81.年少者(未成年者)の労働制限



   

 労働基準法は労働者保護の法律だが、年少者はその中でも特に保護を必要とするため、成人の労働者以上に厳しい規制がかけられている。

 従来はこの規制は、13才未満・15才到達年度末までの『児童』・18才未満の『年少者』・20歳未満の『未成年者』に区分されていたが、2022年4月の成人年齢引下げで、『年少者』と『未成年者』の区別はなくなった

 今回は、法律を引用する関係上、『年少者』と書いたり『未成年者』と書いたり混乱した表現となってしまうが、ここでは全く同じ意味なので、ご了承ください。
 

変形労働時間制は?

 
・フレックスタイムは適用できない

 
 フレックスタイム制は一切使用できない。
 これは、発達段階を考慮したものだろう。
 

・他の変形は、成人より条件が限定される

 
 他の変形労働時間制についても、成人と同じには適用できない。
 ただし、成人に対する規制に加えて、次の条件を満たせば変形労働時間制が適用できることになっている。

 1週間40時間以内の範囲で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内にし、他の日の労働時間を8時間超(10時間が限度)とすること

 1週間48時間以内・1日8時間以内の範囲で、1ヶ月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制を適用すること

 ①で言うと、週1休(適法な4週4休は可)は当然だが、『4時間以内』には『0時間』も入るので、週休2日としたうえで次のような運用は可能だ。この場合は、土曜の労働時間を0時間に設定したことになる。

 日曜  月曜   火曜   水曜   木曜    金曜   土曜
 休日  6時間  6時間  8時間  10時間  10時間   休日

 ②なら、1ヶ月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制の基準をクリアしたうえで、その中の各週について『週48時間以内・1日8時間以内』とすれば、1ヶ月単位・1年単位の変形が可能になる。
 

法定時間外・休日・深夜労働は禁止

 
・36協定による法定時間外労働・休日労働は適用できない

 
 これは説明不要だろう。年少者については、1日8時間・週40時間・週1休(又は4週4休)の原則から外れることはできない。
 

・深夜労働は禁止

 
 22時から5時までの深夜労働は原則禁止される。例外は、

  ・第1次産業
  ・保健衛生の事業
  ・電話交換の事業
  ・非常災害の場合
  ・交代制による16歳以上の男性の場合
  ・交代制で労働させる場合、22時30分まで(所轄労基署長の許可が必要)

となっている。
 ここで『22時30分まで』という半端な時刻が目を引く。

 これは、深夜労働に入らない朝5時から8時間労働を2交代させると、早番が5時から13時45分まで・遅番が13時45分から22時30分までとなるので(休憩を各々最小の45分とする。)、この時刻までは所轄労基署長の許可を条件としてOKとなったもの。
 当然、『遅番』の22時から30分間は深夜割増が必要だ。

 ついでに、めったにいないと思うが(18才未満ですから…)、管理監督者の場合は『例外』にないので禁止だ(深夜労働は不可)。
 

戸籍証明書の備え付け

 
 年少者を雇用する場合には、年齢を証明する戸籍証明書を備え付けておかなければならない。この場合は年齢が証明できればいいので、個人の住民票や住民票記載事項証明書でもいいことになっている。
 

未成年者との労働契約

 
・未成年者に代わって労働契約を結んではダメ!

 
 労働基準法58条1項は『親権者又は後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結してはならない』と規定する。これは、時代劇によく出てくるような『娘の身売り』のような前近代的な悪弊を排除するための規定だ。

「ウチの息子、中学卒業してブラブラしてるんだけど、どこかにいい仕事ないかい?」
「ああ、今ちょうど人手が足りないから、ウチで雇ってやるよ。」
「有難い。明日から行かせるよ。よろしく頼む。」

 今のご時世こんなことはないと思うが、こういうのはダメということ。
 

・有効な労働契約には保護者の同意が必要

 
 では、保護者抜きで本人と契約すればいいかというと、今度は次の58条2項で『親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利と認める場合においては、将来に向かってこれを解除することができる』ことになっている。

 これは、経験不足やヤケクソ・思い込み等で、未成年者が変な労働契約を結んでしまったときの対策だ。親権者等が『本人に不利』と認めれば、労働契約を解除できる。クーリングオフと違って期間の限定はない。

 つまり、親権者抜きには完全な労働契約は結べない。
 

・保護者の同意を得て本人と契約

 
 じゃあ、どうしたらいいかというと、民法に戻る。

 民法5条1項には、『未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない』とある。法定代理人とは、普通保護者(正確には親権者)だ。

 要するに、未成年者と有効な労働契約を結ぶには、保護者の同意を得て(文書で同意書をもらうのが望ましい。)、本人と契約するしかない。

 

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※ 訂正です

81.年少者(未成年者)の労働制限
3行目  15才到達時 ➡ 15才到達年度末

・深夜労働は禁止
9行目  半端な時間 ➡ 半端な時刻

・有効な労働契約を結ぶには保護者の同意が必要
2行目  労働契約が労働契約が ➡ 労働契約が
2行目  認められる ➡ 認める         '23.09.12

2023年09月08日