労働時間・休日規制の 例外7
4週4休の場合(法定休日の例外)
さて、例外6までは、自動的にそう『なる』ものが中心だったが、ここからは積極的なアクションを『する』ことが条件となる例外である。
表題の『4週4休』についての誤解の元凶は、労働基準法第35条そのものにある。
同条第1項は『使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない』と規定し、第2項で『上記の規定(第1項)は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない』としている。
これを見た多少楽観的な事業主が《月に4,5日休みがあれば、休日割増なんていらないんだな…》と思ってもムリもない面もあるからだ。
実際には、第2項の『4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者』と認められるためには、後で述べるように結構大変な準備作業と綿密な運用体制がいるのだが、これをすっ飛ばして『週1日・4週4日どっちでもいいよ』的なニュアンスを与えるこの表現は、かなり罪が重い。
何も準備もせずに『うちは4週4休だから…』とのんびり構えていて、後になってから監督署に不備を指摘され、「あんた(国)がそう言ってたじゃん。」と言ったところで容赦してくれるわけでもない。
4週4休を運用するには、4週の起点となる『起算日』を明らかにし、就業規則等に記載し、従業員に周知する必要がある。その場合は、起算日からの28日ごとに4日以上の法定休日があれば法違反にはならない。
もちろんこの場合も、1日8時間・週40時間(特例事業なら44時間。以下同じ。)の法定労働時間はそのまま揺らぐことはないので、週40時間を超えるようなら36協定と割増賃金が必要だ。
ただ、これの運用はハッキリ言って相当難しいので、安易な導入はしない方がいい。
・4週4休の起算日
たとえば2024年4月1日を起算日とする4週4休制を採用した場合、各4週の開始日は次のようになる(2024年度の場合)。
開始日
4月➡①②③④⑤⑥⑦ ⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭ ⑮⑯⑰⑱⑲⑳㉑ ㉒㉓㉔㉕㉖㉗㉘
4月 ㉙㉚ 5月➡①②③④⑤ ⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫ ⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑲ ⑳㉑㉒㉓㉔㉕㉖
5月 ㉗㉘㉙㉚㉛ 6月➡①② ③④⑤⑥⑦⑧⑨ ⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯ ⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓
6月 ㉔㉕㉖㉗㉘㉙㉚ 7月➡①②③④⑤⑥⑦ ⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭ ⑮⑯⑰⑱⑲⑳㉑
7月 ㉒㉓㉔㉕㉖㉗㉘ ㉙㉚㉛ 8月➡①②③④ ⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪ ⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱
8月 ⑲⑳㉑㉒㉓㉔㉕ ㉖㉗㉘㉙㉚㉛ 9月➡① ②③④⑤⑥⑦⑧ ⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮
9月 ⑯⑰⑱⑲⑳㉑㉒ ㉓㉔㉕㉖㉗㉘㉙ ㉚ 10月➡①②③④⑤⑥ ⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬
10月 ⑭⑮⑯⑰⑱⑲⑳ ㉑㉒㉓㉔㉕㉖㉗ ㉘㉙㉚㉛ 11月➡①②③ ④⑤⑥⑦⑧⑨⑩
11月 ⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑰ ⑱⑲⑳㉑㉒㉓㉔ ㉕㉖㉗㉘㉙㉚ 12月➡① ②③④⑤⑥⑦⑧
12月 ⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮ ⑯⑰⑱⑲⑳㉑㉒ ㉓㉔㉕㉖㉗㉘㉙ ㉚㉛ 1月➡①②③④⑤
1月 ⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫ ⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑲ ⑳㉑㉒㉓㉔㉕㉖ ㉗㉘㉙㉚㉛ 2月➡①②
2月 ③④⑤⑥⑦⑧⑨ ⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯ ⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓ ㉔㉕㉖㉗㉘ 3月➡①②
3月 ③④⑤⑥⑦⑧⑨ ⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯ ⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓ ㉔㉕㉖㉗㉘㉙㉚
3月 ㉛ 4月➡ ①②③④⑤⑥ …
表の左端の青字が各4週の開始日・28日サイクルなので、1年を約13期に分け、毎年1日か2日ずつ早まるような設定になる。
問題は、この太陰暦の出来損ないのような暦に、休日を正しく合わせていけるかどうかだ。
給与は『毎月1回以上』『一定の期日を定めて』支払わなければならないという原則がある。これはもう、労基法上の決まりというよりは、単発のアルバイトなどを除けば、日本の常識となっているといって良い。
法定休日は4週間単位でも、給与支給日はそれとはまったく別の話なので、毎月一定の期日を定めなければならない。『毎月第4金曜日を給与支給日とする』ことなどはできない。
・起算日の毎月固定は可能だが、半端が問題
起算日を『各年の初日』あるいは『各月の初日』とすることはできる。
『各月の初日』とすれば、月末〆の場合には、給与の〆日との対応もいいが、この場合は、平年の2月を除いて1ヶ月から28日を減じた1日~3日分、必ず半端が生じる。
この半端の部分はどうするかというと、4週4休に入らないので原則の『週1休』に戻る。例えば6月1日開始の4週間は28日で終わり(この間に休日4回)、次の開始日7月1日前日までの6月29日・30日が余ってしまうので、このどちらかを必ず法定休日としなければならない。
上のカレンダーの各月29日以降の謎のアンダーラインはその意味で、4週4休の他、毎月このアンダーラインのどこかが法定休日となる。結果、原則の『週1休』よりも、1年間で11日か12日法定休日が多くなる。
〆日が末日でない会社で、〆日の翌日を起算日としてもよいが、その場合は平年の3月分以外で〆日前1~3日間同じことが起こる。
この半端の1~3日は、それ以外の日に休日の振替がきかないことも注意すべき点だ。4週4休で運用している部分との振替が許されたら、それこそ4週4休の根拠が崩れる。月末29日以降に休日がない場合は、原則として末日が法定休日労働となる。
『毎月起算』方式もそれなりのリスクがあるので、頭に入れておいた方が良い。
次 ― 57. 4週4休でも残業代の違いはわずか ―
※ 訂正
『4週4休の起算日』
最後の3月分、31日が抜けてました。 '23.06.06
メインタイトル変更
簡単にはいかない4週4休 ➡ 4週4休の起算日固定 '23.10.03
※ 参考例を24年度版に変更 '24.09.17