₂₂₃.妊産婦の労働制限と保護規定


 妊産婦の労働については母性保護等の観点から、労働基準法や男女雇用機会均等法等によって様々な規定がある。

 まず、妊産婦とは次の方をいう。
 

  ○ 妊娠中の女性(妊婦)
  ○ 産後1年を経過しない女性(産婦)
 

 ここで『妊婦』については説明の必要はないが、『産婦』についてはこのように『産後1年を経過しない女性』と規定されている。

 経過日数の計算に関しては特に断り書きがない限り『翌日起算』ということになっているので、たとえば5月1日に出産した場合、5月2から起算して1年後、翌年の5月1日で1年を経過する。その前日の4月30日まで『産婦』ということになる。

 つまり、子の1才の誕生日の前日(1才到達日)までだ。

 ちなみに『出産日』は『産前』に含めて計算するので、産後の経過期間を翌日から起算するというのはそのこととも整合が取れている。

 ただし、年子などで、産後1年経過前に次の子を妊娠した場合は産婦であると同時に妊婦でもあるので、それぞれの法律で扱いが違う場合には、両方の基準をクリアする必要がある。

 ということで、妊産婦の労働等に対する労働法上の規制を見ていこう。
 

軽易な業務への転換

 
 妊婦についてのみ、その女性が請求した場合には他の軽易な業務に転換させなければならない。

 ただしこれについては、現在その女性が従事している業務よりさらに軽易な業務がない場合には、これを創設するまでの義務はないことになっている。(労基法65条3項)
 

医師等の指導事項を守るための措置

 
 医師等の指導によって妊産婦から請求があった場合は、以下の措置を講じなければならない。
 

・ 妊娠中の女性

 
   ① 通勤の緩和

      ア. 時差出勤
      イ. 勤務時間の短縮(30分~1時間程度)
      ウ. 混雑の少ない経路への変更

 交通機関の混雑による苦痛は、つわりの悪化や流産・早産につながる恐れがあることからこのような措置が規定されているもので、その1つとしてイ.『勤務時間の短縮』が入っている。妊産婦全体が対象の後述する『勤務時間の短縮』とは別の趣旨だ。
 

   ② 休憩に関する措置

      ア. 休憩時間の延長
      イ. 休憩回数の増加
      ウ. 休憩時間帯の変更
      エ. 休養室の設営

 
・ 妊産婦全体

 
   ① 勤務時間の短縮(1~2時間程度)

   ② 身体的負担・ストレス・緊張の大きい作業の制限
 

時間外労働・休日労働・変形労働・深夜労働の制限

 
 妊産婦が請求した場合には、次の労働は禁止される。
 

・ 時間外・休日労働

   ① 災害等の臨時の必要がある場合

   ② 公務のため臨時の必要がある場合

   ③ 36協定による場合
 

 これらの場合は、時間外・休日労働が認められているが、妊産婦請求した場合は認められない。ただし、その女性が『管理監督者』(53.『管理職=管理監督者』ではない)の場合は認められる。
 

・ 変形労働(フレックス除く)

 
   ① 1ヶ月単位の変形労働時間制

   ② 1年単位の変形労働時間制

   ③ 1週間単位の非定型的変形労働時間制


は、それぞれ法の規定に従って就業規則や労使協定があれば認められるが、妊産婦請求した場合には認められないので、これらの規定によって1日・1週間の基本的な法定労働時間を超えて労働させることはできない。

 ただし、これも『管理監督者』には適用されない。
 

   ◎ フレックスタイムは可

 
 変形労働の一種『フレックスタイム』は規制されていない
 体調によって勤務時間が自由になるのはかえって都合がいいという判断による。

 ただし、その妊産婦が年少者(18才未満)の場合は、年少者にはその発達段階を考慮して元々フレックスタイム制は適用できないことになっているので(81.年少者(未成年者)の労働制限)、変形労働は一切不可ということになる。
 

・ 深夜労働

 
 深夜労働(22時から5時までの労働)については、管理監督者も含めて、請求された場合は一切禁止される。(労基法66条)
 

健診等の時間の確保

 
 妊産婦には、保健指導・健康診査を受けるための通院時間等を確保しなければならない。その回数は最低次のように規定されている。
 

           通常      医師の指示がある場合

 妊娠23週まで   4週間に1回      その回数
  ”  35週まで   2週間に1回        ”
  ”   出産まで   1週間に1回        ”
出産後1年以内                  ”      (均等法12条など)


 通常、出産予定日は妊娠39週の7日目(280日目)となるようなので、34週以降は産前休業に入っていることが多い。その場合、34週以降はこの規定を使うことはない。

 しかし産前休業は申出によることになっているので、出社していることもあり得る。そこで36週以降出産までの健診等についても法律上規定されているわけだ。
 

育児時間の確保

 
 生後1年に達しない『子』を育てる女性は、1日2回、30分ずつ育児のための時間として請求できる。

 同じことをくどくど書いても嫌がられるので詳しくは《26.法定の有給休暇は『年次有給休暇』だけ》を参照してほしいが、ここでいう『子』とは、続柄としての(直系卑属1親等の)『子』ではなく『年端もいかない子』とかいうときの『子』だ。

 要は母親以外でも『0歳児を育てる女性』なら、年の離れた妹(弟でも可)を育てる姉でも叔母でも祖母でも他人でも全員該当する(男性はダメ)。

 従って『妊産婦の保護規定』に入れるのもどうかと思ったが、この規定はそもそも『授乳時間の確保』という要請から労働基準法の単独条文(労基法67条)に入ったという経緯があるのでここに入れてある。
 

妊産婦の労働制限・保護規定をまとめると

 
 これら妊産婦の労働制限・保護規定ををまとめると、次のようになる。育児休業については趣旨・目的・対象・要件が違うので入れていない。また、『前日』・『当日』など、細かい部分については正確でないところがある。
 

      妊娠中の女性          産後1年を経過しない女性

                 出産日                1才到達
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 業務軽減・通勤緩和・休憩増
 健診等の時間確保等   -6週      8週
              ┗━━━┻━━━━┛
                産前・産後休業
                   ……………━━━━━━━━━━━━━┛
                            育児時間
┗━━━━━━━━━━━━━…………     …━━━━━━━━━━━━━┛
        時間外労働・休日労働・変形労働・深夜労働の制限

 


 

2025年04月04日