失業手当(ここでは『基本手当』・『特例一時金』・『高年齢求職者給付金』の総称。以下同じ。)をもらうためには一定の勤務期間がなければならないことは広く知られている。
この勤務期間は失業手当の受給時には『被保険者期間○ヶ月』とカウントする。
いったん雇用保険の資格を取得した以上、離職や所定労働時間の減少などで資格を喪失するまでは、その方は雇用保険の『被保険者』であったことに間違いはない。ただこうした『被保険者だった期間』がすべて『被保険者期間』になるわけではないのだ。
そこで先に『被保険者期間』の話をする。
被保険者期間って何?
・ 季節雇用と一般・高年齢の違い
離職者の『被保険者期間』の計算は、一般・高年齢(離職時65才以上の季節雇用以外)の方と、季節雇用の方では異なる。
・ 季節雇用の場合は、歴月ごとに算定する
・ 一般・高年齢の場合は、離職日からさかのぼった1ヶ月ごとで算定する
という違いがある。
たとえば2月14日に離職した場合、季節雇用の場合は『2月・1月・12月・11月…』と歴月ごとに区切るが、一般や高年齢の場合は『1月15日~2月14日・12月15日~1月14日・11月15日~12月14日』のように離職日を基準にして区切る。
・ 区切った期間に『賃金支払基礎日数』が原則11日以上
こうして各々区切った期間内に『賃金支払基礎日数』というものが原則11日以上あるときに、その期間を『被保険者期間』とするわけだ。
ただし一般・高齢者で、その『区切った期間』そのものが丸1ヶ月に満たない場合は、その期間が15日以上で被保険者期間『2分の1ヶ月』、14日以内なら『0』とカウントする。
雇用保険の給付関係について説明しようとすると訳の分からない用語が次々出てきて閉口すると思うが、ここは我慢してお付き合い願いたい。
賃金支払基礎日数とは
『賃金支払基礎日数』とは、賃金支払いの基礎となった日数だ。これでは訳が分からないと思うので、時給・日給と月給に分けて考える。
時給・日給の場合は、その給与が支給された日数になる。たとえばその期間に20日出勤して2日年休を取ったのなら『賃金支払基礎日数』は22日だ。
ただし時給・日給でありつつも、『○○手当』として月々定額支給の手当がある場合もあるだろう。こうしたものは『賃金支払基礎日数』では考慮しない。
月給の場合なら、多くの場合はその区切った期間内の総日数になる。ただし、丸1日欠勤控除があった日についてはそこから引く(一般的な場合)。
・ 日をまたぐ場合は8時間超で『2日分』
時給・日給の場合に戻るが、深夜労働が日をまたぎ、かつ、労働時間が8時間を超える場合の賃金支払基礎日数は『2日分』とする。これについてはシフト制だろうが残業だろうが限定条件はない。
ただし、宿直の場合は1勤務で『1日分』となる。
・ 未払賃金も含む
倒産などの場合は未払賃金が発生することもある。こうした未払賃金がある場合でも、賃金支払基礎日数の算定の仕方は変わらない。
原則は、11日以上で『被保険者期間』だが
この『賃金支払基礎日数』がそれぞれ区切った期間内に11日以上あれば『被保険者期間』となるわけだが、そうでなくても例外的に『被保険者期間』となる場合もある。
・ 10日以下でも80時間以上なら可
賃金支払基礎日数が10日以下であっても、区切った期間内の『賃金支払いの基礎となった時間数』が80時間以上であれば『被保険者期間』と認められる。これにはもちろん年休分として支給された給与の時間数分も含まれる。
つまり8時間勤務で10日働けば普通に80時間になるのでその時点で『被保険者期間』だし、残業がある場合には9日以下でも可能性はある。
こうした『被保険者期間』が所定の期間内に何ヶ月あるかで、失業手当の受給資格の有無が決まってくる。
季節雇用・65才以上は1年以内に6ヶ月あれば可
季節雇用や65才以上の方なら、この『被保険者期間』が離職以前1年間に6ヶ月以上あれば、『受給資格あり』として失業手当がもらえる。
ここで65才になりたての方を考える。
64才8ヶ月で、ある会社に勤めた方の場合、この方が7ヶ月後に《やっぱりこの仕事は合わないわ》とか要は自己都合で辞めることにした。この方は離職時点では65才になっている。
この方は入社時は65才未満なので『一般』(の被保険者)として入社したはずだ。この場合でも、入社4ヶ月後の65才到達日(誕生日の前日)に自動的に、誰も知らないうちに(一般の)『被保険者』から『高年齢被保険者』に切り替わっているのだ。
従って、離職時に『被保険者期間』が6ヶ月あれば『受給資格あり』ということになる。
一般の自己都合は、2年以内に12ヶ月必要
一般(季節雇用でない65才未満)の失業手当(基本手当)は、普通の自己都合の場合に受給資格を得るには、離職以前2年間に『被保険者期間』が12ヶ月以上必要になる。
倒産・解雇等や正当理由の自己都合なら6ヶ月で可
ここで次の場合には、一般の方でも離職以前1年間に『被保険者期間』が6ヶ月あれば受給資格が得られる。
・ 一般の離職者が6ヶ月で受給資格が得られる場合
○ 倒産・解雇等の場合
○ 希望に反して契約更新がなかったために離職した場合
○ 正当な理由のある自己都合による離職の場合
これらについては次回以降説明する。
複数の会社の分も通算
ここで対象になる被保険者期間『離職以前2年間に12ヶ月』(または1年間に6ヶ月)は、複数の会社に勤めたときの分も通算してよい。たとえば一般の場合で
2023.4.1 ~ 2023.12.31 2024.10.16 ~ 2025.2.15
A会社(被保険者期間9ヶ月) B会社(被保険者期間4ヶ月)
の場合は、離職日(2025年2月15日)以前2年間に被保険者期間が13ヶ月あるので、一般の自己都合でも受給資格が得られる。
・ 1回受給資格を得た場合はダメ
ただし上記の場合でも、A会社離職時にいったん求職の申込みをして『受給資格』を得ていた場合は、A会社での『被保険者期間』は通算できない。たとえ失業手当等を1円も受給していなくてもだ。
ちなみにA会社(9ヶ月)でも受給資格が得られるのは、次のような場合が考えられる。
○ A会社での勤務が季節雇用だった
○ A会社の離職が倒産・解雇等や正当な理由での自己都合だった
○ A会社のさらに前の会社の分と合わせて2年以内に12ヶ月を確保できていた。
※ 加筆
『複数の会社の分も通算』を加筆しました。 '25.01.31
※ 追加
・ 区切った期間に『賃金支払基礎日数』が原則11日以上
3~4行目を追加 '25.03.07