19.代替休暇の労使協定

 

 前回私の意見は述べたが、どうしても代替休暇を導入するという場合、労使協定で取り決めておくべきことをまとめておく。
 

① 代替休暇の時間数の具体的な算定方法

 代替休暇時間数は、正確には次の式で求める。

『代替休暇時間数』=(『1ヶ月の法定時間外労働時間』ー 60h )×『換算率』
『換算率』=『代替休暇不取得時の割増賃金率』ー『代替休暇取得時の割増賃金率』

代替休暇不取得時の割増賃金率』というのは、普通の月60時間超の割増率のことだ。法律上『1.5倍以上』なので、1.6倍とか1.7倍とかいうこともあり得る。だからこういう表現になっているのだが、普通1.5倍だろう。

『代替休暇取得時の割増賃金率』も同様に、法律上『1.25倍以上』なので、1.3倍でも1.4倍でもよい。ここは普通月60時間に達する直前の割増率で、大概1.25倍になる。

 実は2009年にはすでに、月45時間超の時間外労働について1.25倍を超える率とするよう努力義務が課されている。

 実際は月60時間まで1.25倍のままのところがほとんどだが、当の厚労省がそれ(1.25倍)を前提にすることはできないという事情もあってか、厚労省の例示では、この部分は1.3倍程度になっていることが多い。

 というわけで、実際の『換算率』は前回示した通り25%(1.5ー1.25)となることがほとんどだが、前から月45時間超は1.3倍にしていたという優良企業なら『代替休暇取得時』も1.3倍にするのが自然だろう(1.25倍に戻しても可)。

 その場合は『換算率』は20%になり(不取得時が普通に1.5倍の場合)、月60時間超の時間外労働1時間あたり12分の休暇ということになる。
 

② 代替休暇の単位

 ここは『1日』・『半日』・『1日または半日』のいずれかとされる。

 普通は『1日または半日』となるだろう。『1日』と決めたら、半日年休も時間単位年休もない会社なら、月の時間外92時間まで代替休暇の取得は不可能になる(③によるが、2ヶ月分まとめ得る場合は可能)。
 

③ 代替休暇を与えることができる期間

 法律上は『代替休暇を与えることができる期間(は、)… 延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた当該1箇月の末日の翌日から2箇月以内』となっている。
 ここで、時間外労働集計の起点はどの日でもよく、取得期間も2ヶ月以内なら自由だ。

 普通は、起点は〆日の翌日とするだろう。それ以外は集計がややこしくなる。

 取得期間についても、〆日の2ヶ月後まで可能だが、あまり長期間とするのは感心しない。
 これは『なるべく早く』という法の趣旨からというより、給与計算上大変なのだ。

 本人が希望しても、期日までに代替休暇を取得できるとは限らない。取得できなかった場合は、2ヶ月後の〆日の後の支給日に、割増賃金の不足分25%を支払うことになるが、それまでの2ヶ月半、代替休暇は宙ぶらりんということになる。

 よほどきちんと管理していないと『支給漏れ』ということも起こり得る。このリスクは企業経営者ならわかると思うがかなり大きい。

 やはり、実務的には、取得は1ヶ月以内とし、希望がない・または確認できないなら他の給与と一緒に当月分の支給日に即支払。希望があっても次の〆日までに取得できなかったら翌月分の支給日に清算…というのが分かりやすくてよい。

 ただ、こうした場合、前に述べた『2ヶ月分まとめて代替休暇1回分』という技は使えない。
 

④ 代替休暇の取得日の決定方法・割増賃金の支払日

 1ヶ月以内の取得とする場合、その会社の支給日が〆日の何日後かにもよるが、15日後くらいであれば、〆日後5日以内には意向を確認しないと支給日に間に合わなくなるだろう。それより短いなら、〆日直後には確認することにした方がいい。

 もちろん、取得希望があれば同時に取得希望日を聞き、調整して問題なければすぐ決定というのがいいのではないか。
 支払日につては、③で書いた通りだ。

 いずれにしても、導入すると決めたらしっかり準備したいものだ。

 

次 ― 20.代替休暇と給与計算 ―

2023年01月13日