『1ヶ月単位』に限らず、変形した期間内の労働の予定に変更がなければ時間外労働は発生しない。『1ヶ月単位』の場合には、法定時間外労働扱いになるのは、前回書いたように次の場合だ。
① 1日8時間またはその日の所定労働時間の長い方を超える
② 週40時間(特例事業は44時間)またはその週の所定労働時間の長い方を超える
③ 変形期間の最大総労働時間を超える
このいずれにも該当しなければ、予定より労働時間が増えたとしても、法定時間内残業としてその分の時間単価を支払うだけでよいが、変形期間の総労働時間を、先に述べた最大総労働時間ギリギリに設定している場合は、このいずれかには必ず該当することになる。
実際の給与計算も、これに相当する時間については同じ扱いになる。ただし、期間内に年次有給休暇を取った場合等は、その時間の分だけ法定労働時間の枠が増える扱いになる。
・1ヶ月単位の変形労働時間制の残業代
ここでは、起算日が1日で変形期間が1ヶ月の『1ヶ月単位の変形労働時間制』を、その月(変形期間)の総労働時間を176時間と設定して運用した場合の計算方法を示す。
なお、特例事業ではない事業で、週の初日は定めず、法定休日を各週日曜日と特定しているものとする。予定も実際も、深夜時間帯の労働はない。
ここで『P』は所定労働時間、『㊡』は休日労働、『①~③』は法定時間外労働、『○』は法定時間内残業とする。
所定 所定外 ① ② ③ 休日
1 日 休日
2 月 8 PPPPPPPP 8
3 火 8 PPPPPPPP 8
4 水 8 PPPPPPPP 8
5 木 8 PPPPPPPP 8
6 金 8 PPPPPPPP 8
7 土 4 PPPP② 5 1
1週目44 45 0 0 1 0 0
※ 7日の5時間目は週所定労働時間超で法定時間外
8 日 休日
9 月 6 PPPPPP 6
10火 6 PPPPPP 6
11水 7 PPPPPPP 7
12木 7 PPPPPPP 7
13金 8 PPPPPPPP①① 10 2
14土 4 PPPP○③② 7 1 1 1
2週目38 43 1 2 1 1 0
※ 13日の9,10時間目は、8時間,所定労働時間超で法定時間外
※ 14日の7時間目は、週40時間超で法定時間外
15日 休日
16月 6 PPPPPP 6
17火 8 PPPPPPPP 8
18水 8 PPPPPPPP 8
19木 10 PPPPPPPPPP 10
20金 10 PPPPPPPPPP① 11 1
21土 休日
3週目42 43 0 1 0 0 0
※ 20日の11時間目は所定労働時間超で法定時間外
22日 休 日 ㊡㊡㊡ ⑶ 3
23月 6 PPPPPP 6
24火 7 PPPPPPP③① 9 1 1
25水 8 PPPPPPPP 8
26木 8 PPPPPPPP 8
27金 6 PPPPPP② 7 1
28土 4 PPPP② 5 1
4週目39 43 0 1 2 1 3
※ 22日は法定休日なので休日労働
※ 24日の9時間目は8時間超で法定時間外
※ 27日の7時間目・28日の5時間目は週40時間超で法定時間外
29日 休日
30月 8 PPPPPPPP 8
31火 5 PPPPP③③③ 8 3
5週目13 16 0 0 0 3 0
月合計176 190 1 4 4 5 3
※ 休日・①・②を除く総労働時間が182時間なので、法定労働時間177時間㊟を超える5時
間㊟分(31日の6~8時間目・24日の8時間目・14日の6時間目)が『変形期間の最大労働
時間超』で法定時間外③となる。
※ 14日の5時間目は法定時間内残業となる。
㊟ 図では省略したが、正確には31日の月の法定労働時間は177.1時間なので、14日の6時間目は、
『法定時間内残業0.1時間+ 法定時間外0.9時間』となる。
なので、『変形期間の最大総労働時間超』も、合計4.9時間となる。
・この場合の残業代の計算
この場合の実際の残業代だが、たまたま月影さんと同じ基礎賃金(1,423円/h)の場合で考える。
つまり、 ・基礎賃金 1,423円/h
・時価外労働単価 1,779円/h
・休日労働単価 1,921円/h
の場合だ。
・法定時間内 1,423円/h × 1.1h ≒ 1,565円
・法定時間外 1,779円/h × 12.9h ≒ 22,949円
・休日労働 1,921円/h × 3h = 5,763円
計 30,277円
が、この月の残業代となる。
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一部修正
㊟
31日の場合の ➡ 31日の月の '23.07.21