7.総支給金額を確定する

 

 こうして得た割増単価に、〆日まで1ヶ月の時間外労働時間数・休日労働時間数などをかけて、それぞれ月の割増賃金額を確定していくわけだが、この段階では、それぞれの合計時間数を、時間単位に30分未満は切捨て30分以上は切上げ(以下、時間のこうした端数処理についても『29捨30入』とかでなく『四捨五入』と表記します。)できる。
 また、算出された残業代の円未満の端数も四捨五入可となっている。
 

・月影さんの1ヶ月

 〆日は末日・休日は土日・法定休日は日曜日・月~金 9:00~18:00勤務(休憩1時間)とする。
 この月の最初の1週間、月影さんの勤務状況は次のようだったとする。

     勤務時間   法定労働 時間外   時間外  休日労働 深夜割増
             時間内 (8h/日超)(40h/週超)

1日(日)8:00~10:42                 2h42m
2日(月)9:00~18:41 8h    0h41m
3日(火)9:42~19:47 8h    1h05m
4日(水)9:00~22:32 8h    4h32m             0h32m
5日(木)9:00~16:55 6h55m
6日(金)9:00~18:00 8h
7日(土)9:00~12:15 1h05m       2h10m
       計    40h    6h18m  2h10m  2h42m  0h32m

 若干ストーリーを説明すると、

 日曜は、忙しくなる今週の仕事の準備のため休日出勤。
 月曜は41分残業。
 火曜は用事で42分遅刻したので(事前に申告済)、その分終業時刻の18時を超えて18時42分まで(1日8時間まで)通常勤務扱い。欠勤扱いはなし。その後は残業扱い。
 水曜は特に忙しく、深夜まで残業。
 木曜は疲れがたまって1時間ほど早退。
 金曜は通常勤務。
 土曜は所定休日の勤務。

 木曜の労働が終業時刻1時間5分前に終わっているので、土曜の所定休日については、週40時間となる10時05分までは割増は発生しない。その後は法定時間外労働となる。

 月初めは忙しかったが、幸い8日以降は時間外・休日労働・深夜労働は全くなく、通常の勤務だったとする。

 この場合、この月の割増賃金は、前の端数処理通達⑤『1ヶ月の時間外労働・休日労働・深夜労働について、それぞれ合計時間の1時間未満の端数を四捨五入する』(のは可)を行なうと、以下の計算になる。
 

・月影さんの1ヶ月の割増賃金総額

法定時間外勤務 8h28m ⇛ 8h   1,779円/h × 8h = 14,232円
休日労働    2h42m ⇛ 3h   1,921円/h × 3h =  5,763円
深夜割増    0h32m ⇛ 1h    356円/h × 1h =   356円

 これで、月影さんのこの月の『総支給金額』は出るので、一応まとめておく。

 ★月影さんの1ヶ月の総支給金額

・基本給  180,000円  ・住宅手当 15,000円  ・時間外残業 14,232円
・役職手当  30,000円  ・家族手当  8,000円   ・休日残業   5,763円
・資格手当  17,500円  ・通勤手当  4,200円   ・深夜割増    356円
・皆勤手当   5,000円              (残業手当計) 20,351円
           『総支給金額』 280,051円

 ここまで読んでもらうとわかる通り、端数処理通達③『1時間当たりの賃金単価や…の1円未満の端数を四捨五入する。』の後、通達⑤『1ヶ月の時間外労働…の1時間未満の端数を四捨五入する。』を行なうと、割増賃金1ヶ月総額は必ず整数となるので、その場合は、通達④の『1ヶ月の時間外労働…の1円未満の端数を四捨五入する。』は、必要なくなる。
 

週の月またぎは翌月確定

 さて、上記の例は、給与計算期間の境目と週の境目がぴったり重なるいささか都合のいい例だった(他にも色々強引な設定はあったが)。また、この例では法定休日は、日曜日固定なので、日曜日だけで法定休日労働の有無や時間は確認できる。

 しかし、1日の法定労働時間は8時間なので、たとえ連日残業したとしても、週40時間超の時間外割増は、その週の6日目か7日目にならなければ確定しないし、休日労働も、『週の最終の休日(ない場合は最終日)が法定休日』等、固定していない場合は、その週が終わるまで確定できない。

 週40時間超の時間外労働や法定休日労働は週を単位として発生するので、週が賃金計算期間をまたぐ場合には、確定していない週40時間超労働や休日労働分は、次回で清算することになる。

 また、逆に、その月の賃金計算期間の初日(末日〆なら1日)の週が前月にまたがっている場合には、前月にさかのぼって、その最後の週の労働時間や休日を確認し、その週の40時間超や休日割増を確定しなければならない。

 

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2022年11月08日