育児休業制度はこの10年余りで大きく拡充され、2025年4月からは雇用保険から『出生後休業支援給付金』が支給されることになった。
休業前の給与が『実質10割保障』されると大きく報道されたこともあり、期待も大きいようだが、誤解されやすい面もあるので説明する。
8割支給 ≒ 手取り10割 の理由
『出生後休業支援給付金』は、対象者が育児休業給付金を受給したときに、一定の要件を満たせばこれに13%上乗せされるものだ。
もとになる育児休業給付金は、この『一定の要件を満た』す場合には67%なので、
育児休業給付金 出生後休業支援給付金
67% + 13% = 80%
になる。
ここで、出生時育児休業(産後パパ育休)を1ヶ月取得した場合と一切取得しなかった場合とを比較すると次のようになる。
月収30万円(標準報酬も同じ)・40才未満の『パパ』が、賃金計算月いっぱい休業した場合だ。健康保険料は北海道の場合だが、他でも大きな違いはない。
通常勤務の場合 産後パパ育休の場合
給与 30万円 0円
育児休業給付金 20万1000円
出生後休業支援給付金 3万6400円
健康保険料(5.155%) 1万5465円 0円
厚生年金保険料(9.15%) 2万7450円 0円
雇用保険料(0.55%) 1650円 0円
源泉所得税 6750円 0円
計 24万8685円 23万7400円
このケースの場合、育児休業給付金は1ヶ月で30日分・出生後休業支援給付金は満額の28日分で、これを合わせると23万7400円となる。もちろんすべて免税で、社会保険料も免除だ。
対して通常勤務の場合は給与30万円から社会保険料と所得税が引かれるので、手取りは24万8686円になる。
この例で手取りを比べると、休業した場合は通常勤務の95%強で完全に『手取り10割相当』とは言えないが、休業しなかった場合の翌年の住民税の増加分も考えればかなり近い水準とはいえる。
40才以上で通常勤務なら介護保険料もかかってくるし、月収がもっと多い場合には、休業した方がトクな場合も出てくる。まあ、休業したときの状況にもよるが、
『手取り10割相当』と言っても
JAROからクレームがつくレベルではない
とはいえる。
・ 社会保険料が免除されない場合も
ただし『実質10割』近くなるのは、社会保険料が免除されることが前提だ。
育児休業期間中は基本的に社会保険料が労使ともに免除されるが、育児休業を取ったら必ず免除されるというものでもない。
詳しくは後で述べるが、『産後パパ育休』でいうと、その休業が
◎ 月の末日にかかる
◎ 同一月に14日以上になる
場合のいずれか(両方満たしている場合は当然)に社会保険料が免除になる(会社の給与〆日との関係はない。)。
だからたとえば、2ヶ月にわたって2回に分け、それぞれ月末を除く13日ずつ育児休業を取った場合は、社会保険料免除の対象にはならない。
出生後休業支援給付金の支給要件
ここでは子が、父親と母親の実子の場合を想定して説明するので、それ以外の場合は厚労省の正式な発表(パンフレット等)にあたってほしい。
『出生後休業支援給付金』の支給要件は、対象者が母親の場合と父親の場合に分けて考えた方が分かりやすいので、ここではその方法を採る。
また、このあと出てくる『育児休業給付金が支給される育児休業』というのは、次の両方が含まれる。
◎ 1才未満の子を養育するための普通の育児休業
◎ 出生時育児休業(27.産後パパ育休は出産日か予定日から)
・ 支給要件(母親の場合)
① 母親が、育児休業給付金が支給される休業を
② 産後休業後出産翌日から16週間以内に通算14日以上取得し、
③ 父親が、『出産日・予定日の早い日』から『遅い日の翌日から8週間以内』に
④ 育児休業給付金が支給される育児休業を通算14日以上取得した場合等*に、
⑤ 母親に、休業取得期間(最大28日分)の出生後休業支援給付金を支給する。
というものだ。④の等*は、③・④の『父親要件』については適用できない次のような場合もあるので、その場合は③・④の『父親の育児休業要件』はいらない。
○ 『父親の育児休業要件』がいらない場合
ア. 父親がいない
イ. 母親が、父親からDVを受け別居中
ウ. 父親が、給付金の対象となる育児休業を取得できない
a. 無職
b. 自営業者等(フリーランス・会社役員等)
c. 日雇労働者
d. 季節労働者
e. 有期雇用労働者(上記③の期間内に離職が明らかな場合)
f. 労使協定に基づき、育児休業の申出を拒まれた場合
g. 任命権者から育児休業を拒まれた公務員
h. ほか、雇用保険の被保険者でない(個人・5人未満の農林水産業等)
i. 雇用保険加入だが、育児休業給付金の支給要件を満たさない
j. 上記③の期間に14日以上取得したが、有給のため給付金が支給されない
これらの場合、『ア』・『イ』・『ウのa・b』についてはそれが確認できる書類、ウのc~jの場合は申告書等の提出が必要になる。
・ 支給要件(父親の場合)
① 父親が、育児休業給付金が支給される育児休業を
② 『出産日・予定日の早い日』から『遅い日の翌日から8週間以内』に
③ 通算14日以上取得した場合に、
④ 父親に、休業取得期間(最大28日分)の出生後休業支援給付金を支給する。
ということになる。
②の『出産日・予定日の遅い日の翌日から8週間』というのは、普通、母親の『産後休業期間』がすべて含まれるが、もともと専業主婦等なら産休はないことなどからか、こういう表現になっている。
また、父親の『育児休業』の申出は法律上
○ 通常の育児休業なら 休業開始予定日の1ヶ月前まで
○ 出生時育児休業なら ” 2週間前まで
にしなければならないので、申出の時点では正確な出生日は分からない。予定日より出産が遅くなった場合でも、予定日の翌日から8週間以内の育児休業であれば、まだ生まれていない日についても育児休業を取得し、育児休業給付金や支援給付金を受けることはできる。