25.年間所定労働時間の変動を防ぎたい

 

 カレンダー通り休日を設定している会社(祝日を休日にしているところもしていないところも)では、毎年微妙に所定労働時間が変わる。

 基礎賃金は年間所定労働時間で割って出すので、年間所定労働時間が変われば基礎賃金も変わることになる。

 また、週44時間の特例事業(後で述べる。多くは土曜日4時間勤務としているので、以下、その前提で書いています。)で祝日が休日のところは、土曜日の祝日の日数によって所定労働時間4時間の日の日数も変わっていく。
 

基礎賃金の変動を何とか…


 というわけで、職務関連給与(ここでは皆勤手当分等も常に含めることにする)の変動がなくても、年間所定労働時間が変われば個人ごとの基礎賃金も変動する。当然、割増賃金の単価もすべて変化するので、人数が多ければ結構大変な作業にはなる。

 例として、土日・『祝日』が休日の場合の年間所定労働日数と、1日8時間労働とした場合の年間所定労働時間の、今後10年間の年度(4月~翌3月)ごとの変動を書いておく。

 ただし、お盆や年末年始等、会社ごとに日数も(休日・休暇等の)扱いも違ってくるものについては考慮しようがないので、これをそのまま使うことは避けて頂きたい。

 また、ここでは国民の休日や(国の)振替休日も『祝日』に入れてある。厳密に言うとこれらは祝日ではないので、その辺を厳密に取り扱っている事業所は、これより若干多くなる。

1日8時間の事業所で、土日・『祝日』が休日の場合の年間所定労働日数・時間

2023年度   246日   1968h
2024年度   247日   1976h
2025年度   246日   1968h
2026年度   245日   1960h
2027年度   247日   1976h
2028年度   245日   1960h
2029年度   248日   1984h
2030年度   247日   1976h
2031年度   248日   1984h
2032年度   245日   1960h

 これだけ見ても、3日・24時間の違いが出てくるのが分かる。こうした変動について、
 

『何とかならないか』という相談もあるが、
                『何ともならない。』

 これが正直なところだが、そう言ってしまえば身もフタもないので、あえて解決策を探ると次のようになる。
 

① 年間所定労働時間を固定する

 当たり前だと怒られるかもしれないが、実際に1年365日(閏年は366日になるが)の中には、祝日と土日の間とか、休日にしてもいい日、あるいは逆に出勤日にしてもいい日というのは案外あるものなので、それらを調整して年間所定労働時間を固定するのは、担当者は大変だが不可能ではないはずだ。

 ただ、この方法は就業規則の変更を伴ったり不利益変更の可能性もあるので、疑問があれば社労士等に確認して行った方がいい。
 実際、多くの事業所では実際の所定労働時間を固定して運用している。

 なお、細かい話になるが、『年間休日数』を固定した場合は、閏年だけ所定労働日数(時数も)が増えることになる。
 

② 最も少ない所定労働時間で固定する

 会社の休日(特例事業では土曜の扱いも含めて)設定のルール通り、その先10年分位のカレンダーを作ってみて、最も少ない所定労働時間の年の年間所定時間を、会社の年間所定労働時間として固定する方法だ。

 『基礎賃金』算出のための数字として最も少ない年間所定労働時間で割れば、基礎賃金は最大となるので、他の年はすべて法定よりも労働者有利(または法定通り)となる。従って問題は生じない。という理屈だ。

 ただ、あくまで『基礎賃金』算出のための数字としてこれを使うのはOKというだけのことなので、それ以外のときの年間所定労働時間は、きちんと計算しておいて、いつでも発表できるようにしておく必要はある。

 なお、1985年以降、10年以上国の祝日の変更がなかったことはないようなので、経験的に言って、10年以上先までカレンダーで確認するのはムダなようだ。
 

③ 基礎賃金変更を、昇給月に合わせる

 『年間』所定労働時間といっても、暦の上での『年』(1/1~12/31)や年度(4/1~3/31)の所定労働時間で割れと、法は限定している訳ではない。会社の事業年度に合わせる必要もない。

 従業員の昇給については、毎年一定の期日を定めているところが多いと思うので、自社の昇給月に合わせて、たとえば月末〆で4月昇給なら4/1~3/31、20日〆で6月昇給なら5/21~翌年5/20等、昇給期日から1年間の所定労働時間を算定し、新しい基礎賃金とする。

 これなら昇給で基礎賃金が変わると誰もが思うし、給与計算担当者も、毎年1回の通常の基礎賃金算定のときに、新しい『年間所定労働時間』を使うだけなので、事務負担の増加もわずかだ。違和感なく新体制に移れるのではないか。

 多少、『どさくさに紛れて…』感はあるが、どうせ昇給時は基礎賃金が変わるので、時期をそれに合わせれば、今まで通り年1回の基礎賃金改定で済ませられるという作戦である。

※ 訂正です。
③ 基礎賃金変更を、昇給月に合わせる
6行目 5/21~6/20等 ➡ 5/21~翌年5/20等   (2023.02.03)

※ 5月4日はみどりの日で祝日になっていました。その関係で、以下訂正します。
『基礎賃金の変動を何とか…』
 8行目  5月4日の ➡ 削除
 13行目 2025年度  247日 1976h ➡ 246日 1968h
 14行目 2026年度  246日 1968h ➡ 245日 1960h
 19行目 2031年度  249日 1992h ➡ 248日 1984h
 20行目 2032年度  246日 1968h ➡ 245日 1960h
 21行目 4日36時間 ➡ 3日24時間       (2023.02.07,10)

 

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2023年02月03日