80.休憩時間は風のように自由?



休憩の適用除外
 

 前回触れなかったが、6時間超45分・8時間超1時間といった休憩のルールそのものが適用除外となる場合もある。ほぼ「53.『管理職=管理監督者』ではない」で紹介したのと同様の、次の方々だ。
 

 ① 第1次産業(林業を除く)に従事する労働者
 ② 管理監督者
 ③ 機密の事務を扱う者
 ④ 監視・断続的労働に従事する者(監督署の許可が必要)
 ⑤ 高度プロフェッショナル制度の対象者


 ①~④の方々については労働時間の規制が適用除外となっているのと同様、休憩の規制のついても適用除外となっている。

 ⑤の高度プロフェッショナル制度の対象者も、枠組み上は『労働時間規制の除外』に含めるのが普通だが、この方々については「66.労働時間概念がない『高プロ』制度」で触れたように、『健康管理時間』として、実質的には労働時間に関係した種々の条件があるので、実務上、労働時間の適用除外グループに入れなかった。
 

『自由利用の原則』の適用除外

 
 『使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない』(労基法34条3項)ことになっているのは前回も触れた。
 この規定が適用除外となっているのは次の方々だ。
 

 ① 警察官
 ② 消防吏員
 ③ 常勤の消防団員
 ④ 児童と起居を共にする次の方々
     a)児童自立支援施設の職員・居宅訪問型保育事業における家庭的保育者
     b)乳児院・児童養護施設・障害児入居施設の職員(監督署の許可を要す)
 ⑤ 坑内労働の場合


 この辺は、ほぼ説明抜きで理解してもらえると思う。

 ちなみに、『児童自立支援施設』とは、

 『不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所したものについて相談その他の援助を行うことを目的とする施設』

であり、全国に60ヶ所程度ある。

 『児童養護施設』は、

 『保護者のいない児童(中略)虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所したものに対する相談その他自立のための援助を行うことを目的とする施設』

で、全国に590ヶ所程度ある。
 

外出許可や電話対応は?

 
 では、これ以外の方については、休憩の利用は完全に風のように自由かというと、合理的な理由があれば、ある程度の制約はやむを得ない。
 

・外出許可制は?

 たとえば、事業所内で昼食・休息など休憩の目的が十分達せられる場合に、『外出を許可制』にすることは『必ずしも違法にはならない』とされる。

 ここで『許可制』ということは許可しない場合があることになるが、不許可の場合はその客観的・合理的理由を説明できなければならない。
 それがムリなら『届出制』とすべきだろう。
 

・制服での外出は?

 
 他にも、休憩時間だからといって制服のままその辺をほっつき歩かれては困るという場合もある。厳重な衛生管理を必要とする仕事・精密機械を扱う仕事は自明だが、これらは『制服』というよりどちらかというと『作業衣』と言った方がいいので、ここでは別とする。

 制服を着ていれば、社外の人には休憩中とは判断できない。その辺で買い物をしたりパチンコ屋に出入りしたりしていればサボっていると思われる恐れはある。

 この辺は感覚の問題で地域性もあると思うが、『ルーズな会社』と見られイメージダウンにつながるというのも常識の範囲内で理解できる。

 休憩時間、制服での外出を禁止するのは合理的理由がある場合が多いと思う。

 出勤・退勤時の着替えについては労働時間か否かという問題があるが、ここでは事業所内で十分休憩を満喫できる環境下、従業員の都合で外出する場合なので、一般的にはこうした問題はないだろう。
 

・『電話来たら頼むネ』はダメ

 
 よく見聞きするのが休憩時間の電話対応だ。休憩時間中に電話対応をさせるのは、その時間内については従業員が

『電話が来たら直ちに対応せよ』という指揮命令下に置かれている

と客観的に評価されるので労働時間になる。つまり、休憩を与えたことにはならない。

 これは、例えば引越し業者の職員が、別到着するトラックを待っているのと同じ『手待ち時間』だ。つまり上の場合は休憩時間全てが『手待ち時間』ということになる。

 手待ち時間は労働時間とハッキリしているので、そのとき電話があろうがなかろうが、休憩は全くなかったことになる。

 ただし、極めてまれな話になると思うが、もしも十分に休憩がとれる場所・状態で、かつ、休憩中に電話が来ることが皆無に等しい(どういう会社だ?大丈夫か?)などの事情がある場合には民事の場合には、他の判例から類推して労働時間とされない可能性もないわけではない。

 ただ、そんな偶然をあてにするわけにはいかないので、休憩時間は従業員に一切の指示を与えないようにすべきだ。
 

・『勤務時間の途中』に例外はない

 
 前にも書いたが、休憩の原則のうち『勤務時間の途中』というのは一切の例外がない。

 『31.教員の労働条件』でも書いたが、そのせいで私の教員時代には、勤務時間終了10~5分前から45分間休憩を入れる学校が多かった。これも脱法的といえばそう言えるかもしれないが、同様の事情でこうするしかない事業所もあるかもしれない。

 

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※ メインタイトル等変更
休憩時間はFREEDOM? ➡ 休憩時間は風のように自由?
外出許可や電話対応は?
1行目 完全に自由 ➡ 完全に風のように自由     '23.10.03

 

 

2023年09月05日