57. 4週4休でも残業代の違いはわずか

労働時間・休日規制の 例外 7 ー続きー
       時間外・休日労働時間への影響

 

 4週4休の、休日・時間外労働時間への影響についても考えておきたい。
 ここでは、毎月1日を起算日として4週4休にしている会社を考える。

 ちょっと極端だが、10月1日からの4週のうち、最初の3週はまったく休みがなく、4週目に4日の休みがあったという(労働時間は1日8時間とする)想定だ。かなり健康に悪そうな設定だが、これはあくまで比較のためだ。

 5週目にあたる10月29日~31日のいずれか休日であれば、確かに休日労働はない。しかし、時間外労働は、最初の3週間16時間ずつ発生しているので、全部で48時間となる。

 ここで、前の月影さんと同じく基礎賃金が1,423円/hとすると、割増賃金は85,392円となる。ただし月48時間は通常の36協定の上限時間(月45時間)を超えているので、特別条項(後で述べる)付きにしなければならないレベル。特例の『特別条項』でも、年6回が限度となる。
 

・残業代はそれほど変わらない


 全く同じ働き方をしたとしても、原則の週1休の場合だと、休日労働と時間外労働が24時間ずつとなる。同様に計算すると、割増賃金合計は88,848円となる。36協定の『特別条項』は必要ない。

 また、最後の木曜を休日としたが、これは設定上4週4休の場合に合わせただけで、週1休の場合は休日にする必然性はない。

 確かに比べると月3,456円だけ4週4休の方が残業代は少なくなるが、この差は、果たしてあらゆる困難と面倒くささを跳ね除けて4週4休を取り入れた成果と言えるのだろうか。

 しかも4週4休の場合は、29日~31日のいずれかを休みにしなければ、さらに15,368円(1,921円/h×8h)の休日労働割増がつくのである。

 はっきり言って、1日8時間が所定の会社は、4週4休を導入しても、休日労働(×1.35)が時間外労働(×1.25)に切り替わるだけなので、あまり意味がないと言える。

 違いが比較的大きいのは、1日5・6時間が所定のパートさん等が主体の場合ということになるだろう。

 図にすると、下のような感じになる(青数字は法定時間外・赤数字は法定休日時間)
 

・月影さんの場合 

(基礎賃金1,423円/h・時間外単価1,779円/h・休日単価1,923円/h)

      1週目     2週目      3週目     4週目    半端
     火水木金土日月 火水木金土日月 火水木金土日月 火水木金土日月 火水木
     出出出出出出出 出出出出出出出 出出出出出出出 休休休休出出出 出出休
4週4休 8888888 8888888 8888888 0000888 88
週1休   88888 88888 88888 000888 880

          法定時間外        法定休日    残業代トータル
4週4休   1,779円/h × 48h             = 85,392円
週1休    1,779円/h × 24h + 1,923円/h × 24h = 88,848円
 

・時岡さんの場合

 同様に、1日6時間が所定の、時給の時岡さんの場合だと次のようになる。
    (時給1,200円/h・基礎賃金1,277円/h・時間外1,596円/h・休日1,724円/h)

      1週目     2週目      3週目     4週目   半端
     火水木金土日月 火水木金土日月  火水木金土日月 火水木金土日月 火水木
     出出出出出出出 出出出出出出出  出出出出出出出 休休休休出出出 出出休
4週4休 66666642 66666642 66666642 0000666 66
週1休 666666  666666  666666  000666 660

        法定時間内(所定外含む)    時間外/休日      計
4週4休    1,200円/h × 150h + 1,596円/h ×  6h = 189,576円
週1休     1,200円/h × 138h + 1,724円/h × 18h = 196,632円

この場合の違いは、月影さんのときよりは大きく、7,056円となる
 

・ぶっちゃけた話


 ぶっちゃけた話、4週4休をうちの顧問先の会社さんにもお勧めしたことはない。ここで述べたようにリスクは大きく、運用も大変なのだ。

 もちろん適切に運用しているまじめな会社もあるとは思うが、実際には休みが少ないのを指摘されたときに「うちは4週4休だから」と言ってあまり労働法に詳しくない方々を煙に巻くだけの会社もあるようだ。

 《基本は法定休日週1休だが、いざというときに休日の振替ができるように、保険として『4週4休』に組んでおく》という考え方もあり得ないことはないが、そのためだけに4週4休を実施するのは手がかかり過ぎだろう。

 

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※『ぶっちゃけた話』

最後の『変形労働時間制』の話は直接関係ないのでカットします。 '23.06.16

※ 最低賃金改定に伴う金額改定 '23.10.03

・ぶっちゃけた話
4行目 煙にに巻く ➡ 煙に巻く '23.10.24

※ 参考例を24年度版に変更 '24.09.17

2023年06月06日