労働時間・休日規制の 例外8
36協定締結・届出の場合
さて、ここまで引っ張ってきてようやく36協定が出てきた。法定労働時間外や法定休日に労働させる場合に、この『36協定』は、典型中の典型だ。
原則として、例外1~7以外で1日8時間以上、週40時間(特例事業で44時間)を超えて・または法定休日に合法的に労働させるには、たとえ割増賃金を何百%払おうとも、36協定を締結・届出しなければならない。
・労働者が1人でも協定が必要
家族でやっている個人事業所で、別居の子1人を使用し、他の労働者はいないとしても(別居の子は労働者である。)、その子と親父が仲良く労使交渉をして36協定を締結・届出しないと、法定外の残業は違法になる。
・協定初日が届出期限
36協定は締結と届出がセットであり、たとえ締結していても届出をしていなければアウト(効力がない。)。届出が遅れた場合は、届出日前日までに行われた法定時間外の残業は違法になる(受理印と一緒に、そういう意味のハンコを監督署に押される。)。
他の労使協定でも届出が義務になっているものはたくさんあるので、これは一見当たり前に思うかもしれない。ただ、それら他の協定で届出しなかった・あるいは届出が遅れても、『届出義務違反』には問われるが、協定の効力そのものは有効だ。
36協定はこれらとは全く違い、届出がなければ効力はない。届出が効力発生の要件となっているのは36協定だけだ。
たとえば、毎年4月1日から1年間ごとに36協定と1年単位の変形労働時間制(後で説明します。)の労使協定を結んでいる事業所の場合、届出が4月2日以降になると、変形労働時間の方は普通に有効だが、36協定については届出前日までの分は無効になる。
幸い当方の手違いで『無効ハンコ』を押されたことはないが、社労士としてはこのハンコを押されてはコケンに関わるので、各事業所の36協定切替日には結構気を使う。
・36協定は1年更新
正確には有効期間と対象期間は別物だが、36協定には1日・1ヶ月・1年について、時間外・休日労働の上限を定めなければならないので、普通、毎年同じ日から1年間を有効期間とする。
また、協定初日が賃金計算期間とずれると時間外労働の管理がややこしくなるので、給与の〆日の翌日を協定初日とすることが多い。ただ、ある程度余裕をもって時間数の上限を設定している場合はそれほどこだわる必要はない、。
・残業を命ずる根拠は別
36協定の効力は、元々違法である時間外労働・休日労働の『合法化』(免罰効果という。要は、罰則の対象にならないということ)だけで、36協定だけで従業員に残業を命ずる根拠が与えられるものではない。残業を命ずるためには、さらに就業規則等による定めが必要である。
・18歳未満・請求があった妊産婦は対象外
なお、36協定による時間外・休日労働は、妊産婦(妊娠中及び産後1年未満の女性)が請求した場合と、18歳未満の者には適用できない。
・『時間外』は、月45時間・年間360時間が限度
さて、36協定の締結・届出で可能になる法定時間外労働だが、2019年から上限規制が課せられ、2020年4月には中小企業まで拡大された。
主な規制の内容は次の通り。
・月45時間以内・年間360時間以内
ただし、3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間・年320時間以内となる。これらは法定休日労働分は含まない。
法定時間外の残業を360時間以内にしなければならないことが法律に明記されたことから、普通の36協定を締結する繁閑の少ない会社なら、残業を月30時間以内に抑える努力が必要だろう。
いずれにしても、協定で定めた基準を超過した事実が1人でも1回でもあった場合は、調査があった場合にはアウト(最低でも是正勧告)なので、多少余裕のある協定を結んでおいた方が良い。
・休日労働を含めて単月100時間未満・2~6ヶ月平均で80時間以内
上記のような『普通の』36協定を順守していれば、『休日労働』を含めて月100時間以上とか平均80時間超とかいうことは普通起こらないと思うが、『普通の』36協定であっても休日労働を含めたこの規定は生きている。
次回、『普通の』ときでない臨時的な超過時間を定める36協定の条項のところで、この規定についてもある程度詳しく書こうと思う。
次 ― 59.残業『平均80時間未満』は合計で管理 ―
※ 誤字脱字訂正
『36協定締結・届出の場合』
1行目 法定労働時間や ➡ 法定労働時間外や
『・協定初日が届出期限』
11行目 36協定委については ➡ 36協定については '23.06.13
メインタイトル変更
36協定は届け出てナンボ ➡ 36協定は届出なければ効力なし '23.10.03