・15才年度末までは労働禁止
年少者の中でも15才到達年度末(中学卒業)までの方は労働基準法では『児童』とし、原則全ての労働が禁止されるので、しっかり年齢を確認することは欠かせない。
ただし、例外として、製造業・鉱業・建設業・運輸交通業・貨物取扱業以外で、児童の健康・福祉に有害でなく、軽易なものについて、個別に監督署の許可を得た場合のみ、修学時間外に使用することは可能だ。
ただ、以下の業種については、就業を許可してはならないことが『監督署に対して』義務付けられているので、上の5業種以外であっても、許可されることはない。
・危険有害業種
・曲馬・軽業・大道芸等
・旅館・料理店・飲食店・娯楽場の業務
・エレベーターの運転業務
最初の『危険有害業務』については、前回年少者に禁止されている業務のところで述べた。これが中学生以下の児童に許されるはずがないのは当たり前だ。
・『修学時間を通算して』7時間が限度
『児童』は、義務教育期間中なので、労働時間も、修学時間を通算して限度が定められている。
ここで『修学時間』とは、学校の休憩時間や昼休みは除くので、1コマ50分の6時間授業であれば、5時間(50分/コマ×6コマ)ということになる。
義務教育期間中の例外的な労働については、
修学時間を通算して
・1日7時間
・週40時間
が限度になる。休みの日なら7時間だが、平日『6時間』授業の日なら2時間が限度だ。
・午後8時以降は不可
児童の健康のため、深夜については20時から5時までは使用不可。
ただし、『演劇の事業に使用される児童が演技を行う業務に従事する場合』については、21時から6時まで不可となっていて、21時までは可だ。
これは、舞台のカーテンコールに出られるようにという親心?からとも言われている。
・学校長の証明も必要
また、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書・親権者又は後見人の同意書を事業所に備え付けておく必要がある。
小中学校の校長先生たるもの、労働基準法で定められたこうした仕事もあるのだということも、頭に入れておく必要がある。
13才未満の児童の労働
13才未満の子どもに関しては、ほぼ完全に労働禁止となる。例外は『映画の製作又は演劇の事業』、要は『子役』等の場合に限られる。
事業主に年齢制限はない
当Blogは、給与や労働時間その他労働問題を主たるテーマにしているので、『労働者』でない場合は適用範囲を超えることになるが、インターネット上を探しても、小中学生で起業した人は何人でも見つかる。
このように、個人事業主や法人役員等、労働者でない形で仕事をする分には年齢制限はない。
もちろん、これはあくまで労働保護法としての『労働基準法』の適用対象でないというだけの話だ。前回触れた民法第5条1項
『未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない』
は一般的な規定なので、労働契約以外の請負契約や委任契約等も入る。もっと言えば『契約』以外の『単独行為』(遺言・債務の免除・契約の解除や取消など)や『合同行為』(社団法人の設立など)も入ってくるので、『法律行為』の範囲は広大だ。
また、労働者でなくても、例えば児童福祉法の適用対象ではあるので(労基法上『児童』でなくても18才未満はすべて含まれる。)、これに抵触するような他者との契約はできない。
児童が労働すれば『児童労働』?
『児童』は、労基法上は《15才到達年度末まで》となっているが、学校教育法では《12才到達年度末まで》(それ以降は『生徒』)・児童福祉法等多くの法律では《18才未満》となっている。
『児童労働』というときの『児童』も18才未満(労基法で言うところの『年少者』)を指す。
では今まで説明してきたように、こうした18才未満の『児童』が労働すれば即ち『児童労働』かというとそうではない。
大体『児童労働』は国際的に糾弾され批判の的になっていて、ILOもその撲滅を目指している。こんな時代に、かろうじてでも先進国の端くれに今のところ何とか名を連ねる日本が児童労働を認めるはずがない。
『児童労働』とは、ILOでは、義務教育を妨げる15才未満の子どもの労働・18才未満で危険で有害な労働とし、具体的には
① 労働に従事する11才以下の子供
② 週14時間以上の労働に従事する12~14才の子ども
③ 危険有害業務(週43時間以上の労働を含む)に従事する15~17才の子ども
の労働としている。簡単に言えば、年少者の労働のうち、それぞれの年齢に適する限度を超えた劣悪な条件下の労働が『児童労働』と考えていいと思う。
ただ、総務省の労働力調査では、義務教育を修了しているか否かに関わらず、(調査月の末日現在で)15才以上を就業状態の調査範囲としているので、原則労働禁止であるはずの14才~15才到達年度末の方の一部も、調査対象には入っている。
次 ー 84.給与『月1回以上・一定期日払い』の原則 ー