ここまで説明した通り失業手当が支給されるためには、まず
○ 一般の自己都合の場合 離職以前2年間に12ヶ月
○ 季節雇用の場合 離職以前1年間に6ヶ月(歴月ごと)
○ 65才以上の離職者(季節雇用以外) 離職以前1年間に6ヶ月
○ 特定受給資格者(倒産・解雇『等』離職とは?) ”
○ 特定理由離職者(正当な理由のある自己都合とは?) ”
の『被保険者期間』(失業手当に必要な勤務期間6・12ヶ月)が必要だ。
ただ、様々な理由で離職以前2年間に12ヶ月(または1年間に6ヶ月)の被保険者期間を確保できない場合もあるだろう。
単純にサボりで欠勤が多くて確保できないなら自己責任だが、やむを得ない事情で確保できない場合は、その事情によっては、この離職以前『2年間』(または1年間)を、最大4年間まで延長できる場合があるのだ。
・ 季節雇用・65才以上でも適用
このことは一般の離職者についてはけっこう知られているが、基本的な基準が1年間である『季節雇用』や離職時『65才以上』の場合にも同じように適用される。
これはあまり知られていないようだが、事実だ。
2年(1年)以前への遡りは負傷・疾病・出産・育児等
ということで、離職以前2年間に被保険者期間を12ヶ月(または1年間に6ヶ月)確保できない場合は、
次の理由により連続30日以上賃金を受けられなかった期間がある(※㊟)場合に限り、その期間を2年間(または1年間)にプラスできることになっている。ただし総期間は4年が限度だ。
※㊟ 連続30日未満でも、同じ理由で複数の『賃金を受けられなかった期間』の合計が30日以上であり、その間隔が30日未満の場合は『連続30日以上』とみなす
① 疾病・負傷
この『疾病・負傷』は、業務災害か私傷病かを問わない。もちろん通勤災害でも対象だ。
② 事業所の休業
事業所の責任による休業の場合は『休業手当』が支給されるので『賃金を受けられなかった期間』にはならない(休業手当は賃金)。たとえ資金繰りが悪化して休業手当が不支給となっても、その期間は『休業手当を受けた』期間として扱われる。
従って、この対象になるのは、事業所に責任のない休業ということになる。
③ 出産
産前産後の休業期間で、出産予定日以前6週間(双子以上の場合は14週間)と出産日後8週間が対象になる。
たとえば予定日が4月15日で4月17日に出産した場合、3月5日から6月12日までだ。
④ 日本の雇用保険の対象にならない海外事業所への出向
⑤ 交流採用
国と民間企業の人事交流によって民間企業の従業員が国の期間に採用された場合
⑥ 争議行為
ストライキ・サボタージュ・ロックアウト等によって就業できなくなった場合だが、その原因が労働者側にあろうと事業主側にあっても、労働争議の場合はこれに該当する。
⑦ 国内の雇用保険任意適用事業への出向
雇用保険の適用事業所から、個人・5人未満の農林水産業等で雇用保険に任意加入していない事業所に出向した場合だが、都道府県・市町村で雇用保険の適用が免除されているところへ出向した場合も含まれる。
⑧ 労働組合の在籍専従役員
労組の専従役員には、労働法上元の企業から給与は支払われない(支払ったら不当労働行為になる)。こういう方が元の企業に『在籍』している場合はこの扱いになる。
⑨ 親族の看護
⑩ 3歳未満の子の養育
ようやく出てきたという感じだが、3歳未満の子の育児のために欠勤している場合はこれに含まれる。育児休業給付金を受給していてもだ。
⑪ 配偶者の海外勤務への同行
海外勤務する本人については、日本の雇用保険の及ばない海外支店等への出向の場合は④に書いたように算定期間の遡りの対象になるが、単なる『出張』の場合はそのまま日本の雇用保険の対象になる。
ここで、仕事を持っている配偶者がその会社を『休職』して本人に同行する場合、配偶者の被保険者期間はいったん途切れることになるので、遡りの対象になる。
季節雇用で1年以上?
季節雇用は1年間継続勤務で『季節的でない』ということで『一般』(65才以上なら『高年齢』。以下同じ)に変更になる。
ここで、季節雇用者が前項にまとめたような『やむを得ない』理由でさかのぼり期間が延長される場合は、1年以上たっても季節雇用(法律上は『短期雇用特例被保険者』という)のまま離職し、『特例一時金』をもらうことになる。
有難いことは有難いが、このあたりに矛盾はないのか。
実は、季節雇用者が一般に切替わる雇用後『1年』という期間は、前項の理由で連続30日以上賃金を受けられなかった期間がある場合は、その期間を除いて算定することになっている。以下、参考に行政手引き20451を一部引用する。
特例被保険者が、同一の事業主に引き続いて1年以上雇用されるに至ったときは、その1年以上雇用されるに至った日以後は、一般被保険者(65歳以上の場合は高年齢被保険者《以下同じ》)となる。
ただし、法39条第1項の規定により受給要件の緩和が認められる期間があった場合は、1年以上雇用されても、一般被保険者となるものではない。この場合は、受給要件の緩和理由によって賃金を受けることができなかった期間を除いた雇用期間が1年以上となった日以後に一般被保険者となる。
つまり、連続30日以上前項の理由で賃金を受けられなかった期間がある場合は、一般に切替わる日も、その期間分1年より後にずれ込むことになる。