73.コアタイムがなければフレックスデイ?



フレックスタイムは労働時間の自由化


 フレックスタイム制では、コアタイム・フレキシブルタイムを設定することが多い。

 フレキシブルタイムは『労働者が自らの選択によって労働時間を決定することができる時間帯』とされていて、『フレキシブルタイムが極端に短い場合など趣旨に反する場合はフレックスタイムとは言えない』という説明が厚労省からなされているが、フレキシブルタイムの設定自体は任意とされている(つまり、なくてもいい)。

 極端に短い場合は趣旨に反する(つまり、ダメゼロならOKというのは理解に苦しむところだが、要は、フレキシブルタイムがゼロならすべてフレキシブルタイムとみなすということなのだろう。つまり、その場合は、午後10時から午前5時までの深夜時間帯も含め、どの時刻に出勤していてもよい。

 なお、フレックスタイム制の趣旨は労働時間の自由設定にあり、労働日の自由設定ではない。たとえ、万難を排してコアタイム・フレキシブルタイムを設定しない運用にするにしても、所定労働日はきちんと定めておくべきだ。
 

・休日労働なら割増


 もし、法定休日に労働があった場合は、総労働時間に含めず、休日労働として別枠で扱い、1.35倍割増賃金を支払う。
 単なる所定休日の労働であれば、総労働時間に含め、ほかのフレックス時間と同様に扱うことになる。

 ただし、法定休日であれ所定休日であれ、勤務時間が6時間を超えたら45分・8時間を超えたら1時間の休憩を、勤務時間の途中に挟まなければならないという原則は変わらないので注意したい。

 さらにこの規制は、法定休日を挟んだ深夜にその前後の日と続いている場合(この場合は、全く別の日の勤務と言うことになる。)でも例外とはならない。これは、他の規定との整合性を考えるとおかしい気がするが、労働者保護の一環と考えれば納得できる。
 

スーパーフレックスタイム制


 なお、フレックスタイム制の中でも、コアタイムを設けないものを特別『スーパーフレックスタイム制』という。違いはその1点に限られ、出勤日と休日を勝手に設定できるわけではない。

 要は、『出勤日』に、必ず出勤していなければならない時間帯ないフレックスタイム制が『スーパーフレックスタイム制』ということで、スーパーフレックスタイム制であろうとも、『出勤日』には、必ずフレキシブルタイムのどこかで出勤していなければならない。

 スーパーフレックスを導入する場合には、前回指摘した4点のうち、

   ・休憩をどう確保するか
   ・打ち合わせをどうするか

の2点は、少なくとも解決しておく必要がある。
 

フレックスデイ


 少し?古いが広瀬香美さんの『ロマンスの神様』(1993年)に、『週休2日・しかもフレックス…♪』という歌詞がある。今も時々かかるので、若い方でも知っている人が多いと思う。

 『43.労働時間・休日の原則と例外』で触れたように、まだこのころは週40時間労働の法制化前。週休2日の会社は、時代の先端を行く労働者の『夢の職場』だった。

 もう1つの『フレックスタイム』が導入されたのは、この歌の5年前。バブル絶頂の1988年だが、93年でも導入率5%弱と、あまり一般的ではなかったようだ。

 それはともかく、この歌の通り、『週休2日』等の休日の特定(ということは勤務日の特定)とフレックスタイムとは基本的には全く別の話だ。これは、スーパーフレックスにおいても変わらない。

 これを、勤務日そのものについても従業員の裁量に任せるというのが『フレックスデイ』ということになる。
 

・『コアタイムがない』のは、『フレックスデイ』の必要条件


 これについては、厚労省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』の中で、『コアタイムを設定しないことによって、労働者が働く日も自由に選択できるようにすることも可能です。』とあることから、『コアタイムを設定しなければフレックスデイになる』という誤解もあるようだ。

 厚労省の解説は『コアタイムを設定しない』ことは『フレックスデイ』の必要条件と言うことで、『労働者が働く日も自由に選択することができるように』するかしないかはその次の問題だ。

 つまり、まず『コアタイムを設定しない』(スーパーフレックス)ことにし、そのうえで『労働者が働く日も自由に選択できる』ように労使協定等で定めれば、『フレックスタイム制』の枠の中で『フレックスデイ』が導入できるということになる。

 そうなっていなければ、コアタイムがない日であっても1度も出勤しなければただの欠勤である。

 しかし、この場合はその日の『所定労働時間』はないので、欠勤控除はできない(というより、控除の根拠がないのでしようがない)。ただ、出勤日に欠勤したのだから、『皆勤手当』があるのなら就業規則等にもよるが普通不支給となるし、出勤率は当然下がる

 あと、フレックスデイにしても、最低週1回の法定休日はあるので、いかにその方の都合で出勤したいと思っても、法定休日には基本的には出勤できない。

 

次 ー 74.労働時間と休日の『例外』まとめ ー

 

※ 誤字訂正

『コアタイムがない』のは、『フレックスデイ』の必要条件

5行目  開設  ➡  解説   '23.08.08

2023年08月04日