67.『1ヶ月単位変形』は、1ヶ月以内なら可

労働時間・休日規制の 例外 11
        変形労働時間制の場合


 変形労働時間制とは、労働時間の原則『1日8時間・週40時間(特例44時間を適用できるものもある。)』を、一定の期間を平均することで達成できれば良しという制度で、次の4種類が規定されており、それぞれ所定の要件が決まっている。

 この場合は、それぞれの要件を満たせば『1日8時間・週40時間』をはみ出しても法定時間外労働とはならず、割増賃金の必要もない。
 いずれの場合も基本『週1休』の法定休日の原則が外せない点は共通している。

① 1ヶ月単位の変形労働時間制
② 1年単位の変形労働時間制
③ 1週間単位の非定型変形労働時間制
④ フレックスタイム制
 

① 1ヶ月単位の変形労働時間制


 1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の期間を平均して法定労働時間におさえれば法違反とは扱わないという制度で、交通関係や旅館・飲食業等でよく使われている。
 

・1ヶ月『以内』単位なら可


 『1ヶ月単位の…』という用語のイメージからか、1ヶ月か1ヶ月弱の期間を想定されることが多いが、先の定義を見ても分かる通り、要は期間が1ヶ月以内であればいいので、2週間でも10日でもよい。

 1週間では脱法的でダメという説もあるようだが、どうも根拠ははっきりしない。例えば曜日別に労働時間を固定し、月水金6時間・木金11時間(週40時間)としたいとき、これを2週間ずつ繰り返したものはOKだが、1週間単位ならダメというのはあり得ないからだ。
 

・特例事業は週44時間で計算


 その期間(『変形期間』という。)の総労働時間を、次に示す式に収まるように設定する。

変形期間の総労働時間 ≦ 変形期間の歴日数 ÷ 7 × 週の法定労働時間

 ここで、どうして週の法定労働時間をはっきり40時間と書かないのかというと、前の『例外5』の特例事業の場合、法定労働時間週44時間をそのまま使っていいことになっているからだ。これは変形労働時間制の中でも『1ヶ月単位』変形とフレックスの一部だけの措置。
 

・最大総労働時間は、カレンダーとは無関係


 一般的な『1ヶ月』を単位とする場合でいうと、最大総労働時間は次のようになる(小数第2位以下切捨)。

1ヶ月の日数  一般の事業   特例事業
  28日    160時間    176時間
  29日    165.7時間   182.2時間
  30日    171.4時間   188.5時間
  31日    177.1時間   194.8時間
 

 一見当たり前のようだが、これはその月のカレンダー(曜日のかたより)や事業所の勤務日とは無関係だという点には注意が必要だ。

 たとえば今年の8月、1日8時間・土日が休日の事業所では、祝日を考慮しない場合、平日が23日なので法定労働時間は184時間(8h/日×23日)となるが、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用した場合には、最大総労働時間は177.1時間に収めなければならない。

 逆に9月は平日が21日で普通の法定労働時間が168時間となるが、『1ヶ月変形』の場合は171.4時間まで認められる。

 〆日が末日でない場合は、〆日までの1ヶ月で考えてもらえばよい。
 

・就業規則で導入可


 この1ヶ月単位の変形労働時間制だけは、歴史的経緯から、『労使協定で定めて監督署に届け出る』以外に、就業規則等に定めることによっても導入できることになっている。
 

・始業終業時刻は事前に通知


 変形期間のそれぞれの日の始業終業時刻については、事前に書面で通知しておかなければならない。

 これによって、各自の始業終業時刻は確定するので、たとえ緊急やむを得ない事態が起こっても変更できない。

 従って、何かが起こって予定の労働日を休業せざるを得ない場合は休業手当の支給が必要になるし、予定より増やす場合には、増やした結果労働時間が次のいずれかに当てはまる場合には『法定時間外労働』となるので、『例外8(一策58)』の『36協定』をあらかじめ締結・届出しておくことと、割増賃金の支払いが必要になる。

① 1日8時間またはその日の所定労働時間の長い方を超える
② 週40時間(特例事業は44時間)またはその週の所定労働時間の長い方を超える
③ 変形期間の最大総労働時間を超える

 

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2023年07月11日