₂₁₆.再就職に必要な引越し代も支給



 再就職のためには住居を移転・つまり引越ししなければならない場合もある。そうした場合の費用の支給について説明する。
 

移転費

 
 『移転費』とは、就職等のために引越ししたときにその費用を援助するもので、同居の扶養親族分も支給される。

 この要件は次のようになっている。
 

・ 『移転費』の要件

 
 移転費は、
 

 ① 失業手当を受ける資格のある方(一般・季節・65才以上・日雇離職者)が

 ② 待期及び一定の給付制限期間が終了した後で、

 ③ ・ ハローワーク等が紹介した雇用期間1年以上の職業に就くために
   ・ または、ハローワークが指示した公共職業訓練を受けるために

 ④ 管轄ハローワークに住居(住所又は居所)の変更が必要と認められて

 ⑤ 住居を移転し、

 ⑥ 就職や公共職業訓練等に要する費用(就職支度費)が就職先から支給されない
    (または、支給されるが額が必要な額に満たない)
 

場合に支給される。

 ②の『一定の給付制限期間』とは、自己都合など『離職理由による給付制限』は該当せず、就職拒否・受講拒否・職業訓練拒否などによる給付制限をいう。従って『自己都合退職』等による給付制限期間中でも、他の要件を満たせば対象になる。

 ③のハローワーク『等』には、職業紹介事業者・特定地方公共団体が含まれる。

 ④のハローワークが『住居の変更が必要と認め』るのは、次のいずれかの場合だ。
 

   a. 通常の交通機関・交通用具でおおむね往復4時間以上かかる
   b. 交通機関の便が悪く、通勤(通所)に著しい障害がある
   c. 就職先や訓練施設の特殊性や事業主の要求のため住居の移転を余儀なくされている
 

 ただし、次の場合は、移転費は支給されない。
 

・ 移転費が支給されない場合

 
  ○ 毎年循環的に離職・再雇用を繰り返す方が、前回と同様に雇用されたとき

  ○ 移転費の支給が取り消され、その支給額を全額返還していない場合
 

移転費の支給額

 
 移転費は、大きく運賃・移転料・着後手当の3つになる。
 

・ 運賃

 
 法律上は『移転費は鉄道賃・船賃・航空賃・車賃・移転料・着後手当』と6つ並列に書いてあるが、前4つと後の2つではかなり性格が違うので、前4つをまとめてここでは『運賃』とした。以下、概略を示す。

  ○ 鉄道賃  普通旅客運賃相当額

  ○ 船賃   2等運賃相当額

  ○ 航空賃  現に支払った旅客運賃(最も経済的な場合のみ)

  ○ 車賃   37円/km(鉄道のない区間)

 これらは、随伴する扶養親族分も支給される。

・ 移転料

 
 移転料は、一般的に必要な額として次の額が支給される。
 

    移動距離     親族を伴う場合   単身の場合

       50km未満    9万3000円     4万6500円
    50~100km未満     10万7000円    5万3500円
    100~300km未満     13万2000円    6万6000円
   300~500km未満    16万3000円    8万1500円
   500~1000km未満    21万6000円    10万8000円
  1000~1500km未満   22万7000円    11万3500円
  1500~2000km未満    24万3000円   12万1500円
  2000km~          28万2000円   14万1000円

 ただし、同居の扶養親族を伴って移動しても、荷物整理や移転に伴う手続きの手伝いなどのみで、新居住地で同居しない場合は、親族分の移転料はない。
 

・ 着後手当

 
 着後手当は、次のようになっている。
 

       親族を伴う場合   単身の場合

100km未満   7万6000円   2万8000円
100km以上   9万5000円   4万7500円
 

手続はどこで?

 
 個人のハローワークの管轄はその住所(または居所)の管轄だ。離職後の『求職の申込み』をしたハローワークがその管轄になる。

 移転費は法律上『移転の日の翌日から1ヶ月以内』に支給申請しなければならないので、手続するのは

『新住所を管轄するハローワーク』

ということになる。ここで

  ○ 移転費支給申請書
  ○ 雇用保険受給資格者証
  ○ 職業紹介事業者・特定地方公共団体の紹介による場合は紹介状の写し
  ○ 同居する扶養親族がいる場合はその証明書類

を提出し、

  ○ 移転費支給決定書
  ○ 移転証明書

をもらってきて、この2書類の書類を

就職先の事業主に提出

する。移転者のすべきことはここまでだ。

 そのあと事業主は、これに必要事項を記入してハローワークに返送することになっているので、ハローワークはこれを確認してから移転費を支給してくれる。支給までには普通1ヶ月程度かかる。

 あと、実際には移転前に、旧住所を管轄するハローワークに予定を伝えて話を通しておいた方が手続がスムーズなようだ。

 事業主の方も、遠方から就職する方がいる場合はこうした制度があることを知っておいた方がいい。
 

求職活動支援費

 
 ここからまた別の話になるが、『求職活動支援費』とは、受給資格者等が求職活動に伴い次のようなことをする場合、ハローワークが必要と認めたときに支給されるもので、次の3種類がある。
 

① 広域求職活動費

     ハローワークの紹介による広範囲にわたる就職活動のとき
 

 上の『移転費』とほぼ同様で、鉄道賃・船賃・航空賃・車賃と『宿泊料』からなる。

 前4つの移動旅費は『移転費』に準じ、宿泊料は1泊8700円。広域求職活動後10日以内に申請が必要だ。
 

② 短期訓練受講費

     ハローワークの職業指導に従って行う職業に関する教育訓練の受講などのとき
 

 再就職促進のために必要な職業に関する教育訓練を受けた場合で『教育訓練給付金』を受けていないときに支給される。支給額は学費の2割(上限10万円)で、終了日から1ヶ月以内に申請する。
 

③ 求職活動関連役務利用費

     求職活動を容易にするための役務を利用するとき

 
  ○ 求人者との面接
  ○ 一定の教育訓練の受講
  ○ 認定職業訓練の受講

 のため、保育所・認定こども園等を利用した場合、その費用(1日8,000円限度)の最大8割を支給するもの。

2025年03月07日