前回書いたように、失業手当の1日当たりの金額は『賃金日額』の45~80%だ。賃金日額が高い人ほどこの給付率は低くなる。
一般の方の給付の日額は『基本手当日額』というが、季節雇用や離職時65才以上の『高年齢』の方の失業手当の日額も、『基本手当日額』の計算式をそのまま流用することになっているので、同様に考えてよい。
ただし『一般』の失業者には離職時65才以上の方はいないので、季節雇用でもそれ以外でも65才以上の場合の『賃金日額』の最高限度額や失業手当の日額を求める式は、29才以下の方と同様とすることになっている。
賃金日額の80%・50%(45%)になる場合
失業手当の日額が賃金日額の80%、または50%(年齢によっては45%)となる場合は比較的分かりやすい。
・ 月収15万円以下なら80%
賃金日額が5200円未満の場合は、どの年齢の方もその80%が保証される。月収にすると15万6000円程度以下の場合だ。
・ 月収38万円以上なら50%(60~64才除く)
賃金日額1万2790円以上の場合は、60~64才の方を除いて50%になる。同様に月収換算すると38万3700円程度以上だ。これ以上の高給だった方は、働いていた時の半分で我慢しなければならない。
・ 60~64才なら月収34万円以上で45%
60~64才の場合は『賃金日額』1万1490円(月収換算34万4700円)以上になると45%固定だ。
失業手当は最高でも1日8,635円
さらに前回紹介したように『賃金日額』の最高限度額は年齢層によって決まっているので、それぞれの年齢層の最高限度を超える方は、支給金額についてもそれぞれの50%(60~64才は45%)で打ち止めになる。
最高限度額が最も高い45~59才でいくら高額な給与をもらっていたとしても『賃金日額』は1万7270円が限度。その50%なので、失業手当の日額は8635円だ。
60~64才なら賃金日額の限度は1万6490円なので、失業手当の日額はその45%で7420円になる。
離職時年齢 賃金日額の限度 失業手当の日額限度
~29才 1万4130円 7,065円
30~44才 1万5690円 7,845円
45~59才 1万7270円 8,635円
60~64才 1万6490円 7,420円
65才~ 1万4130円 7,065円
月収15~38万円は、計算が複雑
賃金日額が5,200円から1万2790円(60~64才は1万1490円)までの方(月収15~38万円程度。60~64才は15~34万円程度)の場合は、厚労省のパンフレットでも毎年微妙に変わった形で公表されているが、現在は次の式で計算する。『W』を賃金日額として、
・60~64才以外は 0.8W ー 0.3{(Wー5200)/ 7590}W
・60~64才は ① 0.8W ー 0.35{(Wー5200)/ 6290}W
② 0.05W + 4596
①・②のいずれか低い方
となっている。
この数式をパッと見て大体の傾向が分かる方は数学が達者な人でもそういないと思うのでグラフにしてみた。どちらも展開するとW²の項が現れるので部分的に2次曲線になる。

見ての通り、基本の曲線は60~64才の黄色い線と、それ以外の年齢の場合の2種類しかなく、それぞれの年齢の上限で線が水平になるだけだ。(厳密にいうとこの水平部分は『賃金日額』ではないのですが、ここをカットすると分かりづらいので…)
賃金日額5,200円までは年齢による違いはなく、すべてその80%だ。
5,200円を超すと60~64才は他の年齢より少し給付の日額が下がるが、7,200円あたりまではその差はごく小さい。
しかし7,200円を超すと60~64才は賃金日額20円につき1円しか給付額が上がらないのでその差は広がり続け、賃金日額1万1490円のところで最大の1,164円に達する。
これ以上の高収入域になると60~64才も賃金日額の45%に固定化されるので、徐々に差は縮まる。それ以外の方もいったん伸びが鈍化した後、1万2790円超で50%固定になる。
さらに賃金日額が上昇すると、それぞれの賃金日額の限度額に達したところで給付額は上限に達する。
60~64才の離職は不利?
ということで、離職時60~64才の方の失業手当の日額が他のどの年齢の方よりも低いのは賃金日額が5,200円から1万5700円までの場合だ。
季節雇用の場合なら年齢による給付日数に違いはないので、作業終了と60才や65才に達する日(誕生日の前日)が近く希望がかなう状況なら、60~64才での離職は外した方がいいかもしれない(超高給の方を除く)。
・ 給付日数も離職時の年齢による
一般の離職者の場合は、このあと触れる予定の給付日数とのからみも出てくるので、一口にはどちらがいいとは言い難い。
もう1つ、この辺の年齢は『定年』年齢とからんでくることも多いが、『定年』の年齢は法律上最低でも『60才以上』なので(一部特殊な業務除く)、59才のうちに『定年退職』することはできない。
そうなると離職理由も違ってくるので、給付日数や制限期間等も変わってくる。手当の日額だけで比べられるものではないので、拙速な判断は禁物だ。