₁₄₄.年収100万円の、税と社会保険料



 給与から問答無用で控除される税金と社会保険料。納税は国民の義務と言われればその通りだし、社会保険は民間の保険と比べればはるかに有利な『保険』の一種。老後やいざというときの備えとなるものなので単純に安ければいいとも言えないが、給与明細を見るたびにその負担の多さにうなだれる方も少なくないのではないか。

 ここでは、そのことをしっかり頭に入れたうえで、それぞれの年収の場合に『超ザックリ』と、税と社会保険料がどの程度になるか考えてみる。
 あくまで『超ザックリ』なので、特別な事情がある場合は別の結果になることも考えられる。きちんと算定したい場合はそれぞれの専門家(税なら税理士・社会保険料なら社労士)に聞いた方がいい。

 ただ、あまり話を広げすぎると収拾がつかなくなるので、今回は給与所得者の場合だけで考える。本人の年齢は40才~59才と設定する。
 

年収100万円の場合

 
 年収100万円というと月平均8万3333円になる。
 この年収の方の置かれている状況は様々だが、年間ほぼ均等に働き毎月この程度の金額という場合は、社会保険適用拡大対象の会社('24.10.1から51人以上)でも8万8000円以下なので普通は(狭義の)社会保険には入っていないはずだ。従って狭義の社会保険料も発生しない。

 社会保険料としては、雇用保険加入の場合で年間6000円(農業・建設業なら7000円)だけになる。

 ただし、雇用保険の加入要件として所定労働時間週20時間以上というのがある。月平均だと87時間だ。年間平均的に働いて年収100万円という場合は、最低賃金と仮定しても雇用保険加入の対象外となることが多い。

 月87時間だと年間1044時間になるので、北海道の最低賃金時給960円で算定しても年収100万2240円になる。100万円なら通常は雇用保険にも加入できない。北海道より最低賃金が低い地域でないと雇用保険の加入要件を満たさないのだ。

 もっとも、所定労働時間が週20時間以上あれば雇用保険には加入できるので、たまたま実際の労働時間がそれより少なくなって年収が100万円を下回るということはある。

 所得税も非課税の通勤手当等を除いて年収103万円までは徴収されないので、税金としては住民税の均等割5000円だけだ。
 均等割の徴収対象は地域によっても違い、93~100万円を超えたところから対象になる。田舎は93万円超で対象になるが、都市部在住なら100万円までかからない。
 

・家族の扶養に入っている場合

 
 国民年金保険料は、64才以下の厚生年金加入の配偶者の扶養に入っている場合は『第3号被保険者』として不要だが、それ以外は20万4000円程度必要になる。ただし、配偶者・世帯主の所得によっては全額・一部免除の対象になる。この辺はどこかで詳しくまとめる予定だ。
 

・独立生計の場合

 
 独立生計の場合は国民健康保険料(4万円程度)と国民年金保険料20万4000円程度の支払いが必要になるが、国民年金保険料についてはこの年収ならきちんと手続きを行えば全額免除の対象になる。ただし、その期間分は将来の年金支給額が本来の半額になるので、あとで余裕ができたとき(10年以内)に追納しておいた方がいい。
 

年収100万円でも社会保険加入の場合

 
 1年のうち一定の期間に集中して働いて年収100万円という場合、社会保険加入になる場合がある。
 

・ 季節雇用の場合

 
 東北・北海道に多い『季節雇用』の場合、予定期間が4ヶ月を1日でも超えると雇用保険はもちろん社会保険の対象になる。たとえば週30時間・月給12万5000円で5月から12月まで働いた場合、この8ヶ月間の社会保険料は16万8000円程度になる。

 この場合、この方が元々配偶者や世帯主の社会保険の扶養に入っていたとしても、働いている期間は本人の加入は必須になる。もちろん個人経営の事業所なら、4人以下・5人以上でも農林水産業やサービス業で、事業所自体が社会保険に入っていない場合は除く。

 社会保険は公的保険なので、原則、逆選択(対象者が加入するかどうかを選択すること)は認められていない。だからどうしても加入したくなかったら、加入要件を満たさないようにするしか方法はない。

 ただこの例では、働いていない1月から4月までは家族の社会保険の扶養に入れるし、配偶者が要件を満たしていれば第3号被保険者として、国民年金保険料も必要ない。

 また、季節雇用の失業の際に13万円程度の一時金(特例一時金)が出るが、これは収入とはみなされないので、一般的な失業等給付とは違って社会保険の扶養の障害にはならない。

 この方は、扶養控除等申告書を提出していても月々1000円程度ずつ所得税が給与から引かれる('24年に関しては定額減税があるので6月以降の控除は普通ない。)が、年末調整か確定申告で全額必ず戻ることになる。

 働いていない4ヶ月間の国民年金保険料は6万8000円程度になるが、前述した通り全額免除可能だ。ただし、国民健康保険料は別途必要になる。働いていた期間の健康保険の『任意継続』も可能だが、この場合は割高になることが多いはずだ。

 他の親族に扶養されていない場合は、独身でもこの年収では資産がある方を除いてかなり生活が厳しいはずなので、どうしてもこの4ヶ月間無収入になる場合は他の福祉施策も視野に入れた方がいいだろう。

 

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※ 一部訂正
・家族の扶養に入っている場合 1行目
厚生年金加入者の  ➡  厚生年金加入の配偶者の  '24.05.21

 

2024年05月17日