ここでは前回の続きで、他の法定休暇を見てみよう。
出生時育児休業
前回書いたように、産休は母体保護の休暇であって育児のためのものではない。ということで、出産日・予定日のうち、早い方の日から、遅い方の日の8週間後までの間で4週間(2回に分割可)を限度に、父親の出生時育児休業(産後パパ育休)が可能になった。
これは、今まであった『パパママ育休プラス』とは全く別の制度だ。
これについても、下記の限定条件はある。
・有期契約労働者で、出生8週+6ヶ月後までに契約満了し、更新されないことが明らかな場 合はダメ。
・労使協定により、入社1年未満の従業員・申出の日から1年以内に雇用契約が終了することが明らかな従業員・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員を除外できる場合は、その申出は拒否できる。
介護休業
要介護状態にある家族(配偶者・子・父母・配偶者の父母・孫・祖父母・兄弟姉妹)を介護する従業員は、通算93日以内(分割は3回まで)介護休業をすることができる。この除外規定は、
・有期契約労働者で、申出時点において、介護休業開始予定日の93日+6ヶ月後までに契約満了し、更新されないことが明らかな場合はダメ。
・《労使協定により…》の部分は前項と同じ。
子の看護休暇
小学校入学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、負傷し、又は疾病にかかった子の世話をするために、又は予防接種や健康診断を受けさせるために、1年度以内に、子が1人の場合は5日、複数の場合は10日、子の看護休暇を取得できる。
この休暇は、時間単位で取得可能だ。
入社6ヶ月未満の従業員・1週間の所定労働日数が2日以内の従業員は、労使協定によっては除外となる。
介護休暇
要介護状態にある家族(介護休業の対象と同じ)を介護する従業員は、1年度内に、当該家族が1人の場合は5日、複数の場合は10日、介護休暇を取得できる。時間単位可能。
除外規定も前項と同じ。
生理休暇
『24.その休み、休日?休暇?』でも触れたが、生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があったときは、必要な期間休暇を与えなければならない。これは客観的な特定はほぼ不可能なので(下手をするとセクシャルハラスメントになる)、基本的に無条件で与える必要がある。
ただ過去には、生理休暇を取得した女性が深夜に4時間かけて遠隔地へ移動し、翌日の歌謡大会に出場したことで、就業が著しく困難な状況ではなかったと認められ、会社が下した休職処分のうち3ヶ月までは有効とした判決がある。
裁判員休暇等
裁判員・補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となったときに、従業員から必要な時間を請求された場合、これを拒んではならない。
この根拠は『使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。』とする労基法の規定にある。
要は、選挙権の行使の延長であって、ここでは、公民権行使と公の職務執行をひっくるめて、裁判員休暇『等』とした。
ただ、裁判員となると、選挙権の行使とはわけが違う。日数もかかるし、往復の時間も投票所の往復よりは一般的にはずっとかかるだろう。
もう1つ厄介なのが守秘義務だ。その方が裁判員となったことについては公にしてはならない。これは、事件関係者からその方を守る意味もあって、こうなっている。ただ、
「〇〇君、何で休んでるんですか?今うちの課、忙しいんですよ。」「いや、よんどころない事情があって…」「事情って何ですか?」「まあその…、とっても、非常に、全く、とてつもなくよんどころない事情で…」
と口ごもる必要はない。
『公にする』とは、不特定多数に情報を提供することを言うので、必要な範囲で話すのはやむを得ない。ただ、情報が拡散しないようクギを刺しておく必要はあるだろう。
次 ― 28.産休・育休期間等の給付 ―
※ 訂正です。(2023.02.14)
『生理休暇』2行目
必要な時間 ➡ 必要な期間
『裁判員休暇等』5行目
労基法に規定 ➡ 労基法の規定