最初におことわりしておくが、失業手当の受給期限を延長できるのは『一般の』離職者だけだ。
『一般』以外の、一時金の対象となる
○ 季節雇用の離職者(6ヶ月)
○ 65才以上の離職者(1年間)
は対象外で、残念ながらいかなる事情があっても延長できない。
一般離職者は最大4年まで延長可
・ 失業手当の基本のおさらい
失業手当を受給するためには失業していなければならない。失業というからには労働の意思と能力がなければならない。職業についていないだけではダメだ。
ここで一般の離職者については、基本28日ごとに『失業の認定』があって、1日1日について、その日に失業状態だったかどうかを認定されることになる。
・ 労働の意思
理論的にはその日その日ごとに『労働の意思と能力があったか』を確認されることになるが、実務的にはその期間内に『求職実績』が基本2回以上あれば、その期間内『労働の意思』はあったと判定される。
『求職実績』とは具体的には、ハローワークでの職業相談・求人への応募・公的機関が行なう企業説明会への参加等が含まれる。ハローワークに毎日通ってパソコンで求人情報を閲覧するなどして必死に仕事を探していても、それだけでは実績にはならない。
・ 労働の能力
『意思』はともかく『能力』については、どうしても労働できない状況にあることもあるので、一定の理由による場合は、原則1年間となっている失業手当の受給期間を、最大4年間まで延ばせることになっている。次のような理由による場合だ。
○ 受給期限を延ばせる理由
① 妊娠
② 出産
③ 育児
④ 負傷又は疾病
⑤ ハローワークがやむを得ないと認める場合
・ 親族の看護・介護
・ 配偶者の海外勤務への同行
・ 青年海外協力隊など公的機関が行う海外技術指導による海外派遣(研修含む)
もちろんこうした期間は『労働の能力』はないので失業手当は支給されない。失業手当をもらう『権利がある期間』が延長されるだけだ。
・ 働けない期間が30日以上の場合
これらの理由による延長は、その理由による労働不能期間が30日以上の場合に限られる。
以前はこの場合、定年退職時同様2ヶ月以内にハローワークに申し出なければならなかったが、今はその要件は撤廃された。
現在は『職業に就くことができない期間』が30日間となったその翌日以降、延長された受給期限までなら認められることになった。
ただ実際には受給期限が近づいて、『所定給付日数』が全て収まらなくなればその分受給できる失業手当が減るので、遅くても『職業に就くことができない期間』が終わったらすぐに行った方がいいだろう。
・ 定年退職でも4年まで
前回書いたように定年退職後の延長申請(最大1年間)をした方であっても、さらに上の要件に当てはまるのなら同様に延長が可能だが、限度は合わせて最大4年間と、他と変わらない(さすがに1年+4年とはならない)。
負傷・疾病で30日未満の場合は別の救済措置
ここで、前項④の『負傷又は疾病』による労務不能の場合には、30日未満でも救済措置がある。
これは『職業に就けない』期間が14日以内か15日以上かでさらに2つに分かれる。ただし、いずれにしても失業手当の受給資格があることが前提なので、最初の求職の申込みの段階から病気やケガで働けない状態の方はムリだ。
・ 14日以内は医師等の証明書で失業認定
14日以内の場合は、医師又は診療担当者の証明書によって、証明された期間の失業が認定される。この場合は、負傷・疾病が治った後最初の認定日に証明書を提出する。
本来、労働の『能力』がない期間は失業手当は支給されないはずだが、14日以内の場合は例外的に認めるものだ。
・ 15日~29日は『傷病手当』の対象
15日以上になるとさすがに失業の認定はされないが、かわりにその間の失業手当と同額の『傷病手当』が支給される。もちろんその分、失業手当の『給付日数』は少なくなる。
離職理由による給付制限に伴う延長
『失業手当(失業保険)をもらうには』で述べたように、普通の自己都合なら2ヶ月(2025年4月からは1ヶ月)・5年以内3回目以降の自己都合なら3ヶ月というように、待期期間満了後失業手当が支給されない『給付制限期間』が設定されることがある。
これは、失業者の受給権を奪う趣旨ではないので、これによって物理的に失業手当をもらえなくなる可能性がある場合は、その分、受給可能な期間も延長される。
とは言っても、2ヶ月制限なら2ヶ月延長というように、給付制限期間の分だけ延長されるわけではないので、これによる延長はごく限定的だ。延長期間は次のように計算される。
延長期間 = 給付制限期間 + 所定給付日数 + 21日 ー もとの受給期間
たとえば閏年が関係しない場合で、所定給付日数360日・もとの受給期間が425日(1年+60日)の方が3ヶ月(91日とする)の給付制限を受けた場合は、延長期間は
91日 + 360日 + 21日 ー 425日 = 47日
ということになる。
たとえば離職日が2025年3月31日なら、この方の通常の受給期限は2026年5月30日だが、47日延長されて7月16日が延長期限となる。
・ 4年超に延長の場合も
この延長規定は前項の傷病等の延長規定とは全く別物なので、傷病等での延長の結果受給期間が『4年』となった方なら、この規定による延長期間を含めた受給期間は4年を超える場合も出てくる。
しかし考えてみると『倒産・解雇等』の場合はもともと給付制限期間はないので、就職困難な方以外にはあまり関わってはこない。
※ メインタイトル変更
4年まで延長可… ➡ 4年まで延長も…