₂₀₈.失業手当の日額は最後の6ヶ月で決まる



手当の日額は、賃金日額の45~80%

 
 『失業手当』の給付日数については、
 

    ○ 一般の方          90日~360日分
    ○ 65歳以上の方         30日分か50日分(一時金)
    ○ 季節雇用の方(年齢問わず) 40日分(一時金)
 

となっている。この『1日分』の金額は、働いていたときの『賃金日額』の45~80%で給与や年齢によって変動するが、上限に達しない限り『賃金日額』が高いほど日業手当の日額が高くなるのは当然だ。

 ではこの『賃金日額』とは、何を根拠にどう決まるのか。
 

『賃金日額』は、直近6ヶ月の給与の180分の1

 
 『賃金日額』とは、雇用保険版の『平均賃金』とでもいうべきもので、基本的には離職前直近6ヶ月分の給与の180分の1で算定する(賞与等、臨時および3ヶ月を超える期間ごとに支払われるものを除く。)

 基本的に雇用保険では失業手当に限らず、1ヶ月を30日として計算することが多い。その6ヶ月分で180日というわけだ。

 従って通常の場合、たとえば給与の〆日が各月15日で2月28日に退職した場合、給与〆日ごとに集計して、『前年8月16日~当年2月15日』の6ヶ月間の給与を180で割って『賃金日額』を算定する。

 仮にその間の給与が200万円だったとすると、
 

2,000,000円 ÷ 180日 = 11,111円/日

 
が賃金日額になる。
 『離職前6ヶ月はなるべく稼いだ方がいい』と言われるのはこういう理由だ。
 

・ 『完全な賃金月』を6ヶ月分拾う

 
 もう少し正確にいうと『最後の完全な賃金月6ヶ月分』で『賃金日額』が計算される。

 『完全な賃金月』という、おそらく日本国民の99%が知らない言葉がいきなり出てきて申し訳ない。『完全な賃金月』とは、圧倒的多数の給与の〆日が月1回の場合では、
 

   ・ 給与〆から次の〆日までが満1ヶ月あり、
   ・ 『賃金支払基礎日数』が11日以上ある月(正確には『賃金計算期間』)
 

をいう。

 この『完全な賃金月』を、離職日からさかのぼって『6ヶ月分』拾っていって、その間の給与を合計して180で割るわけだ。

 離職前6ヶ月間というのは体調を崩して休みがちだったりすることもあると思うが、その結果『賃金支払基礎日数』(給与支払のもとになる日数)が11日ない月(賃金計算期間)は給与も少ないことが多いので、そうした月は無視する。
 

・ ギリギリ11日はやめた方が…

 
 よくあるのが、たとえば過去1年間ほぼ毎月20日前後の出勤があり『完全な賃金月』に余裕があるのに、病欠等で11日に満たない月にあえて年休を取るなどしてギリギリ11日にし、直近6ヶ月を『完全な賃金月』で満たそうとする方だ。

 年休をいつ取るかは本人の自由なのでそれがダメとは言えないが、11日そこそこの月が多ければ普通その分賃金日額が下がるので、その場合は10日以下にして『無視して』もらった方が有利なことが多い。
 

・ 6ヶ月分ないときは補正計算

 
 ただし『完全な賃金月』が6ヶ月分取れないこともあるので、そのときは『完全な賃金月』でない月も含めて補正して計算することになる。

 ハローワークとしては、いったん受給資格を決定した以上何が何でも『賃金日額』を算定しなければならないので、被保険者期間自体が6ヶ月ギリギリの場合(6ヶ月で受給資格が得られる場合で)や、賃金支払基礎日数が10日以下の月が多い場合は特に大変だ。

 その方法については非常に専門的になり過ぎるので省略するが、雇用保険の(業務取扱要領)にはありとあらゆる場合が事細かに書かれていて、大体どんな場合でも可能な限り適正な『賃金日額』が算定されるようになっている。
 

時給・日給の場合は特例あり

 
 時給・日給の場合は、平均賃金同様『賃金日額』にも最低保障があって、基本的な計算(6ヶ月間の給与÷180)による金額が次の金額を下回るときには、次の金額を『賃金日額』とする。
 

6ヶ月間の給与 ÷ 6ヶ月間の労働日数 × 70%

 
 たとえば時給の方が最後の『完全な賃金月』6ヶ月間に90日間働き、その間の給与が80万円だったとすると、
 

   ○ 基本の計算  800,000円  ÷  180日  =  4,444円/日

   ○ 最低保障  800,000円 ÷ 90日 × 70% = 6,222円/日

 
なので、賃金日額は最低保障の『6,222円/日』を使う。
 

賃金日額には、最低・最高限度額がある

 
 通常はこの計算でいいが、『賃金日額』には最低・最高限度額があって、前項までの計算の結果がその範囲外の場合は、最低限度額まで引上げられ、または最高限度額まで引下げられる。この金額は、毎年8月1日に改訂される。

 2024年8月1日以降は、この金額は次のようになっている。『年齢』は離職日の年齢だ。
 

             年齢       限度額

  ○ 最低限度額    全年齢      2,869円

  ○ 最高限度額    ~29才      14,130円
             30~44才    15,690円
             45~59才    17,270円
             60~64才    16,490円
             65才~      14,130円
 

 この『最低限度額』の方は、
 

その年の4月1日の最低賃金の全国加重平均 × 20 ÷ 7
 

を下回らないことになっているので、2025年8月1日以降の離職の場合は
 

1,055円 × 20 ÷ 7 = 3,014円
 

を下回らないように決定されるはずだ。この1,055円とは、2024年11月以降の最低賃金の全国加重平均だ。

 『×20÷7』とは何かというと、雇用保険に加入できる最低の所定労働時間が週20時間なので、全国平均の最低賃金で週20時間働いた場合の1日当たりの賃金額を求めるための計算だ。『賃金日額』は休日もならして計算するので『7』で割っている。
 

『賃金日額』に45~80%をかける

 
 この『賃金日額』がそのまま失業手当の日額ならいうことはないが、それだと働いているときとほぼ同じ生活水準が維持できてしまうので、そこまで望むのはちょっとムシが良すぎる。

 ということで、失業手当の『日額』は、『賃金日額』の45~80%に引下げられる。

 公的保険の例に漏れず雇用保険も『上に薄く下に厚い』。賃金日額にかける率が低いのは給与が高額な場合。逆に高いのは低額な場合だ。

 詳しくは、かなり複雑になるので次回説明する。

 

次 ー ₂₀₉.年齢と賃金による失業給付の日額 ー

 

※ 追加

・ ギリギリ11日はやめた方が…   '24.02.14

 

 

 

2025年02月04日