24.その休み、休日?休暇?

 

 ここで、代替休暇シリーズで言及した『休日と休暇の違い』についても触れておきたい。

 法定休日・所定休日のどちらにも言えることだが、休日は労働義務がない日である。毎週土曜が所定休日・日曜が法定休日の会社なら、どちらも労働義務がないので休日である。祝日も休みであればそれも休日。

 シフト勤務でその人その人によって出勤日がバラバラ・月によっても替わるという場合でも、そのシフトが入っていなければ、その日がその人の休日。というのが基本である。

 『休暇』は、法定されている年次有給休暇・産前産後休業・育児休業・子の看護休暇・介護休業・生理休暇等をはじめ、会社ごとの慶弔休暇・夏季休暇等が考えられる。

 これら『休暇』は、『元々労働義務がある』のだが、法律や会社の就業規則等によって、その義務が免除された日である。有給か無給かはここでは関係しない。
 

・無給の休暇は何のため?

 法律で有給と定められている『年次有給休暇』など有給の休暇はさておき、無給の休暇は何のためにあるのか。欠勤と変わらないのではないか…という疑問もわくのではないだろうか。

 違いは大ありである。
 従業員は、労働契約上、所定労働日の始業時刻から終業時刻まで労働する義務を負っている。有給・無給に関わらず、休暇の場合はこの労働契約上の義務を免除されることに意義がある。

 例えば『生理休暇』は法定で必須の休暇だが、有給・無給は会社の就業規則等で決まるので無給の場合が多い

 たとえ無給であっても、生理日の就業が著しく困難な女性が生理休暇を請求した場合は、使用者は拒むことはできない。要するに、労働の義務を免除しなければならない。

 生理休暇の性質上当然だが、年次有給休暇と違って『時季変更権』(後日触れます。)を行使することもできないので、ある意味年休権よりも強力な権利ともいえる。
 

休日か休暇かで基礎賃金が変わる


 個人的な事由による休みはともかく、会社のお盆休みや年末年始・あるいはゴールデンウィーク中の平日の休みが休日か休暇かは大した違いはないようにも考えがちだが、これは、割増賃金の元となる基礎賃金に影響してくるので、はっきり定めておかないと給与計算ができなくなる。

 基礎賃金の算出方法は、次の式で行ったのだった。

『基礎賃金』= その月の職務関連給与 × 12 ÷ 年間所定労働時間

 休暇であれば『労働義務』自体はあるので、年間所定労働時間に影響はないが、休日であれば労働義務は初めからない。結果、所定労働時間が減ることになる。

 常に8時間勤務のある会社で、お盆休みが3日間(すべて平日とする)の場合、この休みが『休暇』であれば所定労働時間に増減はないが、『休日』であれば、年間所定労働時間が24時間減る。

 例の月影さんの場合で計算すると(「6.営業手当は非常にまれでも『歩合給』」参照)、

232,500円/月 × 12月 ÷ 1960h ≒ 1,423円/h だった基礎賃金が、

232,500円/月 × 12月 ÷ 1936h ≒ 1,441円/h

に18円/h上昇するので、時間外単価(月60時間以内)でいうと1,779円/hから1,801円/hへ22円/h上がることになる。

 以前から年次有給休暇の『計画的付与』を行っていた会社では、事業所全体の一斉付与という形で労使が合意してお盆や年末年始を休暇で扱っていたところはあったが、労使協定が必要で、あまり普及していなかった。

 しかし、2019年4月から、10日以上の年休付与者に対して、最終的には使用者が指定してでも年5日以上取得させることが義務付けられたため、否応なく対処せざるをえなくなってきたというのが大方の実態だ。

 一斉付与は業務への影響が大きすぎるので、各人の希望を聞いて個々に年休の日程を決めるというところが多いが、諸外国並みに一斉休暇というのも社会的合意が得られる時代かもしれない。業種によっては絶対ムリというところはあるだろうが。

 ただ、この場合も、何度も述べたが、今まで休日として扱っていた休みを『休暇』に変えるというのは、労働者に不利益を及ぼすので、いきなり一方的な変更はできない。

 

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※ 誤字訂正

『・無給の休暇は何のため?』
5行目   就業時刻まで ➡ 終業時刻まで   '23.06.09

※ 一部変更
9行目 これらの休暇は ➡ これら『休暇』は

2023年01月31日