54.週44時間の特例事業

 非常災害等の場合も、悠長なことは言っていられないので『1日8時間・週40時間・週1休』を超えることが許される。

労働時間・休日規制の 例外 4
         非常災害等の場合

 以下の場合だが、法定を超えたときの割増賃金の支払いは必須だ。
 

① 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合

 次のような場合が該当する。監督署の許可は必要だが、事態窮迫のためその暇がない場合は事後の届出も可。災害が差し迫った恐れがあるときの事前対応も含む。

 ・ 地震・津波・風水害・雪害・爆発・火災等の災害

 災害等による電気・ガス・水道・交通等ライフラインの早期復旧のための対応や、大規模なリコール対応が含まれる。

 ・ 事業の運営を不可能とさせるような
       突発的な機械・設備の故障修理・保安やシステム障害の復旧

 通常予見される部分的修理等は認められないが、サーバー攻撃等システムダウンへの対応は含まれる。

 ・上記について、他の事業場からの協力要請に応じる場合
 

② 公務のため、臨時の必要がある場合

 詳しくは『52.地方公務員は労基法の8割?適用』を参照願います。
 

労働時間・休日規制の 例外 5
      1週44時間の特例事業の労働者

 『特例事業』とは、事業場ごとに常時10人未満の労働者を使用する以下の事業について、公衆の不便を避けるため、法定労働時間が週44時間とされているもの。
 1日8時間・週1休については、ほかの事業と同じだ。

① 商業
② 映画演劇業(映画の製作を除く)
③ 保健衛生業
④ 接客娯楽業

 これらは当然、所定労働時間も週44時間まで認められる。
 月~土7時間20分というのも可能だが、一般的には、昭和の名残か月~金8時間で土曜日4時間という場合が多い。

 所定を1日8時間・週40時間にしている特例事業所で、たまたま土曜日に4時間残業だったとしても、その4時間分の残業代には割増は不要だ(基礎賃金×4でよい)。

 ただ、これらの業種でたまにあるのが、昔から少人数でやってきたものが、徐々に規模を拡大し、10人以上になってもそのままというものだ。10人以上になったら就業規則が必要ということは覚えていても、特例が不適用になることは意識していない方がいるので注意が必要だ。

 特例事業の場合の、最大の年間所定労働時間を計算してみると、

平年)  365日 ÷ 7日/週 × 44時間/週 = 2294.285…時間
閏年)  366日 ÷ 7日/週 × 44時間/週 = 2300.571…時間

となるが、これは法律上の最大値なので、実際にこの時間が年間所定労働時間ということはあまりないだろう。
 

・ 特例事業と一般事業の給与の比較

 ここで、特例事業の場合とそれ以外の一般事業(特例事業に対して『一般事業』という用語はありません。今回に限って便宜上、特例事業以外を『一般事業』とさせていただきます。)の場合で、給与がどの程度違ってくるのか比較してみる。

 もちろん、基本給が同じ月給者なら、所定労働時間が週40時間の場合と44時間の場合で給与が同じになるのは当たり前だ。給与水準が同様でなければ比較の意味はない

 ここでは、久々に月給の月影さんに登場してもらい、月影さんと同じ給与水準(基礎賃金)で、この2023年6月に週44時間働いた場合(月~金8時間・土曜日4時間とする)、3通りの場合で給与がどうなっていくか比較した。

 ちなみに、元々の月影さんの給与は、定額の給与は259,700円だった。
 そのうち職務関連給与は232,500円。他の手当は27,200円。年間所定労働時間が1960時間で基礎賃金は1,423円/hである。
 このケースでは、結果は次の通り。

 所定労働時間・事業種別  定額給与     残業代    総支給額
㋐ 週40時間の一般事業   259,700円   28,464円   288,164円
㋑ 週40時間の特例事業   259,700円   22,768円   282,468円
㋒ 週44時間の特例事業   284,763円      0円   284,763円
 詳しくは以下の通りだ。

㋐ 所定労働時間 週40時間の一般事業

 単純に4回の土曜日(6月3日・10日・17日・24日)の計16時間分が法定時間外労働分になるので、その残業代
    1,423円/h × 1.25 × 16h ≒ 28,464円

 この場合の総支給額は、259,700円+28,464円 で 288,164円
 

㋑ 所定労働時間 週40時間の特例事業

 4回の土曜日計16時間分が法定内の所定時間外労働となるので、一般的には(『給与の一策 10.時給が基礎賃金とは限らない』参照)残業代が
    1,423円/h    ×   16h = 22,768円

で、一般事業の場合より5,696円低くなる。
 要は、割増がつかない分、残業代の単価が1時間あたり356円(≒1,423円×0.25)低下するので、低下分が5,696円(356円/h×16h)となったものだ。

 この場合の総支給額は、259,700円+22,768円 で 282,468円
 

㋒ 所定労働時間 週44時間の特例事業

 時間外労働は法定外も所定外も一切ないので残業代は発生しない。ただ、給与水準が同じ仮定なので、年間所定労働時間を2172時間とすると、職務関連給与は

1,423円/h × 2172h/年 ÷ 12月/年 = 257,563円  となる。他の手当を加えると、

 この場合の総支給額は、257,563円+27,200円 で 284,763円

 一般事業の場合より3,401円の低下となる。
 

・特例事業の年間所定労働時間

 最後に、所定労働時間が週44時間(月~金8時間・土曜日4時間)で祝日が休日の特例事業所の、労働日数と年間所定労働時間を、例によって年度ごとに計算してみた。

 年度    労働日数  平日    土曜   年間所定労働時間
2023年度   297日 ( 246日 + 51日 )  2172時間
  24年度   297日 ( 247日 + 50日 )  2176時間
  25年度   297日 ( 246日 + 51日 )  2172時間
  26年度   297日 ( 245日 + 52日 )  2168時間
  27年度   298日 ( 247日 + 51日 )  2180時間
  28年度   297日 ( 245日 + 52日 )  2168時間
  29年度   296日 ( 248日 + 48日 )  2176時間
  30年度   297日 ( 247日 + 50日 )  2176時間
  31年度   298日 ( 248日 + 50日 )  2184時間
  32年度   296日 ( 245日 + 51日 )  2164時間

 

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2023年05月26日