前回の他に、18才未満の年少者(未成年者)に就かせてはならない業務もあるのは広く知られている通りだ。今回はそれらを見ていくことにする。
18才未満は就業不可!
・坑内労働
これは、炭鉱夫だけでなく、事務や軽易な仕事であっても『坑内』というだけでアウト。
・重量物を扱う業務
人力のみで重量物を扱う作業については、次の重量制限がある。
制限荷重
断続作業 連続作業
16才未満 男性 15kg 10kg
女性 12kg 8kg
16・17才 男性 30kg 20kg
女性 25kg 15kg
ここで、成人の場合はどうかということも気になると思うので、(いつものことで)少し話がずれるが、以下に示す。
18才以上 男性 (55kg) (体重の40%)
女性 30kg 20kg
ここで、成人女性の継続20kg・断続30kgというのは『女性労働基準規則』による。
実は、成人男性の制限は法律で明示されていない。ただ『職場における腰痛予防対策指針』で『体重のおおむね40%以下とする』ことが努力義務となっているのでカッコ付きで書いた。
これだけでは、50kg未満の成人男性の場合、成人女性の基準(20kg)を下回るように見えるが、同指針では『満18才以上の女子労働者では、さらに男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとすること』(要は体重の24%程度)となっているので、逆転現象は生じない。
特定の目的を持った(この場合では腰痛予防)『指針』が、より一般的な法律より厳しい基準になるのは当たり前なので(そうでなければ指針を発出する意味がない)、どうしても多重基準になることが多いが、この場合は『指針』に沿っていれば法違反になることはない。
いずれにしても、年少者や女性の過重限度はかなり低いので、小分けにできるものは分ける・機械を使うなどの工夫も必要な場合があるだろう。
年少者の危険有害業務はダメ
以下の業務は、年少者の安全・衛生・福祉に有害であるとして禁止されている。代表的なものを以下に示す。
・安全上の有害業務
・ボイラー・クレーン・デリック・エレベーター(耐荷2t以上)の運転
・緩燃性でないフィルム上映
・(最大積載量)2t以上のトラックの運転
・動力巻上げ機等の運転
・充電電路(直流750V・交流300V超)や支持物の点検・修理・操作
・クレーン・デリック等の玉掛け(補助者を除く)
・土木建設機械等の運転
・丸この盤(直径250mm以上)等への木材供給
・動力プレス機械金型等の調整・掃除
・岩石・鉱物の破砕・粉砕機の材料供給
・土砂崩壊の恐れのある場所・深5m以上の地穴内の業務
・墜落の恐れのある場所(高さ5m以上)での業務
・足場の組立・解体・変更作業(地上での補助作業を除く)
・胸高直径350mm以上の立木の伐採
・集材装置・索道等を用いる木材搬出
・火薬・爆薬・危険物等の取扱い
確かに、ちょっと間違えると大変危険そうな業務が並んでいる。
『フィルム上映』のところで『緩燃性』(かんねんせい)とは、〝緩(ゆる)やかに燃える性質〟のこと。1950年代前半までは『可燃性』フィルムが主流で、これは火災発生のリスクを大きくはらんでいた。
ここでの(緩燃性でない)フィルムとは、難燃性ではなく、こうした70年以上前に制作された『可燃性』フィルムを指している。
また、『2t以上のトラックの運転』が入っているが、2tトラックの運転にはそもそも普通自動車免許(免許取得が2017年3月12日以降の場合は『準中型免許』)が必要だ。普通自動車免許にしても準中型免許にしても、18才以上でなければ取得できない。
それなのになぜこんな規定がわざわざあるのかというと(他にも色々例はあり、複数の法律で同じ行為を規制しても問題はないが)、自動車免許は公道その他一般交通の用に供する場所の走行のための資格だからだ。
会社の巨大な倉庫をトラックで走り回る仕事もある。年少者がこういう業務をするのは道路交通法上は合法であっても、労働基準法上はダメということだ。
自動車レースの場合は、原則として普通自動車免許が必要とされるものの、年少者で年齢的に普通自動車免許取得が不可能な場合は『国内A級ライセンス』等を条件として競技参加を認められているようだが、2tトラック(以上)は(労働者)としてはダメだ。
2t以上のトラックレースに年少者が労働者として参加するのはダメということになる。
・衛生上の有害業務
・水銀・ヒ素・黄リン等有害物の取扱い・その蒸気等に触れる業務
・土石の塵埃(じんあい)・粉末を発する場所の業務
・有害放射線にさらされる業務
・多量の低温・高温物の扱いや著しく寒冷・暑熱な場所の業務
・異常気圧下の業務
・著しい振動器具を用いる業務
・強烈な騒音下の業務
・病原体による著しい汚染の恐れのある業務
ここには、印刷工場での胆管がん・アスベスト暴露による中皮腫や肺がん・放射線被ばくによる多発性がん・新型コロナウイルス感染症による医療従事者のり患など、ここ最近報道された労働者の労災疾病の原因と考えられ、あるいは争われた業務が多く含まれている。
少なくとも衛生上有害なのは論を待たないだろう。
・福祉上の有害業務
・焼却・清掃・と殺の業務
・監獄又は精神病院における業務
・酒席に侍する業務
・特殊の遊興的接待業
他は福祉に有害というのは分かるが、『焼却・清掃』というのはなぜか?実は、焼却・清掃が包括的に禁止されているのではない。
1988.3.14の『労働基準法解釈例規』では、ここでの『焼却』とは、塵芥焼却・死体火葬、『清掃』とは糞尿汲取・塵芥収集としている。
さらに2020.3.26の『労働基準局長通達』では、同じくここでの『清掃』の解釈を変更し、『清掃の業務』とは、『一般廃棄物以外の収集又は運搬』とした。
※ 加筆
・安全上の有害業務
7行目 土木建設機械等の運転 を追加 '23.09.19
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