34.振替休日と代休等の給与計算

 

 さて、ここでは、レギュラーの月影さんに登場してもらい、振替休日・代休等の場合、給与はどうなるのか計算してみる。

 月影さんの会社の〆日は末日・休日は土日・法定休日及び週の初日は日曜日・月~金9:00~18:00勤務(休憩1時間)・普通の週1休(法定休日)の会社である。
 関係する賃金単価は次の通り。

・基礎賃金         1,423円/h
・時間外労働単価      1,779円/h
・時間外労働単価(月60h超)2,135円/h
・休日労働単価       1,921円/h

 ここでは、法定休日は〝〟等、それ以外の所定休日は〝(土)〟等とする。
 

① 法定休日の日曜を、その週の金曜と振替えた場合

 勤務時間は、

日 月  火  水  木  (土)
8h 8h 8h 8h 8h 0h 0h

となる。この場合は、単純に月曜と金曜が入れ替わったと考えるので、休日労働も時間外労働もなく、月給の月影さんの給与に増減はない。

つまり、               ±0円
 

② 法定休日の日曜に勤務させ、その代休をその週の金曜とした場合

 月  火  水  木  金 (土)
8h 8h 8h 8h 8h 0h 0h

・ 日曜については法定休日割増が発生するので、増額分は

    1,921円/h × 8h = 15,368円

・ 金曜については、一般的には基礎賃金分が控除されるので減額分が

    1,423円/h × 8h = 11,384円
                        で、差引
    15,368円 ー 11,384円 = 3,984円
                        この分、給与が増額になる。
 ここで、金曜の控除分について『一般的には』としたのは、控除分の計算方法については、ある程度会社のルールに任されているので、必ずこうなるというものではないからだ。
 ただ、ここでは不就労時の賃金控除(1時間分)を、基礎賃金分として考える。
 

③ 事前に法定休日を土曜に移動し、日曜に勤務させた場合

(日) 月  火  水  木  金 
8h 8h 8h 8h 8h 8h 0h

・ 木曜までで、週の法定労働時間40時間に達するので、金曜は法定時間外となる。時間外割増賃金は、

    1,779円/h × 8h = 14,232円

となるが、このうち月60時間を超える部分がある場合には、1時間につき356円(2,135円ー1,779円)ずつ増加することになるので、最大

    2,135円/h × 8h = 17,080円
                     になる。
 

④ ③で法定休日を移動しなかった場合

 月  火  水  木 金 (土)
8h 8h 8h 8h 8h 8h 0h

 この場合は、日曜が法定休日労働となるため、日曜の休日割増賃金は

    1,921円/h × 8h = 15,368円

となる。③と比べると微妙なところだ。
割増率の基準は、時間外25%(月60h超は50%)・法定休日35%なので、

対象となる『週の法定時間外』のうち、月60時間超の部分が4割を超えると、休日労働の割増賃金額を超える

ことになる。これは、次の4週4休の場合も同じだ。

 

4週4休の場合

 

 以下、法定休日が4週4休で、他の条件は月影さんとまったく同じ場合を考える。
 

⑤ 日曜の法定休日を、翌週月曜と振替えた場合

日  月  火 水  木  金 (土)     火  水 木  金 (土)
8h 8h 8h 8h 8h 8h 0h  0h 0h 8h 8h 8h 8h 0h

 この場合、休日割増は発生しないが、

・1週目については金曜の分が週の時間外労働となり、

    1,779円/h × 8h = 14,232円

  となるが、月60h超部分があると、③同様1時間につき356円増額になるので、最大

    2,135円/h × 8h = 17,080円

・2週目月曜は基礎賃金分(11,384円)が控除され、差引

(14,232円~17,080円)ー 11,384円 = 2,848円~5,696円 増額

                        となる。
 

⑥ ⑤で、振替えなかった場合

 振替えずに同様の労働状況だった場合は、1週目日曜は法定休日となるので、

    1,921円/h × 8h = 15,368円

となり、1週目金曜は通常の労働となる。
 2週目月曜は同様に基礎賃金分(11,384円)が控除され、差引

    15,368円 ー 11,384円 = 3,984円 増額
                        となる。
 

⑦ 1週目日曜の法定休日を翌週月曜と振替え、
             土曜の所定休日も翌週火曜と振替えた場合

日  月  火  水 木 金  土      火 水  木  金 (土)
8h 8h 8h 8h 8h 8h 8h  0h 0h 0h 8h 8h 8h 0h

 この場合も、休日割増は発生しない。

・1週目については、金曜・土曜分が週の法定時間外となり、

     (1,779円/h~2,135円/h)× 16h = 28,464円~34,160円

・2週目の月・火については、基礎賃金分

     1,423円/h × 16h = 22,768円
                        が控除されるので、差引
(28,464円~34,160円)ー 22,768円 = 5,694円~11,392円 増額
                        になる。
 

⑧ ⑦で、法定休日分を振替えなかった場合

 1週目日曜の法定休日を振替えなかった場合は、1週目日曜の法定休日分は

    1,924円 × 8h = 15,368円

となる。1週目金曜は通常の労働だが、土曜は週の時間外となるので、

(1,779円/h~2,135円/h)× 8h = 14,232円~17,080円

1週目日曜と土曜の分を合わせると、休日・時間外割増の合計は、

        29,600円~32,448円

となる。また、2週目月・火は⑦と同様に22,768円控除されるので、差引

(29,600円~32,448円)ー 22,768円 = 6,832円~9,680円 増額

ということになる。
 

月(賃金計算期間)をまたいだ振替え


 4週4休の場合の振替は、月(賃金計算期間)をまたいだ場合が問題となる。

 上の『⑤日曜の法定休日を翌週月曜と振替えた場合』で、2週目日曜が翌月になる場合、『休日の振替』自体はもちろん有効で、『休日割増』も発生しないが、給与は月ごとに清算しなければならないので、60h超の時間数によるが、

・1週目金曜分は、当月分給与を 14,232円~17,080円 増額)し、
・2週目月曜分は、翌月分給与を 11,384円 減額

することになる。

 

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2023年03月07日