₁₄₃.社会保険料 会社負担は51.6%程度


【2025年度版】'25.04.11


労使の社会保険料 平均負担額は?



 社会保険料は労使が負担し事業主が納付することになる。今回は労使双方の社会保険料負担について考えてみる。

 ここでの『社会保険料』とは広義のそれで、労働保険料も含める。また、今回はなるべく実態に沿った形で考えたいので、一応統計資料を基にする。
 

・ 全国平均年収は460万円

 
 国税庁『民間給与実態統計調査』によると、2023年の全国の給与所得者の平均年収は男性569万円・女性316万円、全体で460万円となっている。
 

・ 賞与はそのうち平均79万2776円(2.5ヶ月分)

 
 また『賃金構造基本統計調査』によると、同'23年の賞与は平均夏39万7129円・服39万5647円で計79万2776円なので、年収の約17.2%・月給の2.5ヶ月分ということになる。
 2003年から、賞与についても給与と同じ保険料率を適用する『総報酬制』となっている。

 とにかく、この年収『460万円、内賞与79万2776円』を基準に考え、賞与を夏冬2回同額と仮定すると、

・ 平均月収31万7269円 ・平均賞与39万6388円 × 2

ということになる。この方1人について労使の社会保険料負担がいくらになるか、それぞれ計算してみる。
 

労災保険料は1万1450円~40万3040円

 
 労災保険料は、企業の従業員に対する損害賠償責任保険という性格から、全額事業主負担となっていて従業員の負担はない。

 また、労災保険料率は'24年に改定があったが、業種により違いが非常に大きいことも特徴の1つだ。ここでは一部の業種になるがその保険料率と、全国平均年収458万円の方を雇用した場合の年間の労災保険料を示す。

 労働保険料は、申告書で給与総額の1,000円未満を切捨てたものに千分率表記の料率をかけて記載するので、これにならってここでの保険料率も千分率(‰)表記とした。

林業                   52‰     238,160円
建設業(機械取付・隧道等を除く)    9~15‰   41,220円~68,700円
食料品製造業               5.5‰      25,190円
交通運輸事業               4‰       18,320円
農業又は海面漁業以外の漁業        13‰       59,540円
清掃・火葬又はと畜の事業         13‰       59,540円
卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業     3‰       13,740円
その他の各種事業             3‰       13,740円

 ちなみに、現在の労災保険率の最大・最小は、

(最大)金属鉱業・非金属鉱業・石灰工業  88‰      403,040円
(最小)通信・出版・金融・保険・出版等  2.5‰     11,450円

になる。自動車の任意保険のように最大40%料率を上げ下げする『メリット制』が適用になる場合があるが、今回は考慮しない。また建設業は工事の種類ごとに分けて請負金額から給与額を求めるのが一般的だが、これも割愛する。
 

一般拠出金は91円

 
 労働保険料ではないが、これと同時に徴収されるのが『一般拠出金』だ。これはアスベスト被害者救済のため2007年から徴収しているもので、現在の料率は0.02‰(端数切捨て)となっている。これは業種による違いはない。この場合は、

4,580,000円 × 0.02‰ = 91円

になる。これについても従業員の負担はない。
 

雇用保険料は一般事業で
      従業員2万5300円・事業主4万1400円

 
 雇用保険料については用途が2つにはっきり分かれている。
 ザックリいうと、1つは失業時や育児休業など従業員への直接給付の原資となる部分で、この部分は労使で折半する。もう1つは雇用の維持・促進等の手立てをとった事業主への助成金等(『2事業』という)の原資となる部分で、これは事業主が全額負担する。

          ┏━━  直接給付分  ━━┓
               従業員  事業主  助成金等分 事業主計 納付計

一般の事業      11‰ ( 5.5‰ + 5.5‰ ) 3.5‰    9‰  15.5‰
農林水産・清酒製造  13‰ ( 6.5‰ + 6.5‰ ) 3.5‰  10‰  17.5‰
建設の事業      13‰ ( 6.5‰ + 6.5‰ ) 4.5‰  11‰  18.5‰

        保険料負担   従業員  ┗━━━ 事業主 ━━━━┛

 460万円の年収なら、これに当てはめると労使双方の負担額は

            従業員    事業主    納付額

一般の事業      25,300円  41,400円  66,700円
農林水産・清酒製造  29,900円  46,000円  75,900円
建設の事業      29,900円  50,600円  80,500円

となる。なお農水産業でも、牧場・養鶏・養豚・内水面養殖事業等は『一般の事業』として雇用保険料を計算する。
 

健康保険料は23万8780円ずつ(北海道)

 
 月収が31万7269円の場合、普通は標準報酬が32万円なので、これに保険料率をかけて折半すれば各々の月々の負担額が出、これの12倍が年間給与分の負担額になる。協会けんぽの場合なら北海道で

標準報酬  保険料率  月額保険料  ÷2  折半額  ×12  年間負担額(給与分
32万円 × 10.31% = 32,992円  ➡  16,496円  ➡  197,952円

になる。東京(9.91%)なら190,272円、沖縄(9.44%)なら181,248円だ。

 賞与は夏冬39万6388円ずつなので、標準賞与額( ー ₁₃₉.賞与にかかる社会保険料には上限がある ー )は各々39万6000円ずつになる。したがって保険料は協会けんぽ北海道で

                    ÷2  折半額  ×2 年間負担額(賞与分
39万6000円 × 10.31% = 40,828円 ➡ 20,414円 ➡ 40,828円

となり、同様に東京なら39,244円、沖縄なら37,382円だ。

 ということで給与分と賞与分を合計すると、労使双方の健康保険料年間負担額は協会けんぽの場合、北海道で23万8908円、東京で22万9516円・沖縄で21万8630円ずつになる。
 

介護保険料は3万6824円ずつ

 
 40~64才の介護保険料も労使折半で、健康保険の標準報酬や標準賞与額から算定する。介護保険料は'25年度で1.59%だが、協会けんぽの『保険料率表』では健康保険料と合わせた料率で計算してあるので、実際には賞与についても端数の扱いの関係で、介護分を合わせた健康保険料率で計算した方がいい。

 ここでは前項と同様に計算すると、年間介護保険料の労使の負担は給与分30,528円・賞与分6,296円で合計36,824円ずつになる。地域の差はない。
 

厚生年金保険料は労使42万3828円ずつ

 
 厚生年金保険料は18.3%に固定されているので、同様に計算すると、

給与分     320,000円 × 18.3% ÷2 ×12 = 351,360円
賞与分     396,000円 × 18.3% ÷2 ×2   =   72,468円

で、労使各々423,828円ずつの負担となる。
 標準報酬の下限が8万8千円・上限が65万円になっているのと、標準賞与額の上限が1回150万円になっている点が健康保険との相違点なので、そこだけ気をつければあとは同じだ。
 

子ども・子育て拠出金は事業主のみ1万6676円

 
 もう1つ支払義務のある社会保険料として『子ども・子育て拠出金』がある。これは『厚生年金の』標準報酬の0.36%を児童手当の原資の一部に充てるもので、事業主が全額負担する。
 説例の場合は給与分13,824円・賞与分2852円で合計16,676円になる。
 

年間負担 従業員は72万円・事業主は77万円程度(北海道)

 
 結局、全国平均年収460万円の従業員(40~64才)を1年間雇用した場合、労使の負担する社会保険料等は、以下のように北海道の一般の事業で1人につき従業員70万2566円(収入の15.34%)、事業主74万8549円(給与の16.34%・法定福利費)を負担し、事業主が145万1115円を納付するという結果になる。

            従業員    事業主      合計   (対給与比)

労災保険料               13,800円     13,800円 ( 0.3% )
一般拠出金                92円      92円 ( 0.002% )
雇用保険料        25,300円    41,400円     66,700円 ( 1.45% )
健康保険料      238,780円  238,780円   477,560円 ( 10.31% )
介護保険料        36,824円    36,824円     73,648円 ( 1.59% )
厚生年金保険料    423,828円  423,828円   847,656円 ( 18.3% )
子ども・子育て拠出金         16,676円     16,676円 ( 0.36% )

合計         702,566円  748,569円  1,451,115円

 結局、社会保険料の会社負担は51.6%・従業員が48.4%程度になる。

 

次 ー ₁₄₄.年収100万円の、税と社会保険料 ー

 

※ 加筆
雇用保険料は一般事業で…
1行目  2つに  ➡  用途が2つに
10行目  保険料負担対象者を追加     '24.05.25
メインタイトル変更
社会保険料 労使の負担は? ➡ 社会保険料 会社負担は51.6%程度
サブタイトル追加  労使の社会保険料 平均負担額は?
最終行を追加
健康保険料は22万8908円ずつ
2行目  挿入 協会けんぽの場合             '24.06.01

2024年05月14日