月23日までになる。

 

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※ タイトル訂正
再就職でも失業手当の『続き』を受給できる場合あり
 ➡ 再離職でも倒産解雇等なら『続き』を受給できる場合あり  '25.03.07

 

 

2025年02月28日