この最低賃金にも、例外はないことはないのだが、すべて労働局の許可を要す。次の5つの場合である。許可なしで最低賃金未満になった場合は当然違法である。
① 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
② 試みの使用期間中の者
③ 法律の認定を受けて行われる所定の職業訓練期間中の者
④ 軽易な業務に従事する者
⑤ 断続的労働に従事する者
これらの方々には、最低賃金を一律に適用すると、かえって雇用機会を狭める懸念があるということから、それぞれ要件を満たす場合には一定の減額が認められる場合がある。
最低賃金の減額特例については、2020年12月24日に厚労省から『最低賃金銀法第7条の減額の特例許可事務マニュアルの作成について』という全65ページ物が発出されている。
これは、『厚生労働省労働基準局賃金課長』が、各都道府県労働局長にあてた部内通達という性格だが、これに反する許可は、まずあり得ないと思われる。非常に実務的に書かれているので、実際に減額の特例の適用を考えている事業者は、必ず読んでおくべきだ。
① 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
『精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者』については、2週間程度以上の、比較対象労働者との作業実績に対する比較資料が必要。
許可期間は原則1年以内とするが、2回目以降の申請の場合で、対象者が同一業務に従事し、前回から労働能力向上等がなく、以後もその見込みがないと判断される場合は3年以内となることもある。
申請内容の事実確認は原則実地調査とされ、実地調査が省略される可能性があるのは、次のすべてに当てはまる場合に限られる。
(ア)3回目以降の継続した許可申請
(イ)支払おうとする賃金額以外の変更がない
(ウ)前回の申請時と比べて、減額申請対象者の労働能力等の向上が全く認められない
つまり、1,2回目の申請は、必ず実地調査があることになる。
② 試みの使用期間中の者
『試みの使用期間中の者』は、ほとんどの労働者が最低賃金程度で働いていることなど、色々と条件があるが、これを満たせば、試用期間中の方について、最大20%・6か月間減額できることになっている。
最初に紹介した『特例許可事務マニュアル』では、『試みの使用期間中の者』とは、次のすべての条件を満たす者とされる。
ア 試の使用期間の後に本採用が予定されていること。
すなわち、試の使用期間後にそのまま本採用に自動的に移行する場合もあれば、本採用の契約を新たに締結する場合もありえるが、試の使用期間のみが定まっていて当該期間の経過後の扱いがどうなるのかが明確でないものは、試の使用期間ではないこと。
イ 試験的な使用期間であること。
すなわち、試の使用期間中又はその満了後に、使用者が本採用するか否かを決定し、不適格の場合には解雇し得ることとなっている、いわば労働者の身分が不安定な時期であること。
ここでは、『特例許可事務マニュアル』の『「試の使用期間中の者」の判断』の部分を、省略せずにそのまま(太字・改行等は広田による。)記した。
アによれば、試用期間後に本採用が予定されず、扱いが明確でないものは対象外だが、イによれば、本採用が明確になっている場合など、身分が安定している場合も対象外のようだ。
私は結構想像力だけはある方だと思っているので、この『ア』と『イ』が両立する状況とはどういう状況かを必死に考え、何とか例示しようとしたが無理だった。私の頭の限界を超えている。
現実の世界で『条件ア』と『条件イ』が両立する事例を知っている方がいたら教えていただきたい。
③ 法律の認定を受けて行われる所定の職業訓練中の者
この『法律の認定を受けて行われる所定の職業訓練中の者』については、訓練期間が2~3年のものの最終年度については認められない。それ以外で他の要件を満たした場合は、
1日平均の職業訓練時間数 ÷ 1日平均の所定労働時間数 × 100%
まで、減額が認められている。
ここで、『1日平均の職業訓練時間数』は秒単位切捨てで分単位、『1日平均の所定労働時間数』については秒単位切上げで分単位にすること、及び『減額率の上限値は小数点以下第3位を切捨て、小数点以下第2位以下とすること』も指定されている。
厚労省が労働時間について秒単位の扱いに触れることは珍しい。
実は『給与の一策 2.把握の単位は1分とは限らない』を書いたのも、この含みがあったからなのだが、予想通り?この反響は全くなかった。
秒単位の労務管理など、たまに、少々人並外れた専門家の方が言及して話題になるくらいのものだが、厚労省も『平均算出』の場合とはいえ、秒単位に言及していることは注目に値する。
次 ― 39.最低賃金減額の実際 ―
※ 誤字訂正です。
10行目 最低賃金銀法 ➡ 最低賃金法 2023.05.12
『②試みの試用期間中の者』
2行目 使用期間中の方 ➡ 試用期間中の方
8行目 決まっていて ➡ 定まっていて
14行目 『特例事務マニュアル』 ➡ 『特例許可事務マニュアル』 2023.03.28