₂₃₀.育休中のアルバイトは支給日に注意



育児休業給付金の支給額


 ザックリいうと、育児休業給付金の支給額は最初の6ヶ月は働いていたときの67%・その後は50%になる。細かくいうと次の通りだ。
 

『休業開始時賃金日額』を決める

 
 育児休業給付金の日額は、離職したときの『基本手当』の算定と似ている部分もある。

 まず、育児休業に入った前日を『離職日』とみなして計算した賃金日額を『休業開始時賃金日額』とする。

 平たくいうと、育児休業突入直近の『普通に働いていた期間』の6ヶ月間の給与を180で割ったものが『休業開始時賃金日額』だ。産休に引き続いて育休を取った方なら産休前6ヶ月間の給与の180分の1になる。

 ただし、育児休業の『休業開始時賃金日額』にも最低・最高限度額があるので、給与から算定した金額がこの範囲に収まらない場合は、それぞれ最低ー最高限度額の範囲に修正される。

 現在('25年7月まで)の『休業開始時賃金日額』の最低・最高限度額は次のようになっている。
 

           日額     月額

○ 最低限度額     2869円    8万6070円
○ 最高限度額  1万5690円   47万0700円
 

 ちなみにこの最高限度額は、30~44才の方の失業手当(₂₀₉.賃金と失業手当は比例する?)の賃金日額の最高限度とその30日分だ。育児休業給付金に関しては、29才以下でも45才以上でもこの数字を使う。
 

最初の6ヶ月間は支給単位期間ごとに67%

 
 失業手当(正しくは基本手当)との違いは、失業手当の場合は28日ごとに1日1日について失業していた日について基本手当の日額が支給されるが、育児休業給付金は『支給単位期間』ごとに算定する。

 またわけの分からない言葉が出てきたが、これは大したことはない。『支給単位期間』とは、育児休業に突入した日から1ヶ月ごとに区切った期間だ。ただし、最終期間だけは普通ハンパになるのでその日数になる。

 ここで、最終期間を除くと『1ヶ月は30日』とみなし、30日分ずつ支給される。『支給単位期間』が28日でも31日でも変わらない。通常は2ヶ月ごとの支給になるので、2ヶ月ごとに60日分ずつということだ。

 そして、6か月目までは休業開始時賃金日額の67%・7ヶ月目以降は50%が支給される。

 たとえば、月給30万円(休業開始時賃金日額1万円)の姫川さんが5月1日に出産し、産後休業を経て6月27日に育児休業を開始したとする。この場合、その後の支給額は、支給単位期間ごとに次のようになる。
 

   支給単位期間        支給日数  支給率   支給額

  1回目   6月27日~ 7月26日   30日分  67%  20万1000円
  2回目   7月27日~ 8月26日   30日分  67%  20万1000円
 3回目   8月27日~ 9月26日   30日分  67%  20万1000円
  4回目   9月27日~10月26日  30日分  67%  20万1000円
  5回目   10月27日~11月26日  30日分  67%  20万1000円
  6回目   11月27日~12月26日  30日分  67%  20万1000円
  7回目  12月27日~ 1月26日   30日分  50%  15万0000円
  8回目   1月27日~2月26日   30日分  50%  15万0000円
  9回目   2月27日~3月26日   30日分  50%  15万0000円
 10回目    3月27日~ 4月26日  30日分  50%  15万0000円
 11回目    4月27日~ 4月29日    3日分  50%  1万5000円
 

支給単位期間に『支払われた』賃金で減額も

 
・ 育休中のアルバイトは可能だが…

 
 育児休業期間中、勤め先から「この日だけ、ちょっと応援してもらえないか」と言われて何日か手伝ったという話は意外と多い。これに応じて多少働くのは両者の合意で可能だ。

 『ちょっと』や『何日か』や『多少』ではハッキリしないので数字でいうと、まず、絶対に超えてはならない一線がある。
 

・ 就業日数・時間が、1支給単位期間に10日又は80時間以内

 
 『就業日数・時間が、1支給単位期間に10日または80時間以内』というのは、育児休業給付金をもらうための要件の1つ(₂₂₁.育児休業と、給付金の支給要件は違う)だ。この基準を超すと、育児休業をしているとはいえないので、当然、全額不支給になる。
 

・ もとの給与の80%を超えた分はカット

 
 上の基準はあくまで給付金をもらえるための『要件』にすぎないので、実際にはこの水準よりずっと短い勤務でも給付金は減額になる。

 『もとの給与の80%を超えた分はカット』というものだ。正しくは
 

『給付金+賃金』が、『賃金日額×給付日数×80%』を超えた分はカット
 

ということになる。

 つまり育児休業を継続して取っている場合、給付金は6ヶ月目まで67%・7ヶ月目以降50%なので、アルバイトの賃金が賃金日額の6ヶ月目まで13%・7ヶ月目以降で30%を超えた分は給付金がカットされるということだ。

 上記の、もとの給与月額30万円の姫川さんなら、最初の6ヶ月間なら、賃金が3万9000円以上出ると合計24万円を超すのでその分減額される。

 月給30万円の方なら普通1日分で1万3000円を超すだろうから、3日フルで働いたら減額の可能性が高い。
 

給与の〆日と支給日に注意

 
 ここまでは《まあ、休業中なんだからそうだろうな》と思うかもしれないが1つ強調しておきたいのは、給付金の減額に関係する給与は、その支給単位期間のアルバイトで発生した給与ではなく、支給単位期間に『支払われた』給与だということだ。

 普通考えると、育児休業給付金が支給単位期間を基準に支給される以上、その間に働いた分の給与を基に減額するのがスジと個人的には思うが、そうではなく、その支給単位期間に『支給された』賃金が減額の根拠*になる。

* ただし、初回申請の最初の支給単位期間(普通は育休最初の1ヶ月)はその賃金が『育児休業期間外』の分である場合は、減額の対象にならない

 こうなると考えなければならないのは、会社の給与の〆日と支給日だ。
 

例1)

 上記の姫川さんが育休中に会社に頼まれ10月25日から28日まで4日間アルバイトしたとする。姫川さんの会社は月末〆・翌10日払いだ。アルバイトの日給は1万3000円とする。

 この場合、支給単位期間ごとの就労で考えれば、支給単位期間の4回目(9月27日~10月26日)に2日(2万6000円)・5回目(10月27日~11月26日)に2日(2万6000円)働いているので、各々の支給単位期間に2日ずつ(2万6000円ずつ)となる。

 しかし『支給日』はこの4日分とも5回目の支給単位期間内にある11月10日で、この日に5万2000円支払われる。そうなると、3万9000円を超過した1万3000円は給付金からカット!される。
 

例2)

 この場合、10月30日から11月2日の4日間働いたのなら、10月30・31日の労働分は5回目の支給単位期間内の11月10日に2日分、11月1・2日に働いた分は6回目の支給単位期間内の12月10日に2日分、いずれも2万6000円の支給で3万9000円に収まっているので、給付金のカットはない。
 

9/27 10/1  10/10   10/27 11/1  11/10   11/27 12/1  12/10

例1           ●●●●
例2              ●●●●
┗━━支給単位期間④━━━┛┗━━支給単位期間⑤━━━┛┗━支給単位期間⑥━━━┛
    ┗━━賃金計算期間Ⓐ━━━┛┗━━賃金計算期間Ⓑ━━━┛┖━賃金計算期間Ⓒ━
             ┗━━━━━━━➡支給Ⓐ  ┗━━━━━━━➡支給Ⓑ
 

 図に表すと上のようになり、働いた分の給与の支給日が給付金のどの支給単位期間に属するかというちょっと理解しがたい理由で減額の有無や金額が決まることになるので、ここは注意が必要だ。

 

次 ー ₂₃₁.育児休業給付 回数制限の例外 ー

 

 

2025年05月09日