前回、中小企業についてまとめた流れで、比較的小さい企業の定義と特徴についてまとめてみた。
数で勝る『個人事業』も当然企業
個人事業は『企業』ではないと思っている人もいるが、『個人事業』も当然『企業』に含まれる。というか、日本の全企業数385万のうち、個人事業は197万(少し古いが2016年)。若干ではあるが法人を上回る。
個人事業は、日本の企業の中では多数派である。個人事業恐るべし!
個人事業はミニサイズのイメージが強いが、法人でないというだけの違いなので、企業規模との関係はない。従業員数百人規模の個人事業も当然あり得る。
一般的には個人事業でも従業員5人以上だと(狭義の)社会保険加入義務が生じるが、宗教・サービス業・第一次産業は、個人事業であれば義務化されていない。
そうした業種では、経営者の所得税が(法人化した場合の)法人税よりずっと高くなるのを承知の上で、多人数になっても個人事業を貫いている場合もある。
ちなみに、我々士業については、2022年10月から義務化されたところだ。
小規模事業者とは
中小企業の中で『中』を除いたものが『小規模事業者』だが、『中小企業基本法』では、次のような定義になっている。
業種 従業員数
商業・サービス業 5人以下
製造業その他 20人以下
この定義は何に必要かというと、『小規模企業共済』に加入し、貸付などが受けられるなどのメリットがあるらしい。ちなみに調べてみると、この共済は法人も排除していないようだ。さらにちなみに、私はこの共済の回し者でも何でもないので、詳しくは自分で調べてほしい。
さて、この位の少人数になってくると、『以下』と『未満』の違いは大きな意味を持ってくる。上にも書いたように、個人事業の社会保険の加入義務は一般に5人以上だ。
従業員数がちょうど5人の場合、個人事業であっても社会保険は、原則強制加入だが、小規模企業共済には、業種を問わず入れるようだ。
零細企業とは
『零細企業』については、どの法律でも明確な定義はない。ということは零細企業であるかないかで法律上の扱いが変わることはない。
扱いが変わらないのであれば、はっきり言ってどうでもいいことではあるが、ついでなので触れておく。慣例的には次の企業が『零細企業』と言われているようだ。
零細企業 ≒ 『資本金額1000万円以下』 かつ 『従業員5人以下』 の企業
あまり意味のない区分けだが、ここでも従業員5人『以下』となっている。
一人親方とは
『一人親方』については、一般に『従業員を持たない個人事業主』のことをいうことが多いが、実は法人であっても従業員を雇用していなければ『一人親方』である。『一人親方』の概念に、法人・個人の区別はない。
『従業員を持たない』ということになると、対象がいないので労働法の適用の余地はないが、労災保険に一人親方特別加入するための基準としては、『従業員を雇う期間が年間100日未満』であれば可としている。
労災加入できる一人親方等としては、2021年に新しく下記の4業種が加わり、全部で22業種となった。
・2021年から一人親方等で労災特別加入が可能となった業種
・芸能関係作業従事者
・アニメーション制作作業従事者
・柔道整復師
・創業支援措置により事業を行う方
特別加入の話とは別に、従業員を雇えば労災保険加入は義務となるので、年に1回でも従業員を雇用するのであれば、事業主として労災加入しなければならない。『1日でも人を雇えば労災保険加入』は鉄則だ。
ただ、建設業には独特のシステムがあって、下請けの従業員(親方は当然ダメ)が労災にあったときは原則として元請の労災保険を使うことになっている。だから下請専門で絶対に元請にならない場合は加入しない選択はある。
再び特別加入の話に戻るが、建設業の下請専門で『一人親方特別加入』している方が年間100日以上従業員を雇うことになった場合は、特別加入の要件を満たさなくなるので、『中小事業主の特別加入』に切替えなければならない。
いずれにしても、労災については何かあってからでは遅いので、万全の体制を作っておくべきだ。労災特別加入については、機会があればいずれまとめる。
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※ 数字の訂正です。
『数で勝る『個人事業』も当然企業』2行目 個人事業は187万 ➡ 個人事業は197万