今回登場する『常用就職支度手当』について厚労省は
常用就職支度手当について
常用就職支度手当は、受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者であって、身体障害者その他就職が困難な者の常用就職を促進するため、これらの者が安定した職業に就いた場合において、公共職業安定所長が必要と認めたときに支給される。
と、その趣旨を説明している。
いきなりこれを出してきたのは、前々回・前回と紹介した『再就職手当』等についてはその要件や給付額の計算方法などから『再就職をアシストするため』の手当だというのは分かりやすいが、その延長で『常用就職支度手当』を捉えると、(え?)と思う点が出てくるからだ。
常用就職支度手当の要件
常用就職支度手当は、
① 待期期間(求職の申込み以後最初の7日間)が満了し、
② 就職日前3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受けていない
③ ⅰ.失業手当の残日数が所定給付日数の1/3未満(1日以上)の一般離職者
ⅱ.65才以上で離職し一時金を受けた離職1年以内の方
ⅲ.季節雇用の一時金を受けた離職6ヶ月以内の方
ⅳ.日雇労働の離職者
のいずれかで、
④ 身体障害者その他就職が困難な者として厚生労働省令で定める方が、
⑤ 給付制限がある場合は給付制限期間の後に、
⑥ ハローワークまたは職業紹介事業者等の紹介により
⑦ 1年以上引き続き雇用されることが確実と認められる
⑧ 離職前の職場関係以外の職業に
就いたときに支給される。
こちらは『再就職手当』と違って確実な雇用が1年『以上』という要件なので『1年契約』でも射程に入ってくる。これは『就職が困難な者』という常用就職支度手当の性格から規定されたようだ。
季節雇用・65才以上で一時金をもらった方も対象
③にあるように常用就職支度手当は、季節・65才以上・日雇も含めたすべての離職者が対象になり得る非常にフトコロの深い制度だ。
しかも季節・65才以上は、一時金をすでにもらった方であることが何と『要件』。ただし当初の受給期限内に就職していなければならない。季節雇用は6ヶ月以内、一般の65才以上は1年以内ということになる。
季節雇用の一時金をもらった方が、別の事業主のもとで通年で働くことになった場合などには使える。もちろん次も季節雇用なら雇用契約期間は絶対に1年未満なので対象外だ。
一般離職者は、3分の2以上使ってから
それ以外の一般の離職者については、給付残日数が所定給付日数の3分の1未満であることが要件。つまり3分の2以上は使い切っていなければならない。
『再就職手当』は3分の1以上残っていなければならないので、これとは『補完の関係』ということが分かる。再就職手当と常用就職支度手当の要件を同時に満たしている状態というのは決してない。
しかし、常用就職支度手当には『就職が困難な者』というもう1つの要件があるので、給付残日数が減って再就職手当の要件が満たせなくなったとしても、常用就職支度手当がもらえるとは限らない。
・ 『就職が困難な者』とは
省令で定める『就職が困難な者』とは、次のような方々だ。
⑴ 再就職日45才以上で、再就職援助対象者*¹または高年齢支援対象者*²
⑵ 季節雇用の離職者で、積雪・寒冷等『指定地域*³』内に雇用される者
⑶ 常態として日雇労働被保険者である再就職日45才以上の者
⑷ 認定駐留軍関係離職者*⁴
⑸ 沖縄失業者求職手帳*⁵所持者
⑹ 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳*⁶所持者
*¹ 再就職援助対象者
労働施策総合推進法第24条は、一定数以上の労働者が離職を余儀なくされることが見込まれる事業の縮小の際には、その労働者の再就職援助のため『再就職援助計画』を作成し、過半数労働組合または労働者代表の意見を聴き、ハローワークの認定を受けなければならないことを定めている。その再就職援助計画の対象者。
*² 高年齢支援対象者
高年齢者雇用安定法第17条は、解雇等で離職する高年齢者等が希望するときは、再就職の促進のため『求職活動支援書』を本人に交付しなければならないことを定める。この対象となる方。
*³ 指定地域
積雪・寒冷等指定地域は以下の通り
全域対象 ➡ 北海道・青森県・岩手県・秋田県
一部対象 ➡ 宮城県・山形県・新潟県・富山県・福島県・長野県・石川県・福井県・岐阜県
*⁴ 認定駐留軍関係離職者
米軍撤退・部隊縮小等により離職した方
*⁵ 沖縄失業者求職手帳
*⁴のうち、米政府機関に雇用されていた方等、一定の要件に該当する方に交付される手帳
*⁶ 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳
本州四国架橋建設に伴い離職した一定の要件を満たす定期航路事業に雇用されていた方に交付される手帳
『45才以上』だけではダメ
ここで⑴の最初だけ見て瞬間的に45才以上ならだれでも対象になるかのように考える超楽観的な方もいるようだが、上に書いたように45才以上でも、再就職援助対象者か高年齢支援対象者でなければダメだ。
給付額の基本は、失業手当の残日数分の4割
肝心の給付額は『失業手当の日額×残日数分×4割』が基本だが、受給資格の種類等で変わってくる。
・ 季節・65才以上・日雇は36日分
季節雇用・65才以上・日雇の方の場合は、失業手当の日額の36日分だ。ザックリ月給30万円(賃金日額1万円・失業手当日額6,103円)で22万円程度になる(60~64才なら18万3000円程度)。
・ 一般は所定給付日数・残日数で変わる
一般の場合は、支給残日数(45日未満は45日・90日以上は90日とする)の4割なので、失業手当の日額の18~36日分になる。ただし元々の所定給付日数が270日以上なら36日分で固定だ。
分かりづらいので表にすると下のようになる。
所定給付日数 支給残日数 常用就職支度手当の額
90日 1~29日 18日分
120日 1~39日 18日分
150日 1~45日 18日分
” 46~49日 18.4~19.6日分(残日数×40%)
180日 1~45日 18日分
” 46~59日 18.4~23.6日分(残日数×40%)
210日 1~45日 18日分
” 46~69日 18.4~27.6日分(残日数×40%)
240日 1~45日 18日分
” 46~79日 18.4~31.6日分(残日数×40%)
270日 1~89日 36日分
300日 1~99日 36日分
330日 1~109日 36日分
360日 1~119日 36日分
支給申請は、就職事業所の管轄ハローワークへ
支給申請は、就職日翌日から1ヶ月以内に、就職した事業所管轄のハローワークに申請する。本人の住所と事業所所在地の管轄が違う場合は注意したい。