26.法定の有給休暇は『年次有給休暇』だけ

 

 ここでは、前々回で話題にした『休暇』について考えてみる。まずは、法律上必ず設けなければならない『法定休暇』である。

※ 法定休暇

年次有給休暇


 これほど有名な休暇はない。継続勤務6ヶ月・8割以上出勤で、初年度10日の休暇を有給で付与する義務がある。

 実は、法律で有給と決まっているのは、この年次有給休暇のみである。それぞれの会社が任意で有給にしている休暇はあるが、法定ではこれだけだ。

 年次有給休暇の略称として『年休』でなく『有休』や『有給』という方もいて、他の『有給休暇』と紛らわしいのでやめてほしいが、有給義務が年次有給休暇だけならやむを得ないか…とも思う。

 一定の要件を満たした場合は1年間に5日以上は取得させなければならない。こうした取得義務規定があるのも、この『年次有給休暇』と次項のうちの『産後休業』の2つだけである。この年次有給休暇については、後日詳しく述べる。
 

産前産後休業


 6週間(双子以上のときは14週間)以内に出産予定の女性から請求があったときは、休業させる義務がある。

 また、産後8週間を経過していない女性労働者は、本人が希望しても就業させてはならない。例外は産後6週間を経過した女性から請求があり、医師が支障がないと認めた業務だけだ。

 産前産後休業は、育児休業とは違って母体保護が目的なので、一切の限定条件はつかない

 極端な話、昨日入社した社員が明日からの産休を請求しても拒むことはできない

 また、ついでに記すが、産休に入った女性が出産後8週間を経過して産後休業を終え、その後30日を過ぎるまでは『天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合』、要するに不可抗力によって会社がつぶれたときを除いて、いかなる理由があっても解雇できない
 

母性健康管理の措置


 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に母子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申し出があったときは、必要な時間を確保する義務がある。『必要な時間』とは、下記の通りとなっている。

   ・妊娠23週まで     4週に1回
   ・  24~35週     2週に1回
   ・  36週~出産    1週に1回
       ( 医師の指示がこれと異なるときはその指示による。)
   ・産後1年以内      医師等の指示により必要な時間

 他に『休暇』とはちょっと離れるが、医師等の指導による申出があったときは、
   ・勤務時間の変更・時差出勤
   ・休憩の延長・回数の増加等
   ・勤務の軽減等
 等の、必要な措置を取る義務がある。
 

育児時間

 1才に満たない子(続柄としての『子』ではありません。次項でも同じ)を養育する女性労働者から請求があったときは、1日2回、1回30分の育児時間を与える義務がある。

 この育児時間については『休憩』と違って『労働時間の途中』という縛りはないので、出勤を30分遅らせる・退勤を30分早める・休憩を延長する…等の対応も可能だ。

 「今どき『女性労働者』限定?」という声も聞こえてきそうだが、この規定はそもそも『授乳時間確保』という要請からきているのでやむを得まい。

 ただ、育児時間を請求できるのは母親限定ではないので、例えば体の弱い母親に代わって年の離れた妹を養育する姉が請求することもできる。これは正当な権利なので、べつに作り笑顔で答える必要はない(ちょっと古かったか)。兄はダメだ。そこまで考えると理論的整合性に?マークがつくが…

 なお、所定労働時間が1日4時間以内の場合は1回までとなる。
 

育児休業


 原則として、1才に満たない子と同居し養育する労働者が申し出た場合は育児休業をすることができるのは知られている通りだ。ただし、この規定には次のような除外規定がある。

・有期契約労働者で、申出時点で、子が1才6ヶ月に達する前に契約満了し、更新されないことが明らかな場合はダメ。

・労使協定により、入社1年未満の従業員・申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員を除外できることになっている場合は、その申出を拒否できる。

 この休業について詳しく書くと、元の育児介護休業法より長くなってしまうので、詳しく知りたい方は、専門の解説書にあたってほしい。

 一般に『パパママ育休プラス』制度を利用する場合は1才2ヶ月まで、保育所の待機児童等の場合は1才6ヶ月まで、それでもダメなら2才まで可能となる。

 ただ、後で触れるつもりだが、これらは『最低基準』だということは頭に入れておいた方がいい。

 

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2023年02月07日