前回述べたように、労働時間や休日の例外を体系的に学ぶためには労働基準法そのものを学ぶのが王道だ。ここでの『労働基準法』には、附則や施行規則・関連通達なども含める。
『労働基準法』の法律そのものを引っ張り出してきて読み込もうとするような人は現代日本でちょっと考えられないので、前回はあえて触れなかった。そういう方がいたとしても、その姿勢に敬意は表するが、法律の文章を読みなれていない方なら、まず理解不能だろう。
法律を読み込むのに慣れている方で、理解できたとしても、膨大な関連法規・規則・通達の中で、実務上重要なものを探し出すのは不可能に近い。
労働基準法を学ぶのは、実はそんなに大変なことではない、労働基準法は、社会保険労務士試験科目の要で、普通、最初に学ぶ法律でもある。
どの出版社の受験テキストも大変コンパクトにまとまっているので、このうち(普通、試験科目に合わせて労働基準法・労働安全衛生法・労災保険法・雇用保険法・労働保険徴収法・健康保険法・国民年金法・厚生年金保険法・労働一般常識・社会一般常識の10科目に分かれている。)『労働基準法』1冊を学ぶだけでアウトラインは分かる。
『受験テキスト』が、体系的で分かりやすい
労働基準法の解説書等を様々読んだ結果、一般の方に分かりやすく、必要な内容を系統的にコンパクトにまとめたものとしては、この『社労士受験テキスト』が最も適しているのではないかと個人的に考えるに至った。
これは、考えてみれば不思議なことだ。『受験テキスト』の目的は言うまでもなく試験に合格させること。その科目全般にわたって体系的に学ぶことではない。『趣旨目的が違うので、読んでもムダ』となるのが普通だ。
そうならないのは、体系的に学ぶことが、まずは合格への第1歩ということなのだろう。
もちろん、枝葉の部分で、かつ、あまり試験に出ないところが割愛してあるのは『受験テキスト』としての限界だが、必要な部分はあとで知識をつけ足していけばいいので、労働基準法の根幹を理解するのにそう支障はない。
欲を言えば、プラスして雇用保険法・健康保険法も学んだ方が応用範囲は広くなる。
少なくとも自社だけで対応する場合にも、どういう働き方をしてもらったら、または給与をどう支給したら従業員にとって、また会社にとって有利なのかを知る手段にはなる。ただし、無理はしなくて良い。
さらに欲を言えば、労災保険法・厚生年金保険法・建設業であれば労働安全衛生法も少しかじっておけば役に立つ場面はあるが、付け焼刃だと大やけどすることもあるので、これらの法律上の扱い等については顧問社労士に丸投げでいい。
その業界独自の特殊な事情については社労士もよく知らないことが多いので、そこを含めて情報を正しく伝える(ここ大事!)だけで、少なくとも普通に営業している社労士ならより良い方法を考えてくれるはずだ。社労士には守秘義務があるので会社の内部情報が漏れる心配はない。
まあ、そこまで徹底して学習する意欲があるのなら、いっそのこと一念発起して社労士の資格を取った方が良いような気もする。
どこのテキストがいいかは書かないが…
さて、私は資格試験業界の回し者でもないのでどこ出版のテキストがいいかは書かない。しかし、それほどひどいものはないはずなので、どこのものでも安心して使っていいと思う。
ただ、労働基準法・労働安全衛生法・労災保険法・雇用保険法・徴収法あたり(『労働科目』という)がまとめて1冊になっているような本はザックリしすぎていて、疑問が頻出し、追加でたくさん本を買ってこなければならない羽目に陥ること必至なのでやめた方が良い。
大体、ここでの目的は労働基準法をザッと理解することなので、他の科目が入っていても、差し当たってはムダになるだけだ。
実は、私も社労士受験生時代のテキストを大事に事務所に置いてあり、たまに確認している。長年の受験生活のおかげで(3年かかりました!)、どこに何が書いてあるか熟知しているので、目的の個所をパッと開けるのがいい。
まあ、社労士試験科目には毎年法律の改定があるが、実務に関係するところはさすがにおおよそ頭に入っている。原理原則や立法趣旨を確認するには使い勝手が一番良いのだ。
ただ、お客さんが来ているときは《この社労士、テキスト読みながらでないと仕事できないの?》とあらぬ疑いをかけられる恐れがあるので、お客さんの前ではあまり広げないようにはしている。
というわけで、次回以降は『1日8時間・週40時間・週1休』の例外をまとめてみる。理論的には「それは例外じゃなくて、全く別の話だろう」と言われて当然のものもあるが、本Blogは理論書ではないので、基本以外のものはすべて『例外』で済ませることにする。
次 ― 45.労働時間規制のない、事業主と法人代表 ―
※ 誤字等訂正
12行目 『国民年金法』が落ちてました。
『受験テキスト』が、系統的で分かりやすい
22行目 一念発揮 ⇛ 一念発起
・どこのテキストがいいかは書かないが…
3行目 労働基準法の後に『労働安全衛生法』挿入